シャープのドラム式洗濯乾燥機の上位モデル(洗濯・脱水容量11kg/乾燥容量6kg)がモデルチェンジ。従来の2機種から3機種にラインアップを拡充し、最上位機のみだった「乾燥フィルター自動お掃除」機能が全機種に搭載されました。さらに、ドアパッキンの裏側を自動で掃除する機能を追加し、すすぎ方法を改良することで衣類の洗剤残りを抑えるなど、お手入れ性と洗濯性能を向上させながらトップクラスの省エネ性能を実現。発表会で見てきた新モデルの進化ポイントを最上位機「ES-X11B」を中心に紹介します。
新モデル3機種はすべてヒートポンプ乾燥方式を採用していますが、最上位機「ES-X11B」はヒーターを組み合わせた「ハイブリッド乾燥NEXT」となります。最上位機は洗濯〜乾燥時の使用水量で業界最高水準の節水を実現しているのもポイント
右側からグレードが高い順。最上位機「ES-X11B」(市場想定価格は426,000円/税込)はクリスタルシルバーとリッチブラウンの2色展開で、その他2機種は「ES-V11B」(市場想定価格は396,000円/税込)がアッシュゴールド、「ES-G11B」(市場想定価格は366,000円/税込)がシルバー系の1色展開です。全機種2023年9月14日発売予定
ドラム式洗濯乾燥機はドラムを回転させ、衣類を持ち上げて下に落として洗うたたき洗いが基本的な洗い方ですが、シャープの上位モデルは、毎秒100万個以上の微細な水滴を噴射する「マイクロ高圧シャワー」を搭載しており、衣類に高圧のシャワーを噴射することで、洗濯時は繊維の奥の汚れまで弾き飛ばし、すすぎ時は衣類から洗剤を洗い流します。この基本的な仕組みはそのままに、新モデルは均等な水圧でシャワーを当てられるようにシャワーの噴射角度を調整。同時に、すすぎ工程でのドラムの回転速度を上げ、タンブリング制御を変更した「高圧シャワーすすぎ」で、使用水量を抑えつつ、さらに繊維に残る洗剤成分をしっかり洗い流せるようになりました。
最上位機「ES-X11B」では「マイクロ高圧シャワー」の噴出口は見えませんが、ドラムの左上にあり、ここから衣類に勢いよくシャワーが噴射されます
シャワーの噴射範囲が広いと外側の水圧が弱くなってしまうため、噴射範囲を縮小し、どの部分でも均等な水圧のシャワー噴射を実現。さらに、すすぎ時のドラムの回転を従来よりも高速にして洗剤を素早く押し出し、ドラム槽内への衣類の張り付きを抑えるタンブリング制御を調整することで、すすぎ効率がアップしました
「高圧シャワーすすぎ」の有無で、衣類の洗剤残りを比較。脱水時に衣類から出た水にブラックライトを当てると、洗剤が残っているほうが光りますが……、「高圧シャワーすすぎ」ですすいだほうはほぼ透明。すすぎ工程でしっかり洗剤が洗い流されていることがわかります
同様の方法で、脱水した衣類の繊維に残る洗剤を比較。「高圧シャワーすすぎ」ですすいでいない左側の衣類はブラックライトに反応する部分が多く見られました。これは、洗剤が落とし切れていないということです
最上位機「ES-X11B」は、この新しいタンブリング制御と、前モデルにも搭載されていた排水フィルターを通過させたきれいな水を再利用する循環ポンプの効果で、すすぎ時に追加で必要になる水の量を抑制。洗濯〜乾燥(6kg)時の標準使用水量が前モデルの52Lから49Lに減りました。
