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ジャバ・ザ・ハットリ
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北欧ではグッドデザインに囲まれるのでお菓子の箱がダサいだけでイラっとくる

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    ジャバ・ザ・ハットリ

デンマークのコペンハーゲンを旅行して、ずっとグッドデザインについて考えていた。本職がデザイナーではないし、そんなにデザインセンスがあるわけでも無い。ただ数々の有名デザイナーを輩出した街で、美しい建築や店舗、また家の中までカッコよく洗練された北欧デザインの家具や小物に囲まれていたら誰でも考えてしまう。

**「なんでこんなになにもかもがカッコいいの?」**と。

この街ではちょっとした電球や傘立てまでグッドデザインなのだ。

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よく北欧デザインを語る上で有名デザイナーの名前があげられる。コペンハーゲンが産んだデザイナーのヤコブセンもそのひとり。ヤコブセンのイスは誰もが一度は目にしたことがあるだろう。

コペンハーゲンに行くとヤコブセンが残した作品の数々を目にすることができる。ヤコブセンが設計したホテルはもちろん、郊外のガソリンスタンドまで見に行った。

そうしていろんなデザイナー達の作品を見ていくと、この街全体がカッコいいのは数人のデザイナーだけの力ではないな、と思えてきた。

確かに偉大なデザイナーの作品は素晴らしい。でも、どんなに偉大なデザイナーであってもデザインが行き届く範囲が決まっている。イスならイス。ホテルならホテルの中をデザインするのみ。となりの誰かの店の中や、近所の人の家の中まではデザインできない。

街並みから小物にいたるまですべてを美しくカッコよくするには、長期的な視点とすごい工夫など、よく分からんがなにかがないと不可能だ。

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私にとって東京の風景とは、安い居酒屋と洗練されたデザインホテルと大人のおもちゃ屋と、どぎつい看板とキラキラした近未来的なネオンと電柱がカオスのように混在したところだ。秩序無くブッとんでいて刺激的だけど、美しくはない。

コペンハーゲンの風景はその真逆。全てが統一的に洗練されている。

コペンハーゲンにはクリスチャニアという合法的にマリファナが売られている怪しい雰囲気の地区がある。その地区ですら統一的に雑多な雰囲気を作っていた。落書きが街に汚く点在しているのではない。落書きがそれ相応の場所だけにしっかり風景に溶け込んでいる。

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私の日本人的感覚では人が街に集まって勝手に暮らしてたら東京のようなカオスな風景ができあがってしまうはず。なぜコペンハーゲンや北欧の街はそうならないのか?なぜどこに行ってもこんなにカッコよくデザインが洗練されているのか?とずっと考えていた。

コペンハーゲンの美しい緑の芝が敷かれた公園で休憩していた時。うちの子供がお菓子を食べ終えて、走って遊んでいるのを眺めていた。ふと見るとお菓子の空箱がそのまま置きっぱなしになっている。その箱は北欧基準で言うといいデザインではなかった。

私はその箱のダサさにちょっとイラっときて、すぐに箱をゴミ箱に捨てに行った。美しい場所に汚いデザインの箱は似合わない。元いた場所を振り返って、ダサい空箱が取り除かれて一面に広がる美しい緑の芝を見てほっとした。

そこで思った。「あーこれかな」と。この「美しい状態でいて欲しい。デザインが考慮されてない物を入れたくない」という感覚がずっと昔からこの街に暮らす普通の人々にまで染み付いてるのかも、と。

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美しいもの、いいデザインに囲まれて暮らしていると自然と心が楽しくなり、汚いものをできるだけキレイにしようとする。プロのデザイナーたけでなく、普通の人々が美しいものを求める心があると街全体がより美しくなる。

ここで言う「美しさ」とは清潔さなどではない。道に落ちてるゴミを拾って捨てるようなマナーの良さは日本人の方が遥かに凌駕していると思う。

ここで言う「美しさ」とはデザイン的な美しさのことだ。例えばコペンハーゲンの街に「美容クリニック。ワキガ!顔のシミ!ケツ毛の脱毛!」なんて書いた広告看板を立てたら街の人は全員ブチ切れるだろう。

美しいものに囲まれて暮らしたい、というのは普遍的ではあるが、獲得するのは簡単ではない。私もふくめてついつい人間は「まーこれでいいか」と妥協してしまう。「洗濯物干しなんて衣服が乾けばいいし、これでいいか。」「食器は食事ができたらいいんだし、これでいいか」となってしまいがち。そこをほんの少しでもいいから、「洗濯物でもちょっとカッコよく干すには?」「食事が映えるお皿は?」といいデザインを考えてみるだけで、それが積み重なり生活が豊かになる。

プロのデザイナーには及ばなくても、やたらとお金をかけなくても、ただ美しいものを求めるだけでこんなに生活が豊かになるんだなー、と北欧デザインに囲まれた街から感じた。

  • 写真はすべて著者撮影
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