Kさん(73歳・女性)は、1年前に脳梗塞(こうそく)を発症し、脳血管性認知症と左半身まひが後遺症として残りました。
退院後は、訪問介護サービスで主に家事などの生活支援をお願いし、リハビリや入浴はデイケア(通所リハビリテーション)に通ってお願いすることにしました。かかりつけ医への通院は、家族が付き添い、介護ベッドのレンタルや手すりの設置など生活空間の環境整備は、福祉用具事業所にお願いすることにしました。
リハビリに励んでいるのに募る不安
それまで1人暮らしを続けてきたKさんは、着替えや買い物など、身の回りのことを手伝ってもらう度に、「ごめんね」「ありがとうね」と申し訳なさそうな表情を見せていました。複雑な気持ちで支援を受け入れていたようで、「いつまでも元気でいたいとは思っているけれど、これまでできていたことができなくなってしまったことが悔しいし、情けない」と話していました。
Kさんは、できることは可能なかぎり自分でできるようになりたいと思い、週3回のデイケアでのリハビリに熱心に励んでいました。つえを使う歩行で屋内を移動する分には不便もなくなり、箸を使う、電話をかける、体を洗う、歯を磨くなどの手作業も、まひのない右手を上手に使い、時間が少しかかっても自分でできるようになってきました。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、Kさんがデイケアも休むことなく参加しているので、リハビリも順調に進んでいると思っていましたが、ある日自宅で話を伺ってみると、思っていた様子とは違うことがわかりました。「リハビリもやりがいがあるし、お友達もできたし、楽し…
この記事は有料記事です。
残り1392文字(全文2068文字)
認知症ケアアドバイザー
ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケアアドバイザー」「メンタルコーチ」「研修講師」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。ミカタプラス代表。→→→個別の相談をご希望の方はこちら。