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価格.com 家電トレンド研究所

高機能スチームオーブンがまさかの失速!? シンプル機能のオーブンレンジが人気の主流となった理由

長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。

第46回は、多くの製品が夏から秋口にかけてモデルチェンジされ、その結果、型落ちモデルがかなりお買い得になってきているオーブンレンジについて、その最新トレンドを解説する。

実は6万円以下で買える製品が多数を占めるオーブンレンジ

今や、キッチン家電の中でもマストアイテムとなった感のある電子レンジやオーブンレンジ。マイクロウェーブで食品を温めるだけのシンプルな電子レンジから、高温のヒーターで本格的な焼き料理をこなせるオーブンレンジ、さらには、高温のスチームで食品を焼き上げるスチームオーブンまで、さまざまな製品があるが、その多くは6月から9月の夏期にモデルチェンジを行う。つまり、9月の今は、多くの旧モデルが型落ちとなって、買いやすくなるシーズンとも言える。

【図1】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)

【図1】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)

図1は、価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーの閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、電子レンジやオーブンレンジの需要が最も高まるのは、年末年始を挟んだ11月から1月くらいの間。気温が下がり、温かい食べ物や飲み物が恋しくなる季節に需要が伸びるためだが、この商戦期に合わせて各メーカーから新モデルが秋口に出そろい、型落ちとなった旧モデルが底値レベルになってくるのがこの時期だからということもある。実際、この時期に売れているのは、必ずしも最新モデルではなく、発売から1年以上を経た型落ちモデルであることが多い。

【図2】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける売れ筋製品タイプの割合(2024年8月時点)

【図2】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける売れ筋製品タイプの割合(2024年8月時点)

【図3】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布(2024年8月時点)

【図3】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布(2024年8月時点)

ちなみに、現在の電子レンジ・オーブンレンジの売れ筋であるが、タイプとしては、高温スチームによる調理機能が付いたスチームオーブンが中心で、全体の半分近くがこのタイプとなる(図2参照)。次いで多いのは、スチーム機能が付かないシンプルなオーブンレンジで約3割。単機能の電子レンジは25%程度となっている。

同様に、製品の価格帯で見ると(図3参照)、売れ筋がいちばん多いのは「24,001〜36,000円」で約28%。次いで「12,001〜24,000円」で約22%。さらに「36,001〜48,000円」が約15%、「48,001〜60,000円」が約8%と続き、6万円以下の製品が全体の8割近くを占める結果となっている。図2の結果と合わせて考えると、24,000円以下の安い製品は、ほぼ単機能の電子レンジで占められていると言えそうだが、スチーム機能の付いた比較的高機能なスチームオーブンでも、その多くが6万円以下で購入できることがわかる。オーブンレンジの価格は、思ったよりも安いと感じる人は多いのではないだろうか。

メーカーシェアでは、高機能でならしたパナソニックが減少し、東芝、シャープが迫る3強の展開に

【図4】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける主要メーカー5社の閲覧者数推移(過去3年)

【図4】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける主要メーカー5社の閲覧者数推移(過去3年)

図4は、ここ3年の価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける主要メーカー5社の閲覧者数推移を示したものだ。これを見ると、3年前は、パナソニックの人気がダントツで高く、その下に、シャープ日立東芝が同数くらいでもつれて2位グループを形成するという状況だった。しかし、徐々にパナソニックの閲覧者数が減少し、2位グループの中でも日立がやや下げて、東芝、シャープが首位のパナソニックに迫るという展開になってきていることがわかる。なお、5位には、2022年からこの市場に新規参入した象印がつけており、独自の存在感を発揮している。

【図5】パナソニックの人気モデル最安価格推移

【図5】パナソニックの人気モデル最安価格推移

かつてパナソニックが人気だったのは、高機能で定評のあった「ビストロ」シリーズが安定した人気を誇っていたためだ。最上位機種は10万円オーバーという高価格設定でありつつも、豊富なオートメニューを武器に、簡単においしい料理が作れると評判で、主に食にこだわるシニア層を中心に人気を得てきた。これにプラスして、シンプルな機能のオーブンレンジや電子レンジのラインアップも揃えるパナソニックは、ほかの追随を許さない強さを誇っていたのだ。しかし、3年にわたったコロナ禍も明け、家庭での食事のあり方もまた元のように戻ってくるのにしたがって、「ビストロ」の人気も徐々に下がってきた。その結果、今やパナソニックでも人気なのは5万円以下で買えるシンプルなオーブンレンジという結果になっている(図5)。

