ファーウェイが2025年2月13日に発売したスマートウォッチ「HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計」。最大の特徴は、日本の管理医療機器として承認された血圧計を搭載していることだ。しかも、24時間自動で血圧をモニタリングするという画期的な新機能も備えている。
「HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計」、メーカー公式価格60,280円(税込)、2025年2月13日発売
「HUAWEI WATCH D2」は一般発売に先駆けて、2024年12月6日からクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」に出品されていた。2か月弱の期間に3199人が先行購入を申し込み、支援総額は1億6000万円に達したという。そんな話題のデバイスを、普段から血圧計のお世話になっている筆者が試用してみた。
「HUAWEI WATCH D2」は、日本では2023年6月に発売されたファーウェイ初の血圧計搭載スマートウォッチ「HUAWEI WATCH D」の後継モデルだ。筆者は前モデルも試用したことがあるが、スマートウォッチとしてはやや大きめで、いかにも健康器具という印象だった。
新しい「HUAWEI WATCH D2」は、ディスプレイが前モデルの約1.64インチから約1.83インチへと大きくなったものの、ケースのサイズ感は同等。内側にカフ(血圧を測定するためのエアーバッグ)が付いたベルトの幅は前モデルの約30mmから約26.5mmとスリムになり、ベルトを含む重さは約10%も軽くなっている。一般的なスマートウォッチの装着感に近づき、パッと見では、それが血圧計であることはわからないだろう。
ケースサイズは約38(幅)×48(高さ)×13.3(厚さ)mmで、重さは約40g(ベルトを含まず)。ディスプレイは有機ELで約1.82インチ、解像度は480×408
ベルト幅は約26.5mm。一般的なスマートウォッチよりは太いが、気にならない程度の太さだ
自分の手首にフィットする位置にバックルを固定し、カチッとしっかり留められるタイプ
ベルトはM、Lの2サイズを同梱。着用ガイドで装着する手首のサイズを測ってから、どちらを使うかを決められる。前モデルはベルトの内側のカフに布製のカバーがかけられていたが、「HUAWEI WATCH D2」ではTPU樹脂を採用。薄くなり、装着感が向上したと感じた。
ベルトの内側にカフ(エアーバッグ)が付いている
ケースの下に穴があり、そこから空気が送り込まれる仕組みだ
カラバリはブラックとゴールドの2色。筆者が試用したブラックのベルトは、汗に強いフルオロエマストマーを採用し、運動をするときにも最適。もう1色のゴールドは、ベルトがホワイトレザー製で、大きく印象が異なる。
「HUAWEI WATCH D2」は、iOS 13.0以降またはAndroid 8.0以降を搭載するスマホと接続可能。筆者はiPhone 16 Pro(iOS 18.3)とペアリングして使った。
健康モニタリングや通知の設定、測定したデータの管理などに使う「HUAWEI Health」アプリはApp Storeからダウンロードした。なお、Androidスマホと接続して使う場合、「Google Play」は「HUAWEI Health」アプリを配信しておらず、ファーウェイの「AppGallery」などからの入手が必要だ。製品のパッケージや同梱されているガイドに記されたQRコードを読み取ると、ダウンロードできるサイトに誘導される。
「HUAWEI Health」アプリでヘルスケアデータを管理。デバイスの各種設定も行える
「HUAWEI WATCH D2」の右側面には2つのボタンがある。上の「回転式クラウン」を押すと、アプリ一覧が表示され、回転すると画面表示の拡大・縮小ができる。下の「機能ボタン」には、よく使うアプリを設定することが可能。初期設定は「血圧」になっている。
右側面に回転式クラウンと機能ボタンを搭載
クラウンは回して操作できる。アプリ一覧画面の拡大・縮小、リスト表示のスクロールができる
機能ボタンにはワークアウト、カレンダー、心電図など、よく使うアプリを設定できる
血圧を測定するには、クラウンを押して「血圧」を選択、もしくは下ボタンを押す。「血圧」アプリを初めて起動した際は、測定方法のガイドなどが表示された。2回目以降は「測定」をタップするだけ。
測定開始まで5秒間のカウントダウンが表示されるので、その間に姿勢を整える。椅子に座ってウォッチが心臓の高さにくるように胸に当てて、落ち着いて静止。測定中は声も出さないように。測定に要する時間は約1分。カフにゆっくり空気が送り込まれて、手首を圧迫し、しばらくすると空気が抜けて、測定が完了するとバイブレーションでわかる。
「血圧」アプリを起動して「測定」をタップすると、測定が始まり約1分で結果が表示される
