超高齢化社会に突入した日本。気がつけば私の父親も今年「米寿(88歳)」を迎えてしまいました。幸い大きな持病もなく、健康状態はよいほうだと思います。
とはいえ、日本人男性の平均寿命を超えていることには変わりはなく、遠方の実家にひとりで暮らす父親を案じる日々を送っていました。こういう事情から、私は次第に「ネットワークカメラ」に興味を持つこととなります。
そんな折、2021年の暮れに「ATOM Cam Swing」という、画期的なネットワークカメラが発売されることを知ることとなります。「5,000円ほどの低価格」なのに、「首振り機能」まで搭載されていたので、迷わず予約購入しました(正直、1万円以上だったら間違いなく買いません……)。
カンタン設定のネットワークカメラ「ATOM Cam Swing」。低価格だが、高機能なAI自動追跡(首振り機能)機能による広範囲の見守りが行える
百聞は一見にしかず、ということで、私の実家に設置したATOM Cam Swingが自動録画した、実際の「12秒のイベント動画」を見ていただきましょう。本機はこのような動画を、自動で録画してくれるのです。
ということで、「2022年の正月に帰省し、実家のWi-Fiを使ってATOM Camをセットアップしました。父親が多くの時間を過ごす居間の壁に、ATOM Camの設置が完了しました。固定方法は、自作L字ステーで壁にねじ止めです。
実家に設置しているATOMcamの実際の映像(スクリーンショット)
自分のスマホから「実家のライブ映像」をいつでも見ることができるというのは、思った以上に安心感があります。特に、モーション検知ごとに自動的にイベント動画を12秒録画し、クラウドサーバーに保存してくれる機能は秀逸! 常にライブ映像を見続けなくても、親が何時に起きて、何時に食事をして……という、近々の録画履歴を、少し後から確認することができるのです。今の主な「見守り方法」は、この履歴動画をチェックすることです。
※無料でイベント動画がサーバー(日本AWSクラウド)に2週間保存されます。
また、妹のスマホにも共有(ゲスト)させることができ、ゲストから映像確認(ライブ・履歴)、カメラ操作・設定変更も可能です(一部、ホスト側しかできない設定あり)。
設置から4か月経ちますが、今のところ大きなトラブルもなく問題なく動作しています。ただ、故障しやすいと考えられるモーター駆動製品ですので、この先いつまで動作してくれるかは未知数ではありますが。
私のように、高齢の親とやむなく離れて暮らす方は多いと思います。実際、私の知り合いからも「親の見守りのためにこのネットワークカメラのことを知りたい」と電話がかかってきたくらいですから。ですので、同じようなお悩みの方々を、勝手ながら「独居親見守り隊」と命名することとしました。
本稿では「独居親見守り隊」のために、
●ATOM Cam Swing を設置するのに必要な環境
●ATOM Cam Swingの特徴
●購入後すぐに使えるような、【非公式】セットアップ・マニュアル
●固定設置の方法
など、導入に必要かつ有益と思われる情報をお伝えしていきます。
なお、本稿では「独居親見守り隊」に必要な情報に絞っており、不要と思われるそのほかの機能の説明は割愛させていただきます。
購入後のセットアップ方法も記載してありますので、不必要な方は飛ばしてくださいませ。
本機ではどんなことができるのか、ざっと箇条書きにしてみました。
アプリのメイン画面。ライブ映像/自動録画イベント動画 履歴(6.)
1. 導入しやすい低価格のネットワークカメラ(記事公開時点で5,000円弱)
2. スマホで簡単セットアップ(ネットワークの詳しい知識がなくてもOK)
3. スマホアプリでリアルタイム遠隔映像受信(音声の送受信もあり)
4. 物理パン&チルトでほぼ死角なし(遠隔手動操作 or 自動AI追跡)
5. 動体をAIによって自動首振り追跡
6. 動体を検知(モーション検知/サウンド検知)すると、12秒のイベント動画を自動録画保存(ネット経由で日本AWSクラウドに過去2週間分保存。選択映像をスマホにダウンロード可)
7. 暗闇でもしっかり見えるナイトビジョン(赤外線暗視カメラ)搭載。(切り替えは自動or手動)
8. モーション検知時、スマホに通知を送ることも可能
9. 複数のスマホで共有可能(ホストアカウント以外の別アカウントでも、映像受信・カメラ操作が可能)
10. 実は防水設計! 屋外設置も想定されている
何ができるかわかったところで、使うためには何が必要なのでしょうか。
1. 設置場所でのインターネット常時接続 +「Wi-Fi(2.4GHz)」が飛んでいる環境。(スマホのテザリングではダメ。ポケットWI-Fiは使えます)
2. AC電源環境(100V)
※付属の専用ケーブルは1.8m(別売りの4.5m専用ケーブルは、メーカーの「ATOMストア」にて販売)
3. ATOM Cam設定用、映像受信用のiOSかAndroidのスマホ(もしくはタブレット)
4. 親からの、見守りカメラ設置許可(← 後々のトラブルを回避するため、これは大切!)