【図6】シャープ(ヘルシオ)の人気モデル最安価格推移

【図6】シャープ(ヘルシオ)の人気モデル最安価格推移

【図7】シャープ(PLAINLY)の人気モデル最安価格推移

【図7】シャープ(PLAINLY)の人気モデル最安価格推移

これだけではなく、10万円を超えるような高機能・高性能のスチームオーブン全体の人気が下がっている。たとえば、シャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」も人気を下げており、モデルチェンジを迎えた直近では型落ちモデルの値下がりが激しい(図6)。逆にシャープでは低価格でシンプルな「PLAINLY(プレーンリー)」シリーズが人気となり、全体のシェアが下がるのを押しとどめている。本シリーズはおおむね4万円以下の低価格帯で展開しており、最近人気を集めている(図7)。また東芝の「石窯ドーム」シリーズも、本格的なパン焼きなどが行える最上位モデルよりは6万円以下で買える中級以下のモデルが人気となり、また、今年発売の新モデルもかなり価格を下げて売っている状況だ(図8)。なお、日立は「ヘルシーシェフ」シリーズの刷新感がなく、今ひとつ冴えない展開で、シェアを落としてきている。

【図8】東芝の人気モデル最安価格推移

【図8】東芝の人気モデル最安価格推移

こうした状況下、よりシンプルで価格も安いオーブンレンジとして、象印が発売した「EVERINO(エブリノ)」が一定の支持を得たのは印象的だ。ユーザー調査によって、実際にはあまり使われていないスチーム機能を省き、電子レンジとオーブンを併用するオートメニューを多数搭載することで、使いやすさをアップした本シリーズが、時代のニーズに合っていたのは間違いないだろう。これを機に、ほかのメーカーも、比較的手ごろな価格で、シンプルな機能性を持った製品をラインアップするようになり、いずれも人気を博している。

こうしたトレンドの変化の結果、今やオーブンレンジ市場は、6万円以下で購入できるシンプルなオーブンレンジ、あるいはスチームオーブンが人気の主流となっている。かつて高機能でならした8万円を超えるような上級モデルは勢いを失い、必要十分な機能・性能を持った手ごろな価格帯のオーブンレンジに取って代わられているが、ユーザーレビューなどを見る限りでも、これくらいの機能・性能で十分という声は多い。また、ここ数年は大きな技術的革新も起こっていないことから、安くなった型落ちモデルを購入しても問題なく最新モデルよりも、型落ちモデルを積極的に狙うのも悪くないだろう。

コレ買っときゃ間違いない! 価格.com編集長が今注目するオーブンレンジ6選

※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年9月19日 時点のものです。

パナソニック「ビストロ NE-BS6A」

NE-BS6A

価格.com最安価格:58,200円
発売日:2022年11月1日発売
ユーザー満足度・評価:★4.04(12人)

パナソニックのスチームオーブンレンジ「ビストロ」のラインアップでは、最も下位に位置する2022年発売のエントリーモデル。エントリーモデルではあるが、必要な機能は十分で、温めから本格的なオーブン調理までさまざまな用途に対応する。人気が高いのは、さまざまな時短メニュー。2〜3人分の中華定番6メニューが10分で調理できる「中華10分」や「こんがり10分」「蒸し物10分」「蒸し焼き15分」「煮物10分」など、忙しい家庭には重宝するメニューが満載。また、それ自体が発熱する「ヒートグリル皿」が付属し、オーブン調理では食材を下からもしっかりと焼き上げられる。

東芝「石窯ドーム ER-D3000A」

価格.com最安価格:59,447円
発売日:2024年7月上旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.00(1人)