ドラム式洗濯乾燥機では洗濯から乾燥まで完了するコースを使うことが多いですが、乾燥運転後には毎回、乾燥フィルターの掃除が必要です。その手間を解消するため、シャープは2018年以降、最上位機に「乾燥フィルター自動お掃除」機能を搭載。エアコンのフィルター自動お掃除機能のようなもので、乾燥運転のたびにフィルターに付いたホコリやゴミをブレードでかき取り、ダストボックスに溜めていく仕組みなので、衣類によって異なりますが1週間〜1か月半ほどお手入れせずに済みます。この機能を、新モデルは最上位機以外にも展開。乾燥フィルターのお手入れを怠ると、フィルターが目詰まりして乾燥時間が延びて電気代がムダにかかるので、「乾燥フィルター自動お掃除」機能を新たに備えたことで、中位機「ES-V11B」の洗濯〜乾燥時の消費電力量がダウン。前モデルと比べ、20Wh低い880Whを実現しました。
洗濯機上部に、自動お掃除機能を備えた乾燥フィルターを搭載
ブレードが回転してフィルターに付着したホコリを取り除き、左側のダストボックスに溜めていきます
「乾燥フィルター自動お掃除」機能と、温度センサーや湿度センサーなどを使ったセンシング技術により、最上位機「ES-X11B」は洗濯〜乾燥時の消費電力量600Whと業界最高水準の省エネ性能を、「ES-V11B」と「ES-G11B」は880Whと業界トップクラスの省エネ性能を実現しました
そして、ドラムと乾燥フィルターをつなぐホース「乾燥ダクト」に溜まるホコリも見過ごせません。この部分は取り外してお手入れできないため、従来モデルにも給水時の水を利用して毎回自動で洗い流す「乾燥ダクト自動お掃除」機能が搭載されていましたが、まとめ洗いなどが増えたことにより、従来の構造では出口付近に溜まったホコリが取りきれないことがあったそう。そこで、水が出るノズルの位置を乾燥ダクト上部に変え、約180度に散水できる形状にし、洗浄面積を拡大。乾燥ダクト内の凹凸も減らし、より汚れが溜まりにくくなりました。なお、「ES-G11B」には新構造の乾燥ダクトは採用されていません。
矢印の部分が「乾燥ダクト」。乾燥時の温風に乗って運ばれたホコリなどが付着するだけでなく、洗剤や柔軟剤を入れすぎると乾燥ダクトにまで泡が上がり、糸くずなどと合わさって汚れが固まって蓄積することもあるそう。そうした汚れが溜まると、乾燥フィルターをお掃除していても、乾燥フィルターの掃除をうながすエラーメッセージが出ることがあるといいます
「乾燥ダクト」の上部に付いている白いパーツが、水が出るノズル。新モデルに採用された形状は、かなり上部(出口近く)の配置となりました
ノズルの噴出口も改良し、噴射範囲を拡大。ダクト壁面の凹凸も減らし、洗浄水でホコリを洗い落としやすくなりました
また、乾燥運転を使用すると衣類から出た繊維やホコリなどがドアパッキンの裏側にも付着します。洗濯時の水が流れる部分なので、ホコリや汚れが付着したままにしておくと排水がうまくできず、水漏れしてしまうことも。そこで、新モデルは「ドアパッキン自動洗浄」機能を追加。他メーカーには、ドアパッキン裏側の汚れを洗い流すために水を分岐させる方法を採用しているモデルもありますが、シャープは洗濯時に使用する「マイクロ高圧シャワー」を応用しています。洗濯機のドア裏にある「ひまわりガラス」に当たった「マイクロ高圧シャワー」がドアパッキンの裏側に入る設計になっているので、専用の流路を設けなくても汚れを洗い流すことが可能。メーカーの公式サイトでは新機能と記されていますが、従来モデルにも「マイクロ高圧シャワー」や「ひまわりガラス」は搭載されているので、従来モデルでもドアパッキンの裏側の汚れを洗い流していたそう。その点は変わりませんが、新モデルは「マイクロ高圧シャワー」の噴射範囲が調整されたことで、ドアパッキンの裏側の汚れがさらにしっかりと落とせるようになったそうです。
ドアパッキンの裏側に汚れが溜まると水の排出が妨げられ、水漏れの原因になります
