2025年は「iPhone」にとって特別な年になるかもしれない。誕生から18年を迎えようとしている同スマートフォンにとって初となる重要な要素がいくつか登場する可能性もある。
AppleはiPhoneラインアップで初の「スリム」モデルを発売し、初めて独自の5Gモデムを搭載するかもしれない。「iPhone SE」に初めて「Face ID」が搭載される可能性もある。iPhone向けのAppleの人工知能(AI)である「Apple Intelligence」の計画についても、より詳しいことが明らかになる公算が大きい。現在提供されているApple Intelligenceの機能群は、ほんの始まりにすぎないように感じられるからだ。
2025年のiPhoneに関するAppleの計画は、今後を大きく左右しかねない。消費者が同じスマートフォンをより長く使い続けるようになった今、iPhoneユーザーに機種のアップグレードをしてもらうことが、かつてないほど難しくなっている。米CNETがYouGovと共同で実施した調査では、回答した米国の成人スマートフォン所有者の44%が、新しいスマートフォンを購入するタイミングは、今使っているスマートフォンが壊れたり、交換が必要になったりしたときのみであることが明らかになった。
しかし、「iPhone 17 Slim」や再設計されたiPhone SEといった、うわさされている新モデルが実際に登場すれば、Appleは潜在的な購入者の関心をもっと引けるようになるかもしれない。
ただし、それはAppleが計画をうまく遂行できた場合の話だ。Appleが大幅に薄型化されたiPhoneを実際に発売した場合、超薄型のデザインが原因で、価格が非常に高くなる可能性もある。また、これまでのところ、Apple Intelligenceに対する反応がイマイチであることを考えると、Appleは2025年に新しい機能で消費者を感心させなければならないというプレッシャーにさらされるだろう。
サムスンやGoogleなどの「Android」スマートフォンメーカーは半分に折りたためるディスプレイを搭載した機種を提供しているが、Appleは初代iPhoneで採用された従来のキャンディバー型のフォームファクターを今も採用し続けている。しかし、報道によると、同社はiPhoneのデザインを別の方法で刷新することを検討しているという。その方法が、本体の大幅な薄型化である。
The InformationとBloombergの報道やTF International SecuritiesのアナリストであるMing-Chi Kuo氏の予想によると、Appleは2025年、「iPhone 17 Plus」の代わりに、大幅に薄型化されたiPhoneを発売する可能性があるという。
このモデルは、洗練された外観が最大の売りとなるだろう。デザインを除けば、無印の「iPhone 17」モデルと同様のスペックを備える一方で、いくつかの妥協点もある製品になる可能性が高い。例えば、2つの背面カメラを備える「iPhone 16」や「iPhone 16 Plus」と違って、このモデルには1つの背面カメラしか搭載されない、とKuo氏は予想している。また、同氏によると、おそらく無印のiPhone 17と同じプロセッサーが採用されるという。
Appleは消費者に「Pro」モデル以外のiPhoneにも興味を持ってもらいたいと考えている。iPhone 17 Slimが好意的に受け入れられれば、まさにその目的を果たす製品になるかもしれない。つまり、しゃれたデザインに変えることにより、消費者は必要に迫られてではなく、自らの意思でアップグレードしたいと思うようになるかもしれない、ということだ。この2年間のAppleの戦略は、「Dynamic Island」や「アクションボタン」といったProモデルの機能を無印のiPhoneに少しずつ導入し、無印モデルが前モデルと比べて新鮮で新しく感じられるようにすることだった。
しかし、iPhone 17 Slimのうわさが本当なら、「iPhone X」以降で最初に「Plus」モデルがリリースされた2022年以来初めて、Appleは全く新しいスタイルのiPhoneモデルを追加することになる。ただし、Plusモデルは、うわさのiPhone 17 Slimほど斬新にも独創的にも感じられなかった。Appleは、単純にディスプレイのサイズを変更するのではなく、iPhoneのデザインを再考して、無印モデルよりも優れた携帯性と高級感を持たせることを検討しているように思える。この価値提案は、フリップ式の折りたたみスマートフォンとそれほど違わない。例えば、フリップ式の折りたたみスマートフォンの差別化要素は、型破りな外観とよりコンパクトなデザインだ。Appleがより洗練されたiPhoneを発売するとしたら、おそらくその両方の条件を満たすものになるはずだ。
