Amazonにとって2015年は素晴らしい年だった。同年における米国のEコマース市場の成長は、その半分以上がAmazonの成果によるものだと言ってよいだろう。そして、Amazon Web Services(AWS)のクラウドビジネスは、同社を今後数年にわたってけん引する大きな柱になりつつある。
とは言うものの、2016年のスタートを切るにあたって、頭に置いておくべき疑問がいくつかある。本記事ではそれらの疑問について解説する。
Amazonは2016年にAWSへどれだけ投資するのか?
Amazonは2015年からAWSの業績を個別に発表するようになった。これによって、AWSが現在ほぼ1年を通して、また今後も同様に利益を上げ続けられることが明確になった。しかし、Pacific Crest SecuritiesのアナリストBrent Bracelin氏は、AWSが新たなリージョンに対して投資するとともに、その利幅が減少すると予想している。Bracelin氏は具体的に、AWSが英国と韓国、インド、米オハイオ州に新リージョンを開設した場合を考慮している。これらは、現時点で運用されている11カ所のリージョンに追加されることになる。同氏はリサーチノートに以下のように記している。
AWSは2015年には新規リージョンを開設しなかったが、2016年には4つのリージョンを新設するというかつて無い規模での拡大を予定しているようだ。ちなみに、それら4つのリージョンとは、英国とインド、韓国という新たな3カ国に加えて、米オハイオ州となっている。こういった設備投資によって、営業利益は圧迫される可能性がある(中略)2015年に各リージョンで平均7億1500万ドルの売上高が生み出されていることを考えると、各リージョンの重要性は高まっている。これらリージョン毎の平均売上高は過去2年間で倍以上に増大している。
Amazonの第4四半期決算発表では、Eコマース分野での成功に焦点が置かれるだろうが、AWSへの投資についても少しは説明される可能性がある。
AWSはスタックをどこまで拡張するのだろうか?
Amazonは2015年に開催した「re:Invent」で、大企業のワークロードをクラウドに移行することを念頭に置き、焦点を価格から機能や新サービスに移していた。またAWSはIoT分野にも参入し、同社のアナリティクス製品も拡充した。そのうえで、IaaS分野で支配的な地位を築いているAWSは、スタックを迅速に拡張してきている。ここでの疑問は、AWSがどこまで付加価値サービスを追求するのかだ。このような利幅の大きいサービスでは、アナリティクスのような分野で、IaaSの価格戦争を避けてきた既存企業とAWSとの間で激しい争いが勃発することになる。筆者は、AWSが過去にインフラで行ったように、よりハイエンドのサービスに参入できるという力を見せ、周囲を驚かせるのではないかと考えている。
以下の図は、AWSがどのようにスタックを拡充していくのかという点に関するBracelin氏の考えを示したものだ。