「TikTok」で世界的に流行中の「スーパーマンチャレンジ」。子どもが骨折するなどの事故も起きたことをご存じだろうか。沖縄県浦添市の小学校などで注意喚起が出されたほか、事故の報道も相次いだ。背景にある問題と対策について解説したい。
スーパーマンチャレンジとは、映画「スーパーマン」をまねた遊びだ。助走を付けてスーパーマンのようにジャンプした人を数名で受け止め、飛び込んだ人を放り上げるというものだが、受け止められずに落下したり、放り上げられた反動で落下して、骨折などにつながっているのだ。TikTokを通じて世界的に流行した結果、イスラエルやフランス、ギリシャ、ルーマニアなど、さまざまな国で同様の事故が相次いだ。
その結果、執筆現在「スーパーマンチャレンジ」で検索しても関連動画は表示されず、「このフレーズはコミュニティガイドラインに違反する言動またはコンテンツと関連している可能性があります」などが表示されるようになっている。
TikTokでは、チャレンジ系の動画は人気テーマの一つ。チャレンジの流行は、バイトダンスが買収、統合した「Musical.ly」から続くもので、TikTokに引き継がれたのだ。その後、コロナ禍で在宅時間が増えたことで、TikTokチャレンジが世界的に流行したという経緯がある。
「#プランクチャレンジ」などの全く問題のないチャレンジが流行したこともあり、やってみたという方もいるかもしれない。「#tiktokchallenge」は1200万再生されており、「#チャレンジ動画」も1万8600再生されている人気ぶりだ。
一方、過去に流行したチャレンジの中には、死亡事故につながるような危険なチャレンジも多数混じっている。
たとえば「ブラックアウトチャレンジ(失神チャレンジ)」は、意識を失うまで自分の首を絞めるというもの。2021年にペンシルバニア州の10歳の少女が同チャレンジで死亡するなど、死亡事故が相次いだ。ブルームバーグによると、2022年時点で過去18カ月間に12歳以下の子どもが少なくとも15人以上亡くなったという。
有毒な化学物質を吸い込む「クロミングチャレンジ」や、抗ヒスタミン剤のベナドリルを大量に服用する「ベナドリルチャレンジ」などが流行したこともある。ベナドリルを過剰服用すると、深刻な心臓発作や昏睡を引き起こし、死に至ることもある。実際、2023年にオハイオ州の13歳の少年が死亡するなど、死亡事故も多発した。
「頭蓋骨粉砕チャレンジ」は、仕掛ける側の二人で挟み、真ん中の人がジャンプ、着地する時に足を払って転ばせるというものだ。無防備な状態で頭を打ってしまい、脳震盪や脊髄損傷などの被害が多発して問題となった。
「寄り目チャレンジ」も流行したが、眼科医によると、あまりに寄り目を繰り返ししたり、長時間したりすることで、元に戻りづらくなるリスクがあると言われる。
SNSで流行すると、たとえ危険な行為でも、「みんながやっているから、みんな大丈夫だから」と正常性バイアスが働いてしまいがちだ。判断力の低い未成年の間で流行することで、子どもの被害拡大につながってしまっているのだ。
過去には「YouTube」でも危険チャレンジが流行し、そのような動画が削除され、ガイドラインが変更されたことがある。洗剤入りジェルボールをかじる「タイドポッドチャレンジ」や、身体に可燃性の液体をかけ火を付ける「ファイアーチャレンジ」などが流行し、子どもや若者の事故や被害が相次いだことで問題視されたためだ。
YouTubeではそのような危険チャレンジはほぼ見かけなくなった一方で、若者に人気のTikTokでは相変わらず様々な危険チャレンジが流行し、事故が続いている。TikTokは利用規約で13歳以上対象となっているが、小学生など対象外の年齢でも利用している子どももいるので、くれぐれも注意してほしい。
スーパーマンチャレンジに関しては削除対象となったが、今後も危険なチャレンジが流行し、子どもが危険にさらされる可能性は高い。TikTokでそのような事故が相次いでいること、たとえ多くの人がやっていても危険な行為には手を出さないことなどを、子どもに伝えてほしい。特に低年齢の子どもの場合、どのような動画を見ているのか、危険な行為に興味を持っていないかなどの見守りも必要だろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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