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寝不足や不眠の原因は「睡眠時無呼吸症候群」かも?疑うべき症状やセルフチェックを睡眠改善アドバイザーが解説

寝不足や不眠の原因は「睡眠時無呼吸症候群」かも?疑うべき症状やセルフチェックを睡眠改善アドバイザーが解説寝不足や不眠の原因は「睡眠時無呼吸症候群」かも?疑うべき症状やセルフチェックを睡眠改善アドバイザーが解説
谷 明洋

監修者

睡眠改善アドバイザー/科学コミュニケータ

谷 明洋

株式会社S’UIMINで睡眠改善プログラムの開発・実施に従事。プロスポーツ選手や企業従業員、健康診断オプション検査の利用者など、年間200名以上の睡眠改善に携わる。睡眠脳波計測で得られた客観データと本人の主観を照らし合わせ、一人ひとりに最適な睡眠衛生指導を考案する。

「夜しっかり眠っているはずなのに、日中眠くてしょうがない」「夜中に頻繁に起きてしまう」「不眠の対策をとっても効果がない」など、睡眠への不安を抱えていませんか? もしかしたらそれらは「睡眠時無呼吸症候群」という病気のサインかもしれません。 この記事では、睡眠時無呼吸症候群の原因や症状、改善法などを「株式会社S’UIMIN」の睡眠ウェルネスアドバイザー・谷 明洋(たに あきひろ)さんに解説していただきます。

改善しない睡眠の悩みは病気のサイン!?

改善しない睡眠の悩みは病気のサイン!?改善しない睡眠の悩みは病気のサイン!?

しっかり眠っている感覚がありながら日中強い眠気に襲われたり、睡眠が途切れ途切れになってしまう、夜間の頻尿に悩まされている、激しいいびきを指摘された、など、睡眠に関する問題や不安は、実は身近に潜む病気のサインかもしれません。

寝る前のスマホ操作や長時間の昼寝、アルコールやカフェインの摂取を控えるなど、夜間の睡眠の質を低下させないよう意識している方も多くいらっしゃると思います。しかし、それらのことを取り入れてもなお日中に強い眠気を感じたり、夜中に何度も目が覚めてしまう、など、問題が改善されない方は「睡眠時無呼吸症候群」の可能性を疑ったほうが良いかもしれません。

「 睡眠時無呼吸症候群(SAS)」とは?

「 睡眠時無呼吸症候群(SAS)」とは?「 睡眠時無呼吸症候群(SAS)」とは?

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)とは、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、もしくは呼吸が弱い状態になる病気です。それによって、日中に強い眠気や疲労感を覚えることが特徴です。

通常、健康な方の「血中酸素飽和度(血中の酸素濃度)」は、おおよそ96~99%ほどです。一般的には、この値が3%以上(例えば97%から94%まで)低下すると無呼吸イベント(睡眠時に呼吸が止まる、または浅くなる状態)の発生を疑うのですが、重症の方は無呼吸イベントの頻度が1時間に50~60回まで達することもあります。その場合、1分に1回呼吸が止まっている状態です。
そのような状態が続くと、睡眠の質が低下し、さまざまな病気や日中の眠気による事故を引き起こす要因になります。

睡眠時無呼吸症候群をそのままにすると危険!

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、健康や日常生活への悪影響が生じる可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の特徴として、睡眠時に気道が閉塞してしまうため、大きないびきを断続的にかく方がほとんどです。そうなると、同じ空間にいるパートナーや家族がいびきの影響で眠れない、目が覚めてしまう、という弊害が起きる可能性があります。

そして、血中酸素濃度が低下することによって起きる症状は人によって異なるといいます。

血中酸素濃度の低下が原因で息苦しくなり目を覚ます、そしてまたすぐ寝てしまう、を繰り返す方もいれば、目が覚めてからはしばらく寝られなくなってしまう方もいらっしゃいます。いずれにせよ、明らかに睡眠状態が悪化しているので、日中に強い眠気を感じて日常生活に支障をきたす可能性が高くなるといえます。
また、中には睡眠中に息苦しくなるものの、目を覚まさずにそのまま眠り続けてしまうケースもあります。すると、血中酸素濃度がぐっと下がるので、循環器系への負担が大きくなり、高血圧などに繋がりやすく、注意が必要です。

