ポリアモリーの輪に含まれる四人の人物。
彼らはそれぞれ、未知の関係性に手探りで挑む者、許容の先に新たな連帯を持とうとする者、拒否する者、と抱える状況が異なり、様々な愛情のアプローチとして重層的に展開されます。
また、彼らを取り巻く人々には、奪われる事とその憎しみや、理解を抱く者の姿もあります。
我々の多くは、恋愛の当事者と傍観者の両側面を持ち合わせる機会があると思います。
この作品は、当事者である場合は、関係を保つために相手を尊重する距離感を、傍観者である場合は、余所事には批判も指摘もアドバイスも基本的にはいらないものだ、と教えてくれます。
愛情の形を考えさせられるお話です。ご一読ください。
当作品の大切な要素であるポリアモリー。関係者全員の同意のもとに複数のパートナーと恋愛関係を持つことに対して、あなたはどう思うだろうか? 複雑?混乱?ひょっとすると不道徳?
しかし考えて欲しい、他人ではない特別な人同士であるためには何が必要だろう? 独占や束縛、あるいは曖昧模糊に過ぎる社会的規範や法律などではないことは明らかだ。きっとそこに必要なものは「信じること」と「尊重すること」の二つだけで、それらがお互いに必要十分条件として機能していればそれで成立するのではないだろうか。
そう考えた時に、本作品の作者が提示するポリアモリーという生き方は、三人の恋人の間で多少の解釈の違い・領域のずれはあっても、極めてシンプルであることに気付く。私たちがいわゆる「普通」の恋愛と考えているもの、それはかえってシンプルさを損なっていないだろうか?
大切な人との絆について深く考察させてくれるこの作品。ぜひお読みいただいて、かけがえのないものを失わないための道標にしてほしい。
それぞれが存在を認識している複数名の相手と交際関係を持つ…「不埒だ」と思う人もいるかもしれませんが、それも一つの恋愛関係であり、本人たちが了承しているのであれば、何も問題はない。はずなのに…やっぱり上手くいかないこともあって…
自分の人間関係に対する価値観を改めて考えさせられた作品です。「どれだけ考えても人と人との関係には明確な答えなどないし、正解を求める必要もない」、そんな気持ちにさせてもらえました。「誰々とはこういう関係であるべきだ」と考えがちな私にとって、頭を柔らかくしてもらえる良い薬のようなお話だったと思います。
とはいえ、人間関係は良い側面ばかりではなく残酷なのも事実で…その部分も忘れずに作中で描かれています。
複数の登場人物の内面が深掘りされていく本作、どの人物に寄って読むかで全く別の感想であふれそうです。
自分は、ポリアモリーという言葉を、「茶房カフカ」を通して初めて知りました。
ググってみると「複数のパートナーと合意の上で恋愛関係を築くスタイル」という説明がありました。
この作品では、ヤマシロさんを中心に、コンパル、ヨシアキ、トキワがそれぞれヤマシロさんと恋人関係を結んでいるという形で、このテーマが描かれています。
物語は、コンパル、ヨシアキ、トキワ、それぞれの視点で展開されていきます。
ヤマシロさん自身がその内面を語ることはないため、恋人たちの語りを通して、彼がどんな人となりかを読者は知ります。
自分が連想したのは、木彫り?です。
三人がそれぞれのみを手に取り、木を彫り、形を整え、ヤマシロさんという像を伝えてくる感じです。
「茶房カフカ」を読んでいると、「なるほど……」とか「そっか、そう感じるのかぁ」とボソボソ独り言を言いながら読んでいることに気が付きます。
価値観の幅を、最高にグイグイと広げてくれました!
全編を通して作者さまのチェコ愛に溢れています。
物語に出てくるチェコの音楽。幾度となく、YouTubeで同名の音楽を検索し、登場人物らと思いを共有しようとしたのはいい思い出です。
素晴らしいお話をありがとうございましたーーー!!(*´ω`*)