私の場合、私と私の妹以外は見ることができないことを伝え、見守りカメラ設置の目的をしっかり理解してもらいました。
本機を写真で見ていきましょう。
こちらが同梱全品
350mlの缶ビールとだいたい同サイズ。重さはビールより100gほど軽い
本体にあるのはリセットボタンのみ(レンズパーツの底辺に)
底面には、固定用ねじ穴(1/4インチ)あり
付属のUSB電源ケーブルは特殊な形状をしています。市販のUSBケーブルは使えないと考えるべきでしょう
本機のセットアップとは、カメラ本体にWi-Fi接続情報を記録させることです。アプリの指示に従ってセットアップを行うのですが、イラスト表示でわかりやすくなっています。
ここでは、間違いやすい点などいくつかのポイントを補足して説明します。
下記の順番通りにセットアップすれば、所要時間5分ほどで完了するはずです。
1. 登録用スマホ(タブレット)を、あらかじめ 設置場所のWi-Fi(2.4GHz)に接続しておく。
※5GHz帯に接続されていることが多いのですが、必ず「2.4GHz帯」に変更しておくこと。
2. 接続Wi-Fiの「パスワードをメモ」しておく。(← 大切!)
3. スマホアプリ「ATOMスマートライフ」をインストール
AppStore、Google Playより「ATOM」と検索 →「ATOMスマートライフ」
4. アプリのアカウント作成(メールアドレス・パスワードを登録)
→ 認証コード メール受信、アプリにコード入力 → ATOMのアカウント作成完了
ATOMアカウント作成後、初回起動時の画面
5-1.〈アプリ〉ホーム→デバイスを追加(+)→ ATOM Cam Swingを選択
以下、アプリの指示通り( →→ は「次へ」ボタンをタップ )
5-2.〈カメラ本体〉レンズ保護フィルムをはがす →→
5-3.〈カメラ本体〉電源ケーブルを本体に挿入 →→ (ステータスランプが黄点滅+ 首振り [約15秒] 待つ → カメラ起動)
5-4.〈カメラ本体〉RESETボタン(レンズパーツの底面左側にある)を1秒ほど押し込む →→
5-5.〈カメラ本体〉日本語でカメラがしゃべります「リセットできました。接続待ちです…接続待ちです…」(黄点滅のまま)
5-6.〈アプリ〉Wi-Fiに接続 = 2.4GHz帯SSIDを選択 + Wi-Fiパスワードを“手入力”する →→
接続に失敗するのは、たいていここが原因
5-7.〈アプリ〉QRコードが表示される(Wi-Fi情報のQRコード)
5-8.〈カメラ本体〉QRコードを読み込ませる(レンズから15〜25cmのところからQRコードをかざす)
セットアップの手順がわかりやすいイラスト入りアプリ画面
5-9.〈カメラ本体〉「QRコードを認識しました。しばらくお待ちください(黄青点滅)」[成功なら15秒ほど]
5-10.〈アプリ〉→→ 120秒のカウントダウン(あまり意味はない)
5-11.〈カメラ本体〉「設定が完了しました(青点滅→青点灯)」ドヤ感たっぷりに首振り、デフォルトポジションへ
6. ATOM CamにWi-Fi情報が記憶され、カメラのネット接続が完了しました。
→ アプリから閲覧・操作ができるようになっています。なお、電源を抜いても情報は記憶されたままです。
(RESETボタンを押すとWi-Fi情報が消去される仕組みですので、不用意に押さないよう注意!)
