この世界に王はいない。正確には、とある時期にいなくなってしまった。
国なき世界で王や兵士に代わりに跋扈するのは凶暴な魔物達であり、人々は彼らに怯えたり、あるいは討伐して生計を立てながら暮らしている。
主人公の義希は、そんな世界で父を探して旅をしている青年です。腕っぷしは弱く、軟弱者の女好きの彼だが、心根の優しさと正義感は人一倍以上。
そんな彼は、とある町で起こった出来事をきっかけに、消失した国を巡る陰謀に巻き込まれていく。その過程で出会う仲間たちにも複雑な事情があり、各々の思惑と感情が絡み合って物語を彩っていきます。
心配症で酒好き、巻き込まれ気質の有理子。
知識人で頭の回転が早く、毒舌家の沢也。
底抜けに明るく、義希ともどもムードメーカー的役割を果たす沙梨菜。
腹黒いところもあるが、いつも笑顔を絶やさず穏やかな蒼。
無口だが超絶強い倫祐。
気弱で控えめながら、魔法の腕と料理は一級の海羽。
義希同様に女好きだが、彼とは正反対に強気で俺様気質な小太郎。
妖艶で油断のならない美女、くれあ。
メインである彼ら以外にも、沢山のキャラクターが義希を時には支え、あるいは離れ、再び出会い、物語は進んでいきます。
その中には悲しい出来事も、日常のほっとする一コマも、そしてもちろん胸が熱くなる戦闘もあります。
群像劇、とタグにあるように主人公以外のキャラクターにもそれぞれスポットが当たり、彼らの葛藤や強さ、弱さの理由を深く知れるのもこの話の魅力の一つ。
何より、妖精を巡る哀しくも愛しい運命が一本の軸となって話を引っ張っていき、最後に花開いていく様は壮大で読み応えたっぷりです。
そして訪れる最後の戦い。
義希が下した決断とその結果を知った時、私達はアネモネの花言葉を噛み締めるでしょう。
主人公の義希は、ビビリでおバカで、腕っ節も頼りなく、女の子が大好きな軟弱者の愛され系ナンパマシン。
行方不明の父親を探すために旅へ出た彼は、最初に辿り着いた街で有理子・沢也の二人に出会い、そこから大きな事件に巻き込まれていきます。
旅を進めて行くにつれて増えていくのは、一癖も二癖もある仲間たちと、彼らを取り巻く「謎」の数々。その謎を解き明かしていくうちに、この物語の全貌が少しずつ明らかになっていき、それと同時に、登場人物たちの覚悟や想い、絆が強くなっていく、とても壮大な冒険譚です。
剣に魔法、妖精にドラゴンという王道ファンタジー要素満載でありながら、登場人物は漢字表記の和名だったり、現代風の道具や機械、ファッションがごく自然に出てきたりと、「王道ファンタジーの定義など取っ払ってしまえ!」と言わんばかりの世界感が斬新です。そこに不思議と違和感は無く、それどころかファンタジーらしからぬ現代日本風の設定の数々のおかげで、「横文字のキャラ名が覚えられない」といったファンタジーあるある障壁をすんなり突破して物語の中に没入できます。
ストーリーはゆるめの日常コメディパートとシリアスなパートがバランスよく散りばめられており、前者では大学サークルのような賑やかで楽しい雰囲気を、後者では手に汗握るアクションや、胸にズシンと響く重厚なエピソードを存分に堪能できる、実に贅沢な構成です。
シリーズ最大の持ち味は、イキイキとして個性的な登場人物たち。最終的にメインとなる九人の仲間たちはもちろん、旅の途中で彼らに協力してくれる人々も、敵対する人たちも、人ならざる者たちも、善悪を問わずそれぞれに信念があり、大変に魅力的です。メインキャラクターたちが織りなす人間模様も面白く、特にじれったい恋愛模様は、少女漫画顔負けの胸キュン展開を見せてくれます。
彼らと対峙する「組織」の目的は? 妖精はなぜ絶滅してしまったのか? 九人それぞれの過去と思惑は? そして、「アネモネ」の謎を解く鍵は?
八十万字に迫る超大作。ぜひじっくりと読み込んで、あなたのお気に入りのキャラクターとともに、それらの謎の答えを見つけ出してください。