多くのメディアでも取り上げられた、6月初めに発覚した100万件規模の個人情報漏えい事件。これは日本をターゲットとした標的型攻撃だといわれています。実はこれまでも、特定産業を中心に海外のグループによる日本を狙ったサイバー攻撃が存在します。
今回の事件とともに製造業や小売業など、日本の組織がなぜ狙われているか、どのようなセキュリティ対策が求められているのかを解説します。
繰り返し行われる同種の標的型攻撃
冒頭に紹介した100万件規模の個人情報漏えいは、標的型攻撃であり、2014年秋に日本企業対する医療費通知に偽装した攻撃と同様のマルウェアが用いられているとみられています。これらの攻撃は「Backdoor.Emdivi」という種類のRAT(Remote Administration Tool)マルウェアが用いられました。RATとは、管理者権限を乗っ取りコンピュータの遠隔操作を可能にするツールを指します。
Backdoor.Emdiviによる攻撃手法では、まず、ダウンロード役のマルウェア(ドロッパー)を仕込んだ脆弱性を突いたエクスプロイトコードを含むファイルや、WordやPDFのアイコンに偽装した実行ファイルをターゲットとしている組織にメール送信します。このような経路で端末が感染するとBackdoor.Emdivi本体が秘密裏にインストールされ、HTTPベースでコマンド&コントロール(C&C)サーバで通信し、さまざまな悪意のある攻撃を実施します。
Backdoor.Emdiviを用いた標的型攻撃は、日本国内で構築されたC&Cサーバと通信するのが特徴で、このことから日本に特化した攻撃であることがわかります。
Backdoor.Emdiviは、より巧妙に進化を続けながら日本の組織を狙い続けています。