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国際航空運送協会

IATAから転送)

国際航空運送協会(こくさいこうくううんそうきょうかい、: International Air Transport AssociationIATA)は、世界の航空会社で構成される業界団体。2016年時点で117ヵ国290社の主に大手航空会社が加盟し、世界の定期運航の有効座席キロ数(available seat miles)のおよそ82%を加盟各社が占めている[1][2][3]。IATAは航空会社の活動を支援し、業界の方針や統一規準制定に寄与してきた。本社の登記地はカナダモントリオールで、本社機構はスイスジュネーブに置いている[4]

国際航空運送協会
International Air Transport Association
略称 IATA
設立 1945年4月19日 (79年前) (1945-04-19)  キューバ ハバナ
種類 国際貿易協会
本部 カナダの旗 カナダ モントリオール
800, Place Victoria (rue Gauvin)
座標 北緯45度30分02秒 西経73度33分42秒 / 北緯45.5006度 西経73.5617度 / 45.5006; -73.5617座標: 北緯45度30分02秒 西経73度33分42秒 / 北緯45.5006度 西経73.5617度 / 45.5006; -73.5617
会員数
120ヵ国の航空会社290社(2016年)
DG and CEO ウィリー・ウォルシュ (英語)
ウェブサイト www.iata.org
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概要

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近年は「IATA」を「イアタ」と読むが、古くは「アイアタ」([ʌɪˈɑːtə][5])と慣用読みするのが普通だった。2004年現在、カナダモントリオールスイスジュネーヴに本拠地がある。会員数は290社に達する。1980年代以降は航空会社に技術面の規程を設けることに加えて航空運賃の高止まりを画策するカルテル機関として批判される事も多く、格安航空会社などの新興航空会社は加盟しない事も多い[要出典]

歴史

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IATAは1945年4月にキューバハバナにて設立され、前身の International Air Traffic Association(1919年ハーグ設立)から引き継いだ31か国・57社の航空会社で構成され、業務の多くは技術的な課題であった。業界団体であるIATAに対し、国際民間航空機関(ICAO)は現在も国際航空秩序の監視を担うシカゴ条約附属書の合意に基づき国際管理機構として設立され、IATAは多くの情報を提供した。

シカゴ条約はだれがどこを運航するのかという航空業界の経済面の合意形成に至らなかったが、ウォーレン・コフラー Warren Koffler は IATAはその空白を埋める存在として価格調整の機構となったと評している[6]

1940年代後半に IATA は価格調整の国際会議を開き始め、事務総長ガズディク J.G Gazdik が述べたその趣旨とは、お手軽な航空運賃の水準を決め、運営経費回収を勘案しつつ正当な利潤を各社にもたらすことにあったという[7]

これは現在、何千も存在する2国間航空協定を制定するきっかけとなった。現行の2国間協定の基本になったのは1946年に締結された米英バミューダ航空協定である[要出典]。消費者の立場を代弁したということも事実である。

当時、大半の航空会社は国営で利潤を求めておらず、IATAには熾烈な航空券販売競争を抑制する価格統制の機能(カルテル)が期待された。最初の運送会議は1947年にリオデジャネイロで開催され、400もの決議が満場一致で可決された[8]。IATA Director-General ウィリアム・ヒルドレド William Hildred の回想によると、この会議で決定した項目のうちのおよそ200件は、国際航空運送に設定する統一のタリフの細目であったという[9]

アメリカの国内路線を統率する民間航空委員会(CAB)はIATAの価格統制に介入せず、それに対して1954年当時、学識経験者の Louis B. Schwartz は同委員会の不作為を「法的な責務の放棄」と批判した[10]。経済雑誌『エコノミスト』は中世のギルドを引き合いに出して、価格操作機関IATAが政府に配慮したと非難した[11]

IATAは1950年代初頭、サービスの質に応じて差別化するよう、価格統制の制度において航空各社に強要したと批評される[12]。IATAは各社のサービスの行き過ぎを規制し、1958年、エコノミークラスの旅客に具が「リッチな」サンドイッチを機内食として提供しないよう、正式に通達する[13][14]。経済学者ウォルター・アダムズ(英語)はIATAがサービスの過当競争を認めていた時期には、旅客は利用する航空会社を気まぐれに変更し、決して航空業界の市場規模の拡大に寄与しなかったと考察する[15]

1956年から1975年にかけて旅行会社の手数料は航空券代金の7%を上限とするとIATAが規定し、法律学者ケネス・エルジンガ Kenneth Elzinga はサービスの質向上という旅行会社から得るべき機会を、消費者は手数料規定により逸失したと主張する[16]

その後、1982年にはIATAは「国際航空業界カルテル」と評されるまでになった[17]ものの、複数の国では依然として、IATAを反トラスト法の訴追対象から除外していた[6]

2006年に至り、アメリカではIATAの運賃協定を反トラスト法から免除しないとアメリカ合衆国司法省が通達を出す[18][19]