ウォッチを心臓の高さで静止させて、声を出さずに測定する
筆者は、循環器の基礎疾患(手術済み)があり、6年前から自宅でも血圧を測っている。「HUAWEI WATCH D2」を使い始めた当初は、普段使っている上腕式の血圧計よりも血圧値が著しく高く表示されたりすることがあったが、数日で測定値は安定してきた。手首で測定する場合、ウォッチを装着する位置やタイトさによって測定値にかなりの誤差が生じるようだ。筆者の場合、手の平の付け根から指2本分ほど離した位置で、ややキツめに装着することで測定値が安定した。
測定した血圧値は、すぐに画面に表示され、スマホの「HUAWEI Health」アプリに同期される。「HUAWEI Health」では、より詳細な結果が見られ、血圧の変動をグラフで確認することもできる。
測定した血圧値は「HUAWEI Health」アプリに蓄積される。変動を確認でき、分析結果も見られる
自宅に血圧計があっても、忙しいときや疲れているときは測定を忘れがちだ。また、家庭用として普及している上腕式の血圧計は、旅行や出張に持っていくにはかさばる。いつでもどこでも血圧を測定できることは、「HUAWEI WATCH D2」の最大の利点と言えよう。
筆者が普段使っている上腕式の血圧計と「HUAWEI WATCH D2」の大きさを比べてみると、圧倒的に小さいことがよくわかる
新たに搭載された「自動血圧モニタリング」機能も試してみた。一般的に血圧は、朝起きたときと夜の就寝前に測定する人が多い。しかし、血圧は常に変動している。高血圧症にもさまざまなタイプがあり、日中に著しく上昇する人がいれば、睡眠時に上昇する人もいるらしい。
「自動血圧モニタリング」は、医療現場では「ABPM(Ambulatory Blood Pressure Monitoring:24時間自由行動下血圧測定)」と呼ばれており、その検査には一日中腕にカフを巻き、血圧計をぶら下げている必要がある。そんな「ABPM」を手軽に行えるのが「HUAWEI WATCH D2」の利点だろう。なお、この機能は管理医療機器認証外だ。
「自動血圧モニタリング」を行うには事前の設定が必要となる。アプリを起動した後、モニタリングの開始時間、夜に寝る時間、日中と夜間それぞれの測定の間隔を指定。さらに、日中の測定を自動または手動で行うかを選択する。
「自動血圧モニタリング」アプリを起動して、日中と夜間それぞれの測定の間隔や、日中の測定を自動にするか手動にするかなどを設定する
日中の測定を自動にすると、測定時間になると通知され、7秒後に自動で測定が始まる。手首を胸に当てる姿勢が取れなくても、声を出さずにじっとしていれば測定される。それができない場合は、測定をスキップすることも可能だ。
自動で測定する設定にした場合も、測定が始まる直前に通知される。静止できない場合は「5分遅らせる」を選択可能。測定中に動いた場合は、測定に失敗することが多かった
手動に設定した場合は、通知された後、通常の方法で測定する。ファーウェイに聞いたところ、精度を重視するなら手動測定が望ましいようだ。
手動に設定した場合は、測定すべき時間になったら通知される。「測定」をタップすると、5秒以内にウォッチを心臓の高さにする。測定できない場合は「スキップ」することもできる
夜間は自動で測定されるが、寝返りを打つなど、動いた場合は「測定失敗」となり、血圧値は記録されない。睡眠中に手首を圧迫されると目が覚めるのでは? と気になっていたのだが、夜間の圧迫は日中よりも控えめのようで、夜中に目が覚めることはなかった。
実際に測定してみると、日中の血圧が思っていた以上に高かったり、睡眠時は比較的低くなるものの、それでも高いと判定されたり、と多くの発見があった。詳細な計測データは「HUAWEI Health」アプリで確認できる。
自動血圧モニタリングの結果は「HUAWEI Health」アプリで確認可能。測定に失敗した記録も含め、かなり細かく表示される
結果をプリントすることもできる
「自動血圧モニタリング」は毎日行う必要はなく、月に1〜2回程度の測定で十分らしい。筆者が何度か試してみたところ、いつも「有効な日中データが不足しています」と表示された。手動にしても測定できない状況はあり、自動にしていても動かざるを得ず、測定に失敗することもある。ABPMは、普段どおりの生活をしながら測定するものではあるが、忙しい日には不向きだと感じた。
「HUAWEI WATCH D2」の血圧測定と並ぶ、もうひとつの大きな特徴が「心電図」機能だ。2024年12月6日に製品が発表された際には公表されていなかったが、それから2週間後の12月20日に機能の追加が発表された。
実は、日本国外にて、ファーウェイは心電図(ECG)機能を搭載したスマートウォッチを発売している。前モデル「HUAWEI WATCH D」も心電図機能を搭載していたが、日本では医療機器の承認が取れず、使えない設定になっていた。今回の「HUAWEI WATCH D2」は、晴れて日本のプログラム医療機器承認を取得し、正確な心電図が取れて、健康管理に生かせることがお墨付きとなった。