東芝「石窯ドーム」のミドルレンジを担うスチームオーブンレンジの最新モデル。今年の7月に発売されたばかりだが、発売当初10万円ほどした価格が一気に4割ほど下落し、昨年の型落ちモデルと同等レベルにまで下がっているのでお買い得だ。300度の高火力による熱風2段オーブンが特徴で、パンやピザなどを一気に焼き上げられる。また、温度センサーの働きにより、分量や食材に合った火加減で自動調理を行ってくれる「石窯おまかせ焼き」を搭載し、本格的なグリル調理が行える。自動メニューも119種類を装備。

シャープ「ヘルシオ AX-NS1A」

AX-NS1A

価格.com最安価格:57,800円
発売日:2023年7月27日発売
ユーザー満足度・評価:★4.63(4人)

独自の過熱水蒸気による調理で、本格的なグリル調理が行えるシャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」。その2023年発売のスタンダードモデルがなんと6万円を切る価格で購入可能。過熱水蒸気による調理は、余計な油分や塩分を落とすことができるので健康的であるばかりか、適当に並べるだけでも、それぞれの食材にしっかり火が通る「まかせて調理」が使えるので便利。お惣菜やパンなどの温めでも、普通のレンジとは違う、表面がパリッとした食感を再現できるなど、ワンランク上の仕上がりを期待できる。無線LAN機能も装備し、スマホと連動させれば、オートメニューを増やすことも可能だ。

日立「ヘルシーシェフ MRO-S8A」

MRO-S8A

価格.com最安価格:28,800円
発売日:2022年7月発売
ユーザー満足度・評価:★4.12(13人)

2年前の型落ちモデルながらも、最新モデルと同等レベルの性能を持ったスチームオーブンレンジ。破格の3万円切りという価格はまさにお買い得だ。食品の重さを量る重量センサーを搭載し、加熱量を自動で算出。温度設定なしでも自動で温め・調理が行える。グリル調理も得意で、レンジとオーブンの両方を使ったオートメニューにより、ワンタッチでの本格調理が可能だ。オートメニューは116種類を搭載し、10分でできるスピードメニューも28種類搭載する。

シャープ「PLAINLY RE-WF264」

RE-WF264

価格.com最安価格:35,860円
発売日:2023年6月発売
ユーザー満足度・評価:★4.40(14人)

シャープのシンプルシリーズ「PLAINLY」の2023年発売のスチームオーブン。比較的コンパクトな庫内容量26Lモデルだが、2段の熱風コンベクション調理に対応。温め時に食品から出る水蒸気量を計測することで絶対温度を測る「らくチン!(絶対湿度)センサー」により、食材や分量の違いを気にすることなく、しっかり賢く温められるのが特徴だ。オートメニューも103種類を装備し、スチーム機能を搭載しながらも3万円台で買えるコスパの高さは必見。

象印「EVERINO ES-GU26」

ES-GU26

価格.com最安価格:37,800円
発売日:2023年9月1日発売
ユーザー満足度・評価:★4.48(21人)

2022年にレンジ業界に初参入した象印「EVERINO」の2代目モデル。あまり使われないスチーム機能を省き、よく使う温めメニューや調理メニューに特化した作りとすることで、価格を安く、シンプルに仕上げた製品だ。ユニークなのは、「レンジ」と「グリル」の両モードを自動で切り換え、時短で本格調理ができる「芯までレジグリ」機能。ボールを浮かせて、温めムラをなくす「全方位あたためうきレジ」なども、新発想の実用的な機能だ。自動メニューは37種類と少なめなので、温め中心で使う人に向いている。

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鎌田 剛(編集部)
Writer
鎌田 剛(編集部)
1996年にソフトバンクにて複数のパソコン情報誌の編集・立ち上げに携わった後、2002年にカカクコム入社。2006年「価格.comマガジン」を創刊。以降、編集長としてメディア運営に携わる。日経MJにてコラム連載、ラジオ出演なども幅広く行う。家電製品アドバイザー資格保持者。
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北島圭介(編集部)
Editor
北島圭介(編集部)
出版社で10数年、編集者として経験を積み、2022年にカカクコム入社。家電製品から文房具など、さまざまな商品を検証するモノ雑誌の編集経験を生かし、価格.comマガジンで生活家電を中心に気になる製品をレビューしている。
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