とはいえ、The Informationによると、iPhone 17 Slimにはいくつかの妥協点があり、特に価格に関しては、「Pro Max」モデルよりも高くなる可能性があるという。Appleが実際に製品を発売するまで(本当に発売するかどうかも不明だが)、評価することはできないとはいえ、スマートフォンの極端な薄型化は、耐久性の懸念を引き起こす可能性もある。MacRumorsが引用したアナリストのJeff Pu氏の発言によると、iPhone 17 Slimの本体の厚みは6mmになると言われているという。これは、7.8mmのiPhone 16よりも大幅に薄い。
それ以外のことに目を向けると、iPhone 17のラインアップでは、Appleの新しいプロセッサーと高リフレッシュレートのディスプレイが4つのモデルすべてに搭載される可能性が高い(現行のモデルで高リフレッシュレートに対応しているのはProシリーズのみ)、とETNewsは報じている。さらに、アナリストのJeff Pu氏の主張を引用したMacRumorsの記事によると、すべての新型iPhoneモデルに、高解像度の2400万画素前面カメラが搭載されるという。
iPhone SEはより魅力的になりそうだ。MacRumorsとBloombergの報道やKuo氏によると、同社が2025年に発表する見通しの第4世代iPhone SEは、他のiPhoneと同じようにベゼルレスのディスプレイを採用するほか、Face ID、アクションボタン、4800万画素のカメラ、Apple Intelligenceを搭載すると言われている。2022年に発売され、「iPhone 8」のように見える筐体に「iPhone 13」と同じチップを搭載した現行モデルからすると、これは大幅な刷新である。
これらの変更だけでも、今使っているiPhoneの買い換えを検討しているが、高リフレッシュレートのディスプレイや追加のカメラなどのハイエンドスペックは不要だという人にとって、新しいiPhone SEは魅力的な選択肢になるかもしれない。Googleの「Pixel 8a」などのAndroidスマートフォンは、デザインやディスプレイサイズ、カメラ機能の点でiPhone SEを凌駕してきたが、次期モデルが登場すれば、そうした状況は変わるかもしれない。
iPhone SE(第4世代)がことさら特別なものになるかもしれない理由が、もう1つある。このモデルは、Apple初の独自セルラーモデムが最初に搭載される製品になる可能性があるのだ。Bloombergによると、Appleは、長年のパートナーでライバルでもあるQualcommへの依存度を減らすため、独自のモデム(スマートフォンがセルラーネットワークに接続できるようにするコンポーネント)の開発に取り組んでいるという。2025年の春にリリース予定とされているiPhone SE(第4世代)は、このモデムを搭載する最初のApple製品になり、その後、よりハイエンドのデバイスも追随する見通しだ、と同報道に記されている。
Bloombergによると、Apple初のモデムはQualcommのものよりも性能が劣ると言われており、例えば、ミリ波の5Gはサポートしないという。だが、この取り組みによって、Appleは製品開発サイクルをより細かく管理できるようになり、最終的には新しい機能やパフォーマンスの向上につながるかもしれない。「Mac」では、Apple独自の「M」シリーズチップによって、すでにそれが実現している。
Apple Intelligenceは、同社にとって初めての消費者向けAIに関する大規模な取り組みで、ほとんどの国で10月から正式にリリースされた(現時点では英語のみに対応)。AIでどのようにスマートフォンの有用性を高めることができるのか、ということに対するAppleのビジョンを垣間見ることができる。しかし、最初の機能群は、iPhoneに劇的な変化をもたらすものではない。それは、登場したばかりの第2弾の機能群も同じだ。現状のApple Intelligenceは、写真から不要なものを消去する、文章を書き直す、テクノロジーに関する疑問を「Siri」に解決してもらう、といったタスクを支援するツール群で主に構成されている。
