ルネサス、初の最終黒字 減資で来期以降の配当準備へ

[東京 12日 ロイター] - ルネサスエレクトロニクス<6723.T>は12日、2015年3月期に823億円の当期純損益の黒字(前年同期は52億円の赤字)を計上したと発表した。最終黒字は、10年4月の同社発足から初めて。前身の旧NECエレクトロニクスの05年3月期以来10年ぶり。6月24日の株主総会では、減資を決議することで累積損失を一掃し、来期以降の配当準備に入る。
<「生き残り」にめど>
作田久男会長兼最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、初の最終黒字化について「生き残りに向けて7―8割くらいは手中に入った」と評価。2016年3月期までの「変革プラン」によって、今期1年も工場再編など構造改革を残しているが、作田会長は「これからグローバルに勝ち残る第2ステップに入っていかなければならない」との認識を示した。
6月の株主総会では、作田会長が退任し、元日本オラクル社長の遠藤隆雄氏が会長兼CEOに就任する。13年6月の就任から再建請負人として熾烈なリストラを断行した作田会長にとって、最終黒字化を区切りとして丸2年での退任となる。
作田会長は自身が退任する理由について「成長に向けてのギアチェンジは新しいリーダーがベスト」と指摘。その上で、遠藤氏について「ルネサスは(半導体の)シリコンをベースにした事業から、ソフトウェアやシステムに移行する必要がある」と述べ、新たなトップへ成長戦略の立案に期待を示した。
<100億円への減資で「新たなスタート」>
ルネサスは同日、2283億円の資本金を100億円に減資すると発表。1638億円の資本準備金もゼロに減らし、2015年3月末で5517億円にのぼる単体の繰り越し損失を一掃する。会社発足から無配が続いているが、累損解消で配当に向けて準備する。減資は6月24日の株主総会で決議し、9月30日付で実施する。
記者会見した柴田英利最高財務責任者(CFO)は、減資する狙いについて「ようやく当期利益を計上した。このタイミングで新たなスタートを切る」と述べた。同社は、金融機関との借り入れ契約で16年9月11日まで配当を禁じられているが、累損解消で剰余金を積み上げる環境を整えることで「(配当に向けて)準備する」と述べた。
同社は通期の業績予想を開示していないが、柴田CFOは16年3月期の連結当期純損益について「赤字は想定していない」と述べ、2期連続の最終黒字を目指す方針を示した。
<4―6月期も最終黒字計画>
15年4―6月期の業績予想は、売上高が前年比14%減の1800億円、営業利益が同7.4%減の250億円、当期純損益が同5.7%減の200億円の黒字。液晶用半導体子会社のルネサスSPドライバ(RSP)の売却などで減収減益となるが、5四半期連続の最終黒字を計画する。
15年3月期の連結業績は、売上高が前年比5.0%減の7910億円、営業利益が同54.4増の1044億円だった。RSP売却で売上高は減少したが、円安進行のほか工場閉鎖や人員削減など構造改革の効果で大幅増益を確保。前期も、構造改革で早期退職費用など特別損失344億円を計上したが、200億円のRSPの売却益もあり、同社が発足してから初の最終黒字となった。

村井令二 編集:山川薫

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