※5-9が、30秒以上かかる場合失敗の可能性大。
〈カメラ本体〉「インターネット接続に失敗しました」
原因1:5GHz帯のWi-Fiを選択した(5-6)※5GHz帯は使えない
原因2:パスワードが空欄、もしくは間違っている(5-6)
原因3:ルーターに制限がかかっている。→ ルーター設定を見直す(MACアドレスはATOM Cam底面に明記)
原因4:設定が間違っていなくても、失敗することがよくある。RESETボタンを押すところ(5-4)からやり直す。
※ファームウェア・アップデートがある場合、ネット接続と同時に(5-11)が行われる(所要時間5分ほど) ※この間、電源を切ってはいけない。
ATOM Cam Swingを壁に取り付けるのに適しているのが、KIWI design「防犯カメラスタンド カメラマウント」。私の場合、実家の居間の壁には「ホームセンターで入手したL字金具」を使って取り付けましたが、これには多少の工夫が必要です。
職業がカメラマンである私にとってさほど難しい工作ではありませんでしたが、「独居親見守り隊」の皆さますべてがDIYを得意としているとは限りません。そこで、取り付けが容易そうな、この「防犯カメラスタンド カメラマウント」を試しに購入してみました。
2022年3月に1,000円弱で購入。2022年4月末日現在、残念ながら1個売りは黒しかないようです
結論から申し上げると、このスタンドは、ATOM Cam Swingを取り付けるのにかなり適していることがわかりました。強度も問題ありません。デザインもカメラとマッチするので、おしゃれな部屋でも違和感なく設置できると思います(むしろ、カワイイ)。
ただ、このマウントで壁に固定するとなると、壁に木ねじで穴があくことを覚悟してください。壁材がしっかりしている場合は、ねじ2本でも固定できます(←棚を設置するより遥かに簡単なDIY)。
もちろん、この製品以外での壁付けマウントも可能です。その場合、4cm以上突き出せるものを選んでください。
見守りカメラの役割を考えると、できるだけ広範囲が見渡せる場所が適していることになります。となると、高い位置に設置して、カメラが見下ろし視線になることがベストと考えます。そういえば、店舗や街に付いている「防犯カメラ」は、決まって高い位置に設置されていますもんね!
カメラのベストボジションとしては、下記のような要件でしょうか。
・親が1日の多くを過ごす部屋
・立って頭が当たらない、天井近くの高い位置(手をのばすと届く高さが管理しやすい)
・部屋の壁の左右の真ん中(360°横回転できるため)
見守りカメラとして壁に取り付ける場合、上下逆さまにして取り付けるのがベストです。
上下「順付け」では、重要な「見下ろし方向」に死角ができてしまいます
いっぽうの「逆さ付け」では、視界が真下まで広がるのがわかるでしょうか
部屋の左右中心に設置することで、壁付けでは最大の視界が確保できます
逆さ付けした場合、〈アプリ〉ホーム→ATOM Cam Swing→設定→その他→画像を180°回転 に設定することで、画像を上下逆にすれば、まったく問題なく、視野の広い撮影が可能になるのです。
【補足情報】
ウルトラCの技として、部屋の中心あたりの天井に「逆さ付け」すると、部屋全体を見渡せる、さらに広い視界を得ることができます(ただし、映像は俯瞰になる)。
設置作業で頭に入れておくべき注意点をまとめてみましたので、参考にしてください。
・横回転正面(パン軸センター)を考えて設置すること
・カメラ固定のねじ止めは、確実にしっかりと!
※モーター駆動の振動により、ねじはゆるみやすいと考えるべし
・ケーブルも両面テープ等でしっかり固定すること
ケーブル口の逆側が横回転の正面
※「置きの正対[↑]」および「上下逆さ付け[↓]」使用のみ対応(90°横設置[←→]するとまともに動かない)
壁固定のほかに、カメラを「上下順向き」で「棚に置く(たとえば)」という設置方法もあります。ただ、逆さ付けよりも視界がかなり狭まります。「順向き置き」で使用する場合は、できるだけ視界を広げるため、高いところに置かず、高さ1m程度の場所に設置しましょう。
なお、底面にはマグネットは装備されていません。振動で動いてしまうことを想定して、できるだけ安定する場所を選んでください。じゅうたん用の両面テープなどで固定することをオススメします。
私が実家の親のために見守りカメラを設置して4か月。そこで運用するうちに気付いたことを、以下に書いていきます。みなさまのお役に立ちますように……。
壁に逆さ付けしたATOM Cam Swing(イメージ)
・【重要!】仮にトラブルがあっても、絶対「リセットボタン」を押してはダメ!
