啓霊《けいれい》あるいは伴侶亜人類《プロクシーズ》、そう呼ばれる強力な戦闘力を持つ生物が存在する世界。
彼らは『信用』で動く。そのために、信用を紙幣など様々な形で、保管したり運用したりする技術が発展している。
これだけで、凄まじいギミックだと言わざるを得ないのですが、それ以外もまた素晴らしいです。
なにが正義で、なにが悪なのか。だれが加害者で、だれが被害者なのか。
なにもかも白黒つけられない中で、人々がすれ違い、断絶する。
陰謀と策略がうごめく大陸で、なんとか自らの本懐を遂げようとする人々の姿が巧みな筆致で描かれています。
是非とも読んでいただきたい作品です。
相容れない者を、思想を、文化を、人はどの様に認めるのか。
或いは決して認めない為の理論を、どの様に構築するのか。
人は人である以上、何かに縋り、依って生きるしか無く、更に己が寄る辺の存続を脅かす存在は『悪』と断ずる程に傲慢、もし仮に、この世界に、神にも近しい存在がいたなら、人間に対してどんな想いを抱き、どの様に振舞うのか、そして人間はその神に対し、どんな想いを抱き、どう振舞うのか。
このお話は、そんな『もしも』を綴ったファンタジー……だと思う次第です。
ファンタジー軍記物と呼ぶべきジャンルでしょうか、骨太な軍人らしい考えに基づき行動する主人公・エリザと、大いなる力の秘密を握るもう一人の主人公・ソフィの、互いに理解し合いながらも、近づく事のままならない複雑な関係が、非常に愛おしく、もどかしく、興味深いものとなっております。
軍記物らしく、戦闘描写も非常に秀逸で、人間の力を遥かに上回る亜人類『啓霊』『理甲』を戦闘に用いる様は、戦車や兵器を駆使し、敵陣営を蹂躙する古の大戦を想起させ、戦災に巻き込まれた人々、兵士たちの悲惨もリアルに伝わってきます。
想いや感情、歴史、思想、そういった要素が複雑に絡み合い、物語を形作っており、この厳しい世界にどの様な結末が齎されるのか、非常に楽しみです。
読んで損の無い、逸品です。
伴侶亜人類。
読みはプロクシーズ。
片方は信仰を以て、もう片方は信用を担保に、人に似た身のプロクシーズを戦いに駆り出す。
そういう世界の物語。
ファンタジーのような、SFのような独特の手触りを感じました。
主に女性軍人の一人称で語られますが、出てくる人の一人一人に人間味とユーモアがあって、とても良いです。
人がいる。人がちゃんといる。
大好きなんですそういうの。
プロクシーズが何者か、何を意味する名前なのか、二人の女性の今後は、などなど、語られる日を心待ちにしつつ追いかけて見て下さい。
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2章「アリゴレツカの神灯(2)」まで読了。
私の評価ポリシーにつき、未完の作品は星二つが最高評価。