まず、良い意味で個性的な異世界ファンタジーだと感じました。
最初に、読みやすくしっかりした文章なので、読むことにストレスを一切感じません。
そして、この物語で主軸に置いているのは、旅や冒険だと思います。
異世界の舞台となる地域の気候や、文化、食等を先ほど伝えた文章で描き、スラスラ頭の中に入ってくるので、異国を旅しているような感覚を覚えました。
まるで口の中に砂が入っていると錯覚するような没入感があります。
戦闘はありますが、どちらかと言うと物語の装飾的な意味合いで、やはり旅、冒険重視です。
女主人公二人のキャラもたっていて、会話や行動も面白い。
どうも、過去作の続編のようですが、この作品からでも読めました。
ただ、やはり前作から読むのが良さそうです。
異世界を冒険、旅をしたい人にオススメです!
最新話まで拝読してのレビューです。
本作の魅力は多くの方がレビューしているのでそちらに譲るとして、まず注目はあらすじです。
一部抜粋簡易にまとめます。
・主人公の二人は最強黒魔道士クラス
・手強い敵は滅多に出ず、魔物少なく、魔王なんていない
・立ちはだかるのは謎めいた街や村、奇人変人!
さらに、「選ばれし読者様に向けて」と来て、
・母と娘で安心して読める健全ファンタジー
・下ネタないよ(いや、嘘なんですがは、作者談)
・人が死ぬのはゼロベース
・バトルっぽいシーン少なめ
・実生活で全く役に勃たない雑学、小ネタ多め
おい!と突っ込みを入れてから、さて、本作の魅力はどこにあるのでしょうか?
ジャンルこそ異世界ファンタジーですが、昨今流行りの要素をこれでもかとそぎ落とした、最強女の子バディによるロードムービーなのです。
本作は『眠れない黒魔道士のための夜想曲』関連作ですが、全く読んでいなくても問題ありません。ここから入って、前作に戻る、も十分ありです。
二人が旅する古い巡礼路、そこはサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼を想起させ、それだけでも魅力があります。まあひたすら歩く、なんてことは絶対にない二人なのですが。
また黒魔道士というだけあり、某ゲームのあれを想像させるのも面白いところです。
あらすじ通り、読み手を選んでしまうかもしれませんが、独特の文体や癖強いキャラなどで困惑するかもしれませんが、それらを差っ引いても読んで損なしの物語です。
当レビューを読んで少しでも気になったあなた、ぜひ最初のエピソードを読んでみてください。きっとはまりますよ!
主人公は二人の魔法使いの少女。一人はイケイケの突撃型で、一人はアンニュイな雰囲気漂うマイペース型。二人に共通するのは気ままに旅をするということ。
魔法が存在するので舞台はファンタジーな異国ではあるのだけど、読み進めるごとにどこか懐かしさを感じさせられます。
これは個人的な見解なのですが、この世界は近代化しなかった日本のメタファーなのではないかと思い至りました。日本は経済大国となり、裕福な国に位置付けられてはいるけれど、職場や学校にはたくさんの制約があり、経済活動という名の元に多くの人が息苦しい思いで暮らしています。もし日本に明治維新が来なくて、近代化しなかったなら…この物語を読みながら、ふとそんなことを考えました。
もちろんそんな小難しいことを考える必要などなく、主人公の少女たちと一緒に思いっ切り楽しめばいいのです。少女たちは本当に楽しそうで、読んでいると自然に頬がほころんできます。作者の蝶番祭氏の語り口がまた唯一無二で、数々の個性的なキャラクターとともに懐かしくも独創的な世界観を演出してくれます。
あなたも日々のしがらみのことは一時忘れて、この世界で自由気ままに冒険してみませんか?