心電図の測定は非常に簡単。プリインストールされている「心電図」アプリを起動し、機能ボタンに指を当てる。初回のみ測定方法のガイドなどが表示されるが、2回目以降はただ指を当てて、じっとしているだけ。測定時間は約30秒。画面のカウントダウン表示を眺めていれば、あっという間に終わる。
机の上などにウォッチが水平になるように置き、「心電図」アプリを起動し、機能ボタンに指を当てるだけで測定が始まる
約30秒後に結果が表示される
測定結果は「洞調律」「心房細動」「心拍数が110より上」「心拍数が50より下」「判定不能」のいずれかで表示される。
心電図測定の結果は5つ(出典:ファーウェイ・ジャパンのプレスリリース)
筆者が不自然な体勢で測定したところ、「判定不能」になったことがあったが、そうした例外を除けば常に「洞調律」と表示された。洞調律は心房細動の兆候が見られず、心臓が正常なリズムで動いている状態をさす。要するに“安心してよい”である。
「心房細動」と表示された場合は注意が必要だ。心房細動とは、脈のリズムが不規則になる不整脈の一種だ。これが表示されたら、たとえ自覚症状がなかったとしても、病院で診断を受けるべきだろう。
心電図を取る際、心拍数も同時に測定される。心拍数が110以上もしくは50以下だった場合は、その結果が表示。また、何かしらの要因で測定に失敗した場合は「判定不能」と表示される。これらの場合も心電図のデータは記録され「HUAWEI Health」アプリに同期される。結果はプリントしたり、PDFファイルにしたりすることも可能だ。
心電図の測定結果も「HUAWEI Health」アプリで確認できる。測定後に、症状を登録できるが、アプリから追加、編集も可能だ
心電図レポートは印刷したり、PDFファイルにして保存したりできる
「HUAWEI WATCH D2」を使って、血圧測定以外に、さらに感動したことがある。それはフツーのスマートウォッチとしても十分すぎる機能を備えていることだ。
ヘルスケア機能は、心拍数、血中酸素レベル、睡眠、ストレス、情報(メンタルヘルス)、皮膚温を測定できる。さらに、ワンタップで心拍数、血中酸素レベル、ストレス値、皮膚温をまとめて測定できる「Health Glance」という機能も搭載。また、摂取したカロリーを入力すると、その日の消費カロリーと照合されて過不足がわかる「ボディメーカー」という独自機能も備えている。
4つの健康指標をワンタップから30秒で測定できる「Health Glance」
カロリーの過不足がわかる「ボディメーカー」。ダイエットに重宝しそうだ
ワークアウトモードは80種類以上。自分の体力や目的に合ったランニングのプランを立ててくれたり、音声でガイドしてくれたりする機能も利用できる。
ワークアウトのメニューも充実している
「HUAWEI WATCH D2」に初期設定されている文字盤には、直近で測定した血圧値が大きく表示されるのだが、血圧値が目立たないものや表示されないものなど、多彩なデザインが用意されている。
筆者は、血圧値(この画面では132と86)が目立たず表示される、この文字盤に切り替えて使っていた
「HUAWEI Health」アプリで文字盤をインストールすることが可能。無料のものも多数ある
電池持ちは通常使用で最大6日、血圧の自動測定を有効にした場合は最大1日となっていたが、筆者が実際に使った範囲では、それ以上に持続した。自動血圧モニタリングを使用しても、モニタリング中に電池が切れてしまうことはなく、むしろ1日使っても50%以上残っていることもあった。
付属の充電クレードル付きUSBケーブルで充電する
「HUAWEI WATCH D2」の購入を検討している人は、おそらく血圧計が目当てだろう。ヘルスケア機能が充実しているぶん、足りない機能があるように思うかもしれないが、その心配は無用。スマートウォッチとしての標準機能はもれなく備えている。
前モデルの「HUAWEI WATCH D」は“持ち歩ける血圧計”といった印象で、普段お気に入りのスマートウォッチを着けている人が血圧を測るときだけ着け替えるのもアリだと思った。しかし、新しい「HUAWEI WATCH D2」は装着感がよく、常に身に着けるスマートウォッチとしても申し分ないと思えた。
日本で買えるスマートウォッチで血圧を測れるのは、「HUAWEI WATCH D」と「HUAWEI WATCH D2」のみだ。心電図はアップルの「Apple Watch(Series 4以降とUltraシリーズ)」 にも搭載されているが、血圧と心電図の両方を測定できるのは「HUAWEI WATCH D2」の一択。現時点では、「HUAWEI WATCH D2」は最もヘルスケア機能が充実したスマートウォッチと評価できる。基礎疾患がある人はもちろん、健康に対する意識が高い人にも魅力的な選択肢となるだろう。