【市況】【植木靖男の相場展望】 ─日米株価の下げの違いは何を意味する?
株式評論家 植木靖男
「日米株価の下げの違いは何を意味する?」
●米国がくしゃみなら日本は風邪のはずが……
東京市場は、長いもみ合いを経て不透明感が強まり、ここへきて下方リスクを高めている。日経平均株価は12月12日に4万円台をザラバでつけたが、そこまでが精一杯で、翌日から19日の3万8355円まで下落。下値抵抗線とみられている75日線で何とか踏みとどまった格好だが、週末20日も下げて6営業日続落と軟調な地合いを抜け出せない。
この背景には、NYダウが18日に50年ぶりの10日連続安を演じたことに加え、1100ドル強の下落に見舞われたことがある。このNYダウの大幅下落は予想だにしない下げだった。悪材料が顕在化して大きく下げるのは分かるが、そうでないときはかえって恐怖心を煽りやすい。この下げが大天井につながるかどうかは定かではないが、その行方には十分注意を払う必要がありそうだ。
問題は日本株だ。昔から“米国がくしゃみをすれば日本は風邪を引く”と言われている。ならば、NYダウの1100ドル強の下げは、直ちに日本株に響くはず。だが、19日の日経平均株価は268円の下落にとどまった。これは驚くべき現象だ。日本の多くの投資家は少なくともNYダウの大幅安に匹敵するほどの下げを覚悟したに違いない。この日米市場の下げの違いは何を意味するのか一考を要する。
あえて言えば、来年の日米株を予言するものではないのか。要は、米国株が12月まで大きく上昇しているのに対し、日経平均株価は1989年の高値は抜いたものの、東京市場は米国市場のような活況を呈していない。とすれば、来る2025年はこの立場が逆転して、米国株が後退し、日本株が浮上するとみてよいかもしれないのだ。
さて、当面の東京市場はどう展開するとみればよいのか。少なくとも年末最後の師走相場であり、経験則的には餅つき相場とみている。すなわち、ぺったん、ぺったんと動きがあるようであり、その実、あまり儲からない相場となる。売り手は節税対策で結構思い切って売ってくるし、買い手は餅代稼ぎのプロ投資家が超短期で売買を繰り返す、いわゆる日計り商いとなりやすい。
●年末相場での仕掛けは二通り
2024年を振り返ると、かつて平成バブルの時、ブラックマンデーの後に半年で高値を更新したことを想起する。今回も8月5日の大幅安から半年ほどで高値を更新すると筆者はみている。
新年1月といえば折しも米国ではトランプ氏が新大統領に就任する。その頃にはトランプ氏の政策の骨格も明らかになるし、それが世界の経済に十分浸透することになろう。株価的には“知ったらお終い”であり、新しい相場が動き出すはずだ。そう考え、長い年末年始の休みは十分な思考期間に充てたい。
とは言っても、株式市場が開いている間は、どうしても売買をしたいとの思いを持つ投資家は多い。
では、年内相場で動き出そうな銘柄を考えてみたい。師走相場では経験則的には儲けにくいと記したが、超短期相場のなかでどのような銘柄に着目すればよいのか。これまでの経験では二通りある。
一つは、今年大きく値上がりして、新年は上げ余地が乏しいとみられる銘柄でも、大きく動いた記憶があるだけに超短期ならばと動く銘柄だ。典型は防衛関連や海運株などであり、また値がさのハイテク株なども目先的にはサヤが取れるとみて物色されやすい。
もう一つは、比較的新しい材料株を見つける手法だ。たとえば、ラピダス新千歳工場のクリーンルーム関連として高砂熱学工業 <1969> [東証P]とか、上下水道のポンプとして将来性大の酉島製作所 <6363> [東証P]、ハイテク株に高値警戒感が生じるといつも顔を出す不動産株から住友不動産 <8830> [東証P]、つれて建設株から鹿島建設 <1812> [東証P]などが芽生えてこよう。
さらに年末年始の人気株である百貨店では、三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]も大きく下げただけに注目されよう。やや小型ながら好業績のミマキエンジニアリング <6638> [東証P]も目先的には面白かろう。
2024年12月20日 記(次回配信は2025年1月1日11時の新春特集を予定)
株探ニュース