中高年の3人に1人?かかりやすい人の特徴とは

中高年の3人に1人?かかりやすい人の特徴とは中高年の3人に1人?かかりやすい人の特徴とは

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まることで、いびきや日中の眠気、集中力の低下などの症状を引き起こします。そのままにすると高血圧や心臓疾患などにつながる恐れがあり、放置できない病気です。

ある論文によると、睡眠時無呼吸症候群に該当する日本人は中等症以上で900万人、軽症も含めると約2,200万人にのぼると推計されています。診断を受けていない方や無自覚の方を含めた数とはいえ、かなりの人数であることが分かります。
40~50代の中高年に限って言えば、3人に1人が該当するといっても過言ではないと思います。中でも中高年の男性の方が多いのは事実ですが、40代以降の女性でも発症する可能性は十分にあるので注意が必要ですね。

中年以降の肥満気味の人は要注意

肥満は睡眠時無呼吸症候群の主なリスク要因のひとつです。特に首まわりに脂肪がつくと、睡眠中に気道が圧迫され、呼吸が止まりやすくなります。そのため、首まわりが太い方やBMI(体格指数)が高い方は、特に気をつける必要があります。

また、加齢に伴って喉や気道まわりの筋肉が弱くなり、気道が閉塞しやすくなるため、年齢とともに睡眠時無呼吸症候群になる可能性も上がります。

寝る前のアルコール摂取

就寝前にお酒を飲む習慣がある方も要注意です。

お酒を飲むと、のどや舌の筋肉がゆるんで呼吸の通り道が狭くなるため睡眠時無呼吸症候群を悪化させてしまう原因になります。

以前睡眠を測定した方で、飲酒した日は1時間に23回も血中酸素の低下がカウントされたのに対し、飲酒しなかった日は7回と大幅に回数が減ったということがありました。その結果からしても、飲酒が睡眠時無呼吸症候群に及ぼす影響がかなり大きいといえるでしょう。

顔つきの特徴

睡眠時無呼吸症候群は顔つきとも深い関係があるといわれています。必ずしも全員に当てはまるわけではありませんが、気道の閉塞が起こりやすくなる特徴として、

  • あごが小さい
  • 首が太い、または短い
  • 舌が大きい
  • 扁桃腺がある

などが挙げられます。これらの特徴がある方は、睡眠時無呼吸症候群になる要因の一つとして認識しても良いでしょう。

あなたは大丈夫?睡眠時無呼吸症候群の可能性を知るセルフチェック

あなたは大丈夫?睡眠時無呼吸症候群の可能性を知るセルフチェックあなたは大丈夫?睡眠時無呼吸症候群の可能性を知るセルフチェック

睡眠時無呼吸症候群は多くの場合本人が自覚しづらく気が付きにくい病気です。チェックリストを用いることで、発症している可能性を確認することができます。

大きないびきをよくかいている、あるいは指摘されたことがある

睡眠時無呼吸症候群を疑う際に、自覚しやすいのが「いびき」です。自分で頻繁ないびきに気が付くパターンと、家族に大きないびきを指摘されるパターンがあります。いびきが必ずしも悪いわけではありませんが、長時間いびきをかき続けている場合は睡眠時無呼吸症候群を疑う必要があるかもしれません。

日中に強い眠気に襲われることが多い

睡眠時無呼吸症候群を引き起こすと、血中酸素濃度の低下によって睡眠中に酸素が不足し、脳が十分に休むことができません。そのため、日中に強い眠気や倦怠感を感じたり、集中力が低下したりします。

夜間にトイレに起きることが多い

トイレに行きたくなって目が覚めてしまう「夜間頻尿」も睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつと考えられています。呼吸が止まることで心臓に負担がかかり、利尿ホルモンが出やすくなったり、交感神経が刺激されて膀胱が収縮しやすくなることが原因と考えられます。

原因がわからず夜中に目覚めてしまう

無呼吸状態になることで体内の酸素が不足し、二酸化炭素が溜まってしまいます。この状態になると、脳が「酸素が足りない」と感知し、呼吸を再開させようとして体が覚醒状態になります。この一連の過程で、息苦しさを感じ目を覚ましてしまいます。

眠れている感覚があるのに寝不足ぎみ

寝ている間に何度も呼吸が止まることにより、眠れている感覚があったとしても睡眠の質が低下し、体や脳が回復できていない状態になってしまいます。そのため、朝起きたときにすっきりしない、日中に眠くて仕方ないといった状態が続くのです。

ひとつでも当てはまるものがあれば、睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑いましょう。

睡眠時無呼吸症候群かも?と思った時の対処法

睡眠時無呼吸症候群かも?と思った時の対処法睡眠時無呼吸症候群かも?と思った時の対処法

睡眠時無呼吸症候群が疑われた場合、どのような対処法があるのでしょうか?

