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Ajaxとアクセス解析の関係を読む

ページビューは、アクセスログやそのページに埋め込まれたJavaScriptや画像などを使ってカウントされます。しかし、サイト設計によっては、一般的なサイトと同様にページビューを計算してしまうと、正しくそのサイトの価値を評価できないケースもあります。具体的にはどのようなケースなのか、見ていきましょう。

すべてのサイトをページビューで評価してはいけない

 アクセス解析によってわかる最も基本的で、それでいて重要な情報にページビュー(PV)があります。これはそのページに何回のアクセスがあったのか、という回数です。どれくらいの回数そのページが見られているのかを知ることで、サイトがきちんと機能しているかを知ることができ、そのサイトの人気度を測ることもできます。そしてPVは、それによって広告の掲載料が変わってきたりする、とても重要な数字です。

 ページビューは、そのページにアクセスされた回数をアクセスログや、もしくはそのページに埋め込まれたJavaScriptや画像などを使ってカウントします。これらの方法については、これまで本連載でも解説してきました。しかし、サイトの性格というか、設計によっては、一般的なサイトとページビューの持つ意味合いが異なるものがあるのです。そうしたサイトでは、一般的なサイトと同じようにページビューを評価してしまうと、正しくそのサイトの価値を判断できません。

 それはどんなサイトかというと、「ページ遷移を用いずにページの内容を書き換えているサイト」です。「ページ遷移」とは、もっと平易な言い方をすれば、ページを移動すること、つまりリンクをクリックして、別のページにアクセスすることを言います。Webサイトは複数の「Webページ」から構成されており、リンクによってそれぞれのページが結ばれています。そして、利用者はそのリンクをたどることで、サイト内のさまざまな情報を入手したり、サービスを利用したりすることができる、というのが従来のサイトの常識でした。しかし、ここ1~2年の間に、こうした常識が通用しないサイト(サービス)も数多く登場し始めているのです。それが、リンクをたどってページ遷移をすることなく(もしくはページ遷移の数を極力少なくして)、同じページにとどまったまま、サイトの機能を利用できるサービスです。

 こうしたサイトやサービスは、現在徐々にと珍しいものではなくなってきています。その理由としては、「流行」ということもあるでしょうが、そうしたサービスを構築するための技術的な方法論が確立してきたことがあげられるでしょう。「Ajax」という言葉をご存知でしょうか。この言葉は「Webサイトをより洗練するためのテクニック」といった形で紹介されたり、「Web 2.0」なんていう流行言葉とともに使われたりしているため、一時的な流行語のようにも捉えられがちですが、基本的にはWebサイトを構築するための技術の1つであり、しかもよく知られるようになってからしばらく時間がたったことで、いろいろなところで使われるテクニックになっています。

 そして、Ajaxの技術を多用した場合に、ページ遷移の少ないサービスができあがります。なぜなら、Ajaxはページ遷移をすることなしに、サーバとブラウザの間でデータをやり取りするための技術だからです(ページ遷移なしにデータをやり取りする技術はAjaxだけではありませんが、Ajaxはそうした技術の中でももっとも有名なものだといえるでしょう)。こうした技術の普及が、Webアプリケーションの可能性を大きく広げ、結果として「ページ遷移のないサービス」のような新しい形のサービスが誕生してきているのです。

 今回は、こうした「ページ遷移の少ないサービス」はどのようにしてできているのか、そしてそれでは、そうしたサービスにおけるアクセス解析はどのように考えればいいのか、ということを紹介していきます。

ページ遷移のないサービスとは

 ページ遷移のない(もしくは少ない)サービスとは、どんなものでしょうか。まずはその例として、Googleマップを見てみることにしましょう。Googleマップは、Googleが提供する地図情報サービスです。そのページはこんな感じになっています。

Googleマップ

 Googleマップの特長は、地図をマウスでドラッグしたり、クリックしたりといった動作で、見たい場所に簡単に移動できることです。その操作感は非常に優れていたので、登場した当時非常に話題になりましたし、今ではほかの地図サービスも同様の機能を備えたものが多くなりました。

 ブラウザのアドレス欄を見ていればわかりますが、Googleマップは、一度ページにアクセスしてしまえば、地図をどれだけ移動しても、拡大や縮小をしても、航空写真に切り替えても、ページは移動しません。Googleマップ登場以前の地図サービスは、表示された地図の周りに、隣の地図へ移動するためのリンクが用意されていて、それをクリックしてページを移動することで、地図を切り替えていました。しかしGoogleマップでは、ページを切り替えず、中身だけをどんどん書き換えることで、より使いやすい地図サービスを作り出したわけです。Googleマップでも、例えばキーワードを入力して検索を行ったりすればページが切り替わります。しかし、ただ地図を動かしているだけでは(そしてGoogleマップにはついついそうしてしまいたくなる魅力があります)、ページは全く遷移しません。

Googleマップでは地図の移動ではページ遷移が起こらない

 同じくGoogleが提供するメールサービスであるGmailも、ページ遷移がほとんどないサービスです。メールを開いたり、検索を行ったりと、旧来型のサービスではページの切り替えが行われて当然のページ遷移でも、ブラウザのアドレス欄は変化しません。こうしたサービスは、ほかにも最近は見かけるようになってきました。例えば同じくGoogleのGoogleカレンダーや、livedoor reader、インスタントメッセンジャーサービスであるmeeboなども同様です。

 こうしたサービスでは、どれもページの内容は結構ダイナミックに変化するのですが、アドレス欄のURLはほとんど変化しません。そして利用者は同じページにずっととどまってサービスを利用し続けます。そのため、ページビュー、という仕様の持つ意味はちょっと変わってきます。どんなサービスであれ、最初にアクセスしたときには、「そのページへのアクセス」とみなすことができますが、その後はそのページから移動しないわけですから、ページビューとしては、ずっと同じページを見ていたことになるわけです。これは、普通のサイトがサービスを利用するために、どんどんとリンクをたどっていくこととは対照的です。

ページ遷移の少ないページの仕組み

 こうした、ページ遷移のないサービスは、どのような仕組みで作られているのでしょうか。

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この記事の著者

水野 貴明 (ミズノタカアキ)

1973年東京生まれ。バイドゥ株式会社勤務の兼業テクニカルライター。学生のとき に父親が買ってきたパソコン(マイコン)と出会い、コンピュータとの付き合い を開始。大学は有機化学、大学院では分子生物学を学ぶも、就職で再びコンピュータの道を進むことになった。その後インターネットの普及により、様々な方に出会う機会を得て1999年より執筆活動を開始。 http://d.hatena.ne.jp/mizuno_takaaki/

 

著書
『アクセス解析でホームページの集客を極める本』 水野 貴明著、 ソーテック社、2005年3月 
『詳解RSS~RSSを利用したサービスの理論と実践』 水野 貴明著、ディー・アート、2005年8月

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2007/06/05 08:00 https://markezine.jp/article/detail/1243

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