まるでオモチャ箱をひっくり返したような、実に楽しい作品集です。
「殺し屋」というテーマを自由自在に扱い、多様なジャンル、多彩なシチュエーションで読者をひたすら夢中にさせてくれます。
心霊スポット巡りをする学生たち、ヒッチコック風のスリラー、西部劇ときて、更にほろ苦い青春小説。
それらの多様な物語が次々と登場し、切ない話やゾッとするオチ。またはニヤっと笑ってしまうような展開などを迎えます。
次はどんな話が来るかと、気づけばぐいぐいと読み進めさせられ、練り込まれたプロットと意表を突いたオチに必ず満足させられることでしょう。
ホラーコメディというジャンルを嗜む方の間で、「恐怖」と「笑い」は正反対に見えて、実は物凄く相性が良いということは周知の事実でしょう。
こちらの作品では、ホラーやサスペンスでは恐怖の対象になる殺し屋と、ホラーには欠かせない怪異が登場することで、恐怖と笑いを生み出しています。
命を狙う側の殺し屋が怪異に遭遇したとき、殺し屋は狩られる側になるのか、それとも怪異を狩る側に周るのか。毎回いろんなタイプの殺し屋と怪異が登場するので面白いです!
さらに、面白いのはそこだけでなくて、こちらの作品は振れ幅が魅力的です。
コメディだと思いきや、コメディ抜きの不気味と恐怖が詰め込まれた展開になったり、アクション映画さながらの戦闘が繰り広げられたり、殺し屋という職業を登場させることで、死に向き合った深いテーマが描かれたりと、なかなか予想できない展開が待っています。
ホラーコメディ好きな方にも、そうでない方にもおすすめです!
『恐怖』と『笑い』この二つの情緒には
実は共通の 何か があると思うのだ。
この作品は、それを行動科学的に、
或いは大脳生理学的に証明してくれる。
そんな気がする。
作者は『笑い』を描けば容赦なく笑いの
渦へと引き摺り込むが『恐怖』を描けば
恐ろしさの底なしの闇へと、これ又
引き摺り込んでしまうのだ。
その《振れ幅》が、半端ない。
この作品は、まさにその振れ幅を思い切り
振り切って展開して行く。
まるで、怖いお化け屋敷を体感する様に。
エピソードの終に身を隠しながら、次、
行っていいのかな?と辺りを見回す。
『笑い』が出ても『恐怖』が出ても、
それは多分同じ。同じ感情で読んでいる。
この快感を是非にも味わって欲しい。
因みに、この作品の中では可憐な女性の
《殺し屋》が出てくるが、個人的には
彼女が イチオシ である。
是非、探してみて。