※Wi-Fi情報が消去され、再設定するまで通信ができなくなるため。
・まれに、自動録画のイベント動画が記録されないようになることがある(サーバー側の問題か?)
→ただ、1日ほど経つと勝手に復旧していることもあるので、あわてずしばらく待つ(ライブ映像は見られるはず)
・万が一に備えて、親のスマホやタブレットに、ホストアドレスを登録した「ATOMスマートライフ」を入れておくとよい
→【4】【非公式】セットアップ・マニュアル を参照しながら、親に電話で指示を出し、再設定をしてもらうしかない(このことを想定して、ランプの点滅など、詳しく記しています)
・電源はOFFにしても設定情報は消えない。ONにすると25秒で立ち上がる(トラブルの際は試す価値あり)
・カメラレンズの向きが変になったら、
→〈アプリ〉ホーム→ATOM Cam Swing→設定→一般設定→カメラのレンズをリセット
・光の動きなどで「モーション検知」することがよくある
・「モーション検知」時のスマホ通知は、頻繁にくるのでしないほうがいい
・ゲストがATOM Camを共有するには?
1. 共有先(ゲスト)のスマホにアプリをインストール。ATOMアカウントを登録(ゲストのメールアドレス必要)
2. ホスト側スマホから〈アプリ〉アカウント→デバイスを共有→他者への共有(+) → ゲストメールアドレス入力
3. ゲスト側スマホ〈アプリ〉アカウント→デバイスを共有→他者からの共有 → 「承認」
・中国製品なので、有事の際にはカメラをハックされる可能性があるかもしれない(真偽のほどは不明。念のためのお伝えしました)
親の見守り目的として設置したATOM Cam Swingが、偶然にも実家での窃盗現場をとらえていることが判明!
衝撃の映像をご覧ください(笑)
ATOM Cam Swingは、撮影した映像を遠隔で見るためのネットワークカメラです。しかし、逆側(設置側)から見れば、ずっとコチラを見続けてくれるAIロボットと言うこともできます(自動追跡ON時)。
その動きを見ていると、愛おしくなること間違いなし! ひとりで暮らす親に癒しをあたえる効果がある……かもしれませんね!
見守りカメラ導入前は、ちょっとしたことで親に電話がつながらなかったりすると、次につながるまで不安な時を過ごしていました。ATOM Cam Swing設置後は、たとえリアルタイム映像に姿がなくとも、自動録画履歴を見ることで直近の親の様子を知ることができ、不安な時間を過ごすことは、ほぼなくなりました。この自動録画履歴のチェックが、日々の見守り活動になることだと思います。
5,000円ぽっちの予算で(壁設置用マウント買っても合計7,000円ほど)、遠くの親を見守れるなんて、ある意味、いい時代になったということでしょうか。
実家に「常時接続インターネット(Wi-Fi)」がありさえすれば、ATOM Cam Swingを導入することはカンタンです。仮に親がスマホ(タブレット)を所持しなくても、あなたのスマホをホストにして設定すればいいだけです。ただし、その場合、親に「RESETボタンを絶対押しちゃダメ!」 との注意事項を必ず伝えるようにしてください。
本記事を読んでいただいた全国の「独居親見守り隊」のみなさま! すぐにでも「ATOM Cam Swing」を買っちゃいましょう。そして、まずはあなたの自宅のWi-Fiで設定して試してみましょう(購入後、再びこの記事が必ず役に立つはずです)。
そして、実家に設置するまでは、あなたの自宅の防犯カメラとして働いてもらえば、次に実家に行くまでのロスタイムさえもなくすことができます。もはや、買うしかないでしょう!
※ちなみに、私はATOMの会社の人とは何の関係もありませんし、記事化を頼まれたわけでもありません。念のため……。
有限会社パンプロダクト代表
中居中也(なかい・なかや)のショップとブログ
「使える機材のセレクトショップ」
「使える機材Blog!」