一本の街灯のみが標になる風景、恐らくはさほど雪の降らない、田舎の何処か。我々に与えられた物語のピースは、せいぜいがそのくらいである。映画やアニメのように都合よく星は瞬かず、ここぞとばかりに雪は降らず、ロマンティックの欠片も無い光景は、だから日常だ。蛍光灯から離れた所に立つ、顔も分からない「あいつ」に、読み手は読み手の「あいつ」を重ねて、あの日あの場所であった出来事に想いを馳せる。余分な情報を削ぎ落としたがゆえに浮かび上がる鮮明なイメージは、短篇ならではの妙味ではなかろうか。なお。こんな事を書いている本人は、待ち合わせに小半刻は遅れる常習犯である。前回のコミティアでは(サークル主なのに)五時間も遅刻した。当然ながら「僕」側の人間に酷く怒られた。完。