大きく突き出したドア裏の「ひまわりガラス」に「マイクロ高圧シャワー」や洗濯やすすぎ時で使用する水が当たり、拡散された水がドアパッキンの裏に入り、汚れを落とします。新モデルでは「マイクロ高圧シャワー」の噴射範囲を調整することで水圧が上がったため、従来モデルでは落とせないこともあった糊状になってへばりついた洗剤成分も洗い流せるようになったとのこと。なお、「ひまわりガラス」は洗濯時、洗濯板の効果も発揮します
ちなみに、ドラム槽の裏側や前面部、外槽の内側などを洗濯のたびに洗い流す「洗濯槽自動お掃除」機能は引き続き搭載。汚れの付着を抑え、黒カビの発生を抑制してくれます。また、人気の「液体洗剤・柔軟剤自動投入」機能も備えていますが、シャープは液体洗剤や柔軟剤を流す経路を常にきれいな水で満たし、水をコントロールすることで液体洗剤や柔軟剤を取り出す「ウォーターポンプ方式」を採用しているのがポイント。主流である「ピストンポンプ方式」よりも液体洗剤や柔軟剤が空気に触れることが少ないため、目詰まりが防げ、お手入れの頻度が6か月に1回で済みます。
「液体洗剤・柔軟剤自動投入」のタンクは取り外して洗えます
新モデルは3機種すべてが高い省エネ性能を実現しているということだったので、価格.comでヒートポンプ乾燥方式を採用した同クラス(洗濯・脱水容量11kg/乾燥容量6kg)のドラム式洗濯乾燥機と洗濯〜乾燥時の消費電力量を調べてみると、他メーカー製品は890〜930Whが多いのに対し、シャープは中位機の「ES-V11B」と「ES-G11B」でも880Whと低い数値でした。この結果から、メーカーが謳うとおり、「乾燥フィルター自動お掃除」機能を搭載した省エネ効果は高いと言えそう。そして、さらに高い省エネ性能を有するのが最上位機「ES-X11B」。ヒートポンプ乾燥とサポートヒーターを組み合わせた乾燥方法「ハイブリッド乾燥NEXT」を採用することで、洗濯〜乾燥時の消費電力量600Whを実現しています。一般的にヒーターを使うと電気代がよりかかるイメージを持ちますが、ヒートポンプは立ち上がりに時間がかかり、その分、電力がかかるそう。立ち上がり時にサポートヒーターをオンにすることで、消費電力量が低減できるといいます。
サポートヒーターは30度くらいプラスできるくらいの性能で、フルで稼働させても消費電力はそれほどかからないとのこと
また、サポートヒーターは乾燥運転時にも稼働します。ヒートポンプ乾燥は空気中の湿気を熱に変え、新しい温風を出す仕組みなため、乾燥工程が進み、衣類から出る湿気が少なくなると除湿効率が下がり、厚手の生地などが乾ききらないこともあるのだとか。それに対し「ハイブリッド乾燥NEXT」は、温度センサーと湿度センサーでドラム内を見張り、必要なタイミングでサポートヒーターをオンにすることで、乾燥中の衣類の温度を一定に保ち、安定した仕上がりを実現します。
サポートヒーターを使うことで、衣類の温度を約60度でキープして乾かせるのも「ハイブリッド乾燥NEXT」の特徴のひとつ
ちなみに、「ハイブリッド乾燥NEXT」は湿った空気を本体の外に出さない「無排気乾燥」ができるのもポイント。湿った空気をヒートポンプで除湿し、乾いた空気にしてドラム内に戻すというように循環させる方法を採用しているので、排気で洗濯機を置いている場所の湿度が上がることがありません。また、排気音がないので静かで、排気していた熱を再利用できるというメリットもあります。メーカー担当者によると、無排気乾燥はヒートポンプだけでは除湿が間に合わないため、サポートヒーターも使用する「ハイブリッド乾燥NEXT」だからこそできることなのだそう。