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(3)大動脈弁狭窄症に対するTAVI治療 津山中央病院循環器内科部長 山中 俊明

山中俊明氏

 当院は今年、大動脈弁狭窄(きょうさく)症(AS)に対する高度治療である経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)の専門施設の認証が得られました。

 ■大動脈弁狭窄症

 大動脈弁狭窄症とは、心臓から全身(大動脈)へ血液が流れる際の大動脈弁の開きが悪くなり血流の流れが妨げられる弁膜疾患の一つです。75歳以上でASと診断される人の割合は約13%で、病状が進むと胸痛や意識消失、息切れなどの症状が現れます。

 高齢者は日常生活の行動範囲が狭くなるため、ASによる症状である易疲労・労作時の息切れなどを年のせいだと思ってしまい、症状に気付いていないケースが少なくありません。重度AS患者さんは経過観察中に突然死や心不全入院などの発生率が高いです。重度ASの5年生存率は約22%であり、肺がんの5年相対生存率(35%)よりもさらに低く、非常に怖い病気です。

 重症ASの患者さんは、お薬のみの治療と比較して早期手術の予後が良いと報告されております。健康診断などで心雑音を指摘された際は、ASなどの弁膜疾患の可能性がありますので、心臓の精査として心臓超音波検査などが可能な施設への受診をお勧めします。

 ■TAVI

 TAVIは、重症ASに対する治療法で、開胸することなく、また心臓も止めることなく、カテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に植え込む治療法です=。従来の開胸手術と比較して明らかに低侵襲(治療のために患者さんの体を傷つける度合いが少ない)に加えて、人工心肺を使用しなくて済むことから、患者さんの体への負担が少なく入院期間も短いことが特徴です。

 当院のTAVIの成績はの通りです。当院はTAVIを2021年2月から開始し24年9月までの3年半で181人の患者さんのTAVIを行いました。平均年齢は86・3歳であり、最高齢は99歳の患者さんでした。平均STSスコア(心臓手術による予測死亡率)は8・5%と高リスク患者さんに対してTAVIを施行しました。TAVIは全例成功しております。

 平均入院期間は9日間で、治療後の9割以上の患者さんが症状の軽快を得られました。TAVI治療後の1カ月後の短期成績では全例生存しておりました。合併症はの通りで、全国平均と比較しても当院のTAVIの治療成績は遜色なく安全に行われていることが確認されました。その結果24年からTAVI専門施設(中国地方で7施設目)の認証が得られました。これにより当院で透析患者さんのTAVIも可能となり治療の幅が広がりました。

 当院でのTAVIは全国と同様のレベルで行っていると自負しております。引き続き岡山県県北地域の医療レベルが高水準に保たれるように日々精進していきます。今後ともよろしくお願い致します。

     ◇ 

 津山中央病院(0868(21)8111)

 やまなか・としあき 2005年鳥取大医学部卒。岡山大学で博士号取得。18~20年、ドイツへ留学。同年から津山中央病院に勤務。心臓弁膜症治療部門長も務める。日本循環器学会専門医、日本CVIT専門医、日本TAVI指導医。

(2024年12月02日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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