この物語は、主人公一真さんと1人の女の子優さんの出会いから始まります。
とある理由から命尽きる場所を探し、真冬のベンチで過ごす一真さんですが何故か彼を名前で呼ばす留さんやら何やらあだ名を付け、彼の元へと通います。
振り回すような彼女に呆れていた一真さんも、彼女との明日の約束が自分を明日へと生かしてくれる大切なものだと気が付くのです。
しかし、彼の抱える過去や優さんの秘密、そして周囲の人との関係や思いの錯綜は臨場感ある重厚なドラマを紡いでいき…その面白さは格別!
この作品は違和感を感じるところも多いかもしれません。けれど、その違和感は作品における鍵になるもの!それが解き明かされた時…あなたも北の地へ行きたくなるかも!?
是非是非、ご一読あれ!
なんというか、まずはこういう恋愛小説、すごく珍しいと思います。
かわいらしく、ユニークで、クリエイティブで、クレバーな二人。
そして、ラテン系です。
男と、女の物語。
よく言う男女の、恋人関係を表現するような、夫婦、相棒とか、友人、パートナーとは違う。
年齢が若い時も落ちついてからも、状況がどのように変わっても、二人の、男女の物語。
影の部分も込み込みのラテン系の二人。
どこまでもお互い求め合って、駆け引きをして、探り合って、ぶつかり合って、削り出して形にしていく。
私を愛せと悲鳴を上げて求め合うような。
覚悟がないと出来ないですよね。
よくある恋愛の物語の、秘密や成長譚とは違う、一回も二回も相手の為に死んで生まれ変わるような物語。
北の大地の、熱い、命の塊のような物語。
でも、やっぱり、純愛の物語。
これはスゴイ!!
私には想像する事も、書く事も出来ない世界でした。
それを連続ドラマのように拝見させて頂き、とても感激です。
ありがとうございました。
気を抜けば遭難してしまいそう厳冬の北海道。性に縋り生に絶望した男と、純朴に生を尊ぶように見える少女。
その二人の出会いから始まる物語。
二人の交流は偶然なのか、意思による継続なのか。
とにかく一筋縄でいかないのが、本作主人公の闇のピアニストと、正体定かならぬ不思議な少女です。
片方が求めれば、片方は離れて行こうとする。
生のステージから逃げようとすれば、必死に袖をとって引き戻す。
そんな二人のシーソーゲームは、隠蔽されたプロフィールにより読者の予想の斜め上を飛び交うことに。
愛情は優しさがないとダメ。愛情は力強さがないとダメ。
徐々に明かされて行く二人の過去と共に、登場人物の関係性は複雑に変化して見えてゆきます。
そして最後に近づけば、きっと読者は仮面の剝れた生の彼女を見出せるはずです。
愛すべきは、誰か。死すべきは何か。
最後まで目を通していただければ、その物語の重層性が感じられると思います。
サクラのほっぺの、三つ編みおさげ。かわいいあの子。
雪ふる北海道を舞台に、とあるスキャンダルで自殺しようとやってきたピアニスト(財閥息子、超金持ち)と、恋愛をくりひろげる。
と、書いたら、なんだか普通?
い───え!
この物語はまったく普通ではないのです。
このピアニスト、最低なんだよ! 女クセが悪いんだよ! ケダモノだよ!
三つ編みおさげちゃんは……。
もっと個性が強いよ! 下ネタだって言うし、口が悪いし、人の神経を逆撫でして怒らせるのだって得意。素直にあやまらない事のほうが多い。
でもね……、二人とも、「闇」と「光」をかかえていて、慈しみと、離れていても互いを慕いあうような強い絆、深い深い愛情をお互いにむけるようになるんだよ。
それは、相手を立ち直らせるまで、叱咤するような愛。
あと、ハラハラするような言葉のシーソーゲームも、この物語の見どころのひとつです。
物語は、なかなか先の見通しができない、波乱万丈です。お互い愛し合う───ように見えても、この三つ編みちゃんは、なかなか、ぜんぜん、ピアニストになびきません。
言葉あそびでスルリと逃げちゃう。
ラストまで読むと、「ああ……。」と、全部に納得です。
ぜひ最後まで読んでほしいです。ここにしかない、すごい物語です。
希死念慮に取り憑かれた青年と破天荒な少女との出会いから始まる壮大なロマンスです。
何やら面倒な性格を持つ青年、うざ絡みする不思議ちゃん系の少女……コミカルな序盤の展開からは予想も付かないストーリーが紡ぎ出され、一気に引き込まれます。
青年が抱えるトラウマ、少女の人生を劇的に変えた過去の出来事……北の国を主な舞台にして繰り広げられるヒューマンドラマは、中盤で読者を驚愕させる仕掛けが施されていました。取り分け、少女の「仮面」に纏わる逸話は切なく狂おしく、衝撃的です。
本作の特徴は、登場人物に対する激しい感情移入です。男女ともに癖が強く、粗雑な側面を持ち合わせ、ひとつ間違えば読み手に悪い印象を与えかねません。
ところが、彼と彼女が不規則な行動をする度に、愛おしくなってしまうのです。これは、作者の巧みな描写、力量によるものでしょう。
凍て付く湖、赤いカサ、小劇団……主人公たちを取り巻く愉快で厄介な面々や、繰り返し登場するイメージやアイテムの使い方が素晴らしく、中弛みとは無縁の秀逸なエピソードの連続です。
物語の時間軸はやや長く、季節は何度も移り変わります。しかし本作は、訳あり男女の成長やトラウマ克服を主眼に置く凡庸な作品ではありません。エピローグ前に描かれる二人は、当初の人物像と大きく異なることなく、ピュアな印象を受けます。これは、描き方に於いて、ぶれが全くなかったことの証左でしょう。
そして、残りの話数が減るにつれ、エンディングが迫るに従い、二人の物語とお別れするのが辛くなったことを正直に告白したいと思います。
敢えて理由を記す必要もありません。それは傑作長編の最大にして唯一の条件です。
物語は、冬の美しい北海道から始まる。
男性主人公は、過去の出来事から陰りと憂いを含んだ悲しき青年。
女性主人公は、陽春のように優しく、残暑のように厳しく、青年の心を包み込む女子学生。
周囲には個性的な面々が登場して、物語に彩りを与えてくれる。
男女は、紆余曲折の果てに何を見つけて、どこを目指して歩いていくのか必見。
登場人物たちの会話で、一笑してしまうことが多く、会話文表現の高さが随所に表れていますし、哀愁を漂わせる会話内容であっても、笑わせてくれる箇所もありますので、落ち着いて読み進められます。
背景も細かく描写されていますので、その場に自身も存在しているかのように思えて、物語に強く引き込まれます。
――愛されたかった者は誰だろうか。
――変わりたかった者は誰だろうか。
一度、本作品の世界に入り込んでみては、いかかでしょうか。