しかし、Appleは2025年、主にSiriの助けを借りて、スマートフォンの使い方を大きく変えうる取り組みの基盤を築き始めるだろう。Siriは、質問に答える際に、よりパーソナルなコンテキストを組み込んだり、アプリ内でアクションを実行したり、スマートフォンの画面に表示されているコンテンツを理解したりできるようになる。
こうした変化が実現すれば、Siriは今よりもはるかに有能なバーチャルアシスタントになるだろう。iPhoneのソフトウェアをさらにインテリジェントにするという、より大きな変化の土台となるかもしれない。Bloombergによると、Appleには確かに、より高度な大規模言語モデル(「ChatGPT」を動かしているのと同じテクノロジー)でSiriを刷新するという大規模な計画があるという。新しいSiriは、Googleの「Gemini」やOpenAIのChatGPTのように、迅速かつより自然にユーザーの質問に答えられるようになるかもしれない。
しかし、同報道によると、それらの新機能は、Appleが2025年に発表したとしても、実際に導入されるのは2026年以降になる見通しだという。この報道が事実なら、OpenAIやGoogleのチャットボットに真に対抗するAppleのテクノロジーは、ライバルよりずっと遅れて市場に投入されることになり、Appleの優れたテクノロジーへのプレッシャーはさらに高まるだろう。しかし、Appleはこれを長期的な取り組みとみなしており、ライバルに急いで追いつこうとするのではなく、独自のアプローチを完璧な形にするまで時間をかけたいと考えている。それが、Appleのいつものやり方だ。
Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏は、先頃実施されたWiredのSteven Levy氏とのインタビューで、Apple Intelligenceの有料化を検討したことがあるかと尋ねられ、「われわれはApple Intelligenceについて、スマートフォン革命と現代のタブレットの実現を可能にしたマルチタッチ機能のようなものだと考えている」と答えた。
半分に折りたためるiPhoneのうわさは何年も前から流れているが、近いうちに登場することはなさそうだ。折りたたみ式「iPad」の方が折りたたみ式iPhoneよりも先に登場する可能性が高く、いずれにしても、何年も先になるはずだ、とBloombergは報じている。
売り上げが伸び悩み、アップグレードサイクルが長期化する中で、Androidスマートフォンメーカー各社は、スマートフォン市場を再び活性化させる手段として、折りたたみ式のデザインに目を向けてきた。International Data Corporation(IDC)によると、折りたたみスマートフォンの市場は2024年に10.5%成長する見通しだという。しかし、スマートフォンメーカー、特に折りたたみスマートフォンの人気が高い中国に拠点を置くメーカー各社が、生成AIに焦点を移している中、折りたたみスマートフォンの成長は鈍化している。
折りたたみスマートフォンは、しかるべき種類の消費者には有益かもしれないが、ほとんどの人にとっては、妥当な理由を見つけられるような価格ではない。従来型のスマートフォンがあまりにも日常生活に浸透しているため、購入者に新しいものを試してもらうには、説得力のある根拠が必要だ。Appleが折りたたみスマートフォンをまだ発表しておらず、その方向に急ぐ気配がないのも、同じ発想だからなのかもしれない。
Appleが公式に新製品を発表するまで、確かなことは何も分からない。しかし、各種の報道が正しければ、2025年のiPhoneのリリースでは例年より多くのモデルがそろうことになる。Appleは、一番乗りを目指すより、新しいテクノロジーが役に立つ理由を消費者に提示することで定評がある。それを考えると、Apple Intelligenceなどの新製品(そして、おそらく最終的には折りたたみiPhoneも)に対する期待は特に高いと言えるだろう。
アップルの生成AIが使える「iPhone 16」(価格をAmazonでチェック)
高コスパなシャオミのPD対応モバイルバッテリー(価格をAmazonでチェック)
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力