日常生活で今すぐ始められることもあるので、ぜひ取り入れてみてください。

まずは医療機関へ相談し、治療する

睡眠時無呼吸症候群の可能性があると感じたら、まずは医療機関を受診して、適切な検査を受けることをおすすめします。軽症であっても、放置せずに専門医の診断と治療を受けることが大切です。

睡眠時無呼吸症候群の治療法はいくつかあり、最も一般的なのは、鼻マスクを通して空気を送り込み、気道を常に開いた状態に保つ「CPAP療法 (持続陽圧呼吸療法)」です。様々な重症度に対応可能で、効果が高いとされています。

また、マウスピースを着用する「口腔内装置療法」もあります。歯に装置し、下顎を少し前に出すことで気道を広げます。マウスピースなので持ち運び可能なのがメリットです。
また、自分が寝ている時の脳波を調べることで、睡眠時無呼吸症候群の兆候や、睡眠状態への影響の大きさなどを読み解くことができます。

S’UIMINで行っている「脳波で睡眠計測」は、脳波と血中酸素濃度を測定し、睡眠経過図を作成します。睡眠計測によって自覚しにくい睡眠の状態が分かり、適切な対策方法を導きやすくなります。自宅で測定可能ですので、睡眠時無呼吸症候群の可能性を感じている方はぜひ活用してください。

生活習慣を見直す

睡眠時無呼吸症候群の改善には、医療的な治療だけでなく、生活習慣の見直しも非常に重要です。その効果によって症状を軽減し、治療の効果を高めることが期待できます。

体重を減らす

肥満によって首周りが太くなると、気道が圧迫されやすくなり、睡眠中に呼吸が止まる原因となります。減量することによって気道が確保されやすくなり、呼吸がよりスムーズになります。また、睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされる高血圧や心臓病、脳卒中などにかかるリスクを軽減できる可能性もあるので、バランスの取れた食事や適度な運動を取り入れることを心がけましょう。

飲酒を控える

アルコールを摂取すると一時的にリラックス効果や眠気を誘発するため、「よく眠れる」と感じる人が多いかもしれません。しかし、飲酒によってのどが狭くなって呼吸がしにくくなり、いびきや無呼吸を引き起こす可能性が高まります。

飲酒自体が睡眠の質を全体的に低下させ、日中の倦怠感やパフォーマンスの低下を引き起こす可能性を認識することが大切です。

就寝時の姿勢を見直す

睡眠時無呼吸症候群の改善には寝る姿勢も大切です。仰向けだと、重力の影響で舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭まってしまいます。横向きに寝ることで、気道が確保されやすくなり、いびきや無呼吸が軽減されることがあります。

睡眠時無呼吸症候群は放置せず、早めの対処を

睡眠時無呼吸症候群は放置せず、早めの対処を睡眠時無呼吸症候群は放置せず、早めの対処を

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧や心臓病など、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。自分の睡眠の状態を把握し、早めの対策を心がけることが重要です。

今は特に問題がなくても、5年後や10年後に睡眠時無呼吸症候群になる可能性があるかもしれない、ということを念頭に置き、現状維持していくことが大切です。
睡眠時に起きていることは自覚が難しいものです。相談に来る方の中にはまさか自分が、と思いもよらない結果に驚く方もいらっしゃるので、「自分は大丈夫だろう」と楽観視せず、セルフチェックを行い、少しでも不安があれば診察を受けていただきたいです。
また、パートナーや家族に「大きないびきをかいていないか」など、自分の睡眠について聞いてみるのも手かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は早いうちに症状を自覚して治療すれば、病気のリスクを下げることが十分に可能です。誰にでもなる可能性があることを意識して、早期発見や予防に努めてください。

参照:https://www.suimin.co.jp/column/SAS_03

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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