新型コロナウイルスの世界的流行

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2020年3月、国際航空業界の定期運行には新型コロナウイルスの世界的流行の大きな影響が現れ、航空各社は国家による3つの密の回避徹底策を受けると、例えば3列シートの中央の席を売らないなど、客席数を減らして対応する。これは平常時の有償座席率(ロードファクター)の62%に相当し、IATA規定による下限77%を下回った。IATAの算定では航空運賃の採算価格は、最大で54%の値上げを要するとされた。また感染リスクの低減策として「進行方向に向いた全席配置により対面を回避できる」「呼吸の飛沫を循環させないため天井から床面へ送風する」としている。北アメリカの航空会社のうちウエストジェット航空エア・カナダアメリカン航空は2020年7月1日付で平常時の航空券発券を中止する[20]。航空業界が発した方針に対してカナダ国内では顧客の信頼を裏切るとして反論が唱えられ、カナダ運輸大臣マーク・ガルノー Marc Garneau [21]から「機内の隔離条件は推奨事項であって義務ではない」との発言があったものの、 カナダ運輸省(Transport Canada)の担当部署はカナダの航空旅客業界に向けたガイドラインにおいて、3つの密の回避を予防措置の積極的に対応すべき事項とした[22]

2021年3月第1週にIATAは前職のアレクス・ポボヴィチ Aleks Popovichに代わり、顧客・財務・デジタルサービス分野の上級副社長職にムハンマド・アリ・アルバクリ Muhammad Ali Albakri を指名した[23]。また新型コロナウイルスの世界的流行に対応するため、IATAはモバイル機器向けのアプリ「The IATA Travel Pass」を同年4月半ばに公開すると発表し、各国が航空旅客関連の方針を変更する事態でも航空機の利用者が規制に対応できるようにするとした[24][25]

近年IATAは航空業界を代表する存在としての地位を固め、いくつかの重要なプログラムを展開し、危機的な事件が起きるたびに各国政府へのロビー活動を展開している。その影響力にもかかわらず、IATAは立法権限をもたない業界団体である[要出典]

優先課題

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安全
安全はIATAの最優先事項である。IATA Operational Safety Audit (安全運航監査:IOSA)は安全運航に必要なプログラムであり、IOSA取得を航空会社に義務化している国もある。将来的にはさまざまなソースから提供されているGlobal Safety Information Centre(安全情報センター)とのデータ共有が検討されている。
保安
スマートセキュリティプロジェクトは、搭乗客の負担を減らしつつ、セキュリティチェックを受けてもらうことを目指すものである。また、リスクに基づいて人員配置を割り当て、空港施設の最適化を支援するものである。
快適な空の旅
IATAは空港場面において旅客の快適な旅行を向上させるプロジェクトを幾つも実施している。ファストトラベルは、進化する技術に航空業界標準手順を導入し旅客がさまざまな選択ができるようにするプロジェクトである。New Distribution Capability (NDC) は、航空会社のウェブサイト経由で出来るような航空券や付帯サービスの購入が他の購入方法でも同じように出来るようにするプロジェクトである。
環境
IATA加盟航空会社と業界関係者は3つの関連する目標に合意した。
  • 2009年から2020年まで燃料効率の年間平均1.5%向上
  • 2020年からの航空産業によるCO2排出量の上限
  • 2005年レベルと比較して、2050年までにCO2排出量を50%削減
IATA加盟航空会社は単一でシンプルなカーボンオフセットの枠組みの採択が温室効果ガス削減に対する最も効果的な方法だと合意した。
サービス
IATAは航空業界の重要な重要な分野においてコンサルティングサービスやトレーニングを提供している。旅行会社に対するIATA公認代理店制度では、認可された旅行会社はIATA加盟航空会社の航空券を発券・販売することが出来る。貨物においても同様の公認審査制度がある。BSPにより航空券の航空会社と代理店との健全な取引を維持している。
トレーニングでは多岐に渡る航空関係業務に関する初心者から管理者向けのコースを提供している。
ストラテジックパートナーズ
IATAストラテジックパートナーとは航空業界に関連するソリューションプロバイダーのことで、パートナー企業はIATAの運営する様々なワークグループを通して業界関係者との関係を構築・維持し、IATAと協力して航空業界を支援する企業である。
刊行物
多くのグローバルスタンダードやベストプラクティスはIATA会議で設定され、刊行物で参照することができる。

脚注

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  1. ^ IATA by Region”. International Air Transport Association. 14 February 2016閲覧。Template:Self published inline
  2. ^ biopharma-reporter.com. “Delivering COVID-19 vaccines safely will be the 'mission of the century' for air cargo industry” (英語). biopharma-reporter.com. 2021年4月1日閲覧。
  3. ^ IATA: Squeeze on airline operating profit margins intensified in Q2 2018” (英語). Curaçao Chronicle (2018年7月26日). 2021年4月1日閲覧。
  4. ^ International Air Transport Association”. CAPA Centre for Aviation. 2 February 2015閲覧。
  5. ^ IATA”. Oxford Dictionaries. Oxford University Press (11 July 2013). 2013年7月11日閲覧。
  6. ^ Gazdik, J.G. Rate-Making and the IATA Traffic Conferences . Journal of Air Law and Commerce, vol. 16, no. 3, Summer 1949, p. 298-322.
  7. ^ ATPCO corporate history”. Airline Tariff Publishing Company. 18 November 2013閲覧。
  8. ^ Hildred, William P. "International Air Transport Association: II." Air Affairs, vol. 2, no. 3, July 1948, p. 364-379.
  9. ^ Schwartz, Louis B. (1954). “Legal Restriction of Competition in the Regulated Industries: An Abdication of Judicial Responsibility”. Harvard Law Review 67 (3): 436–475. doi:10.2307/1336965. ISSN 0017-811X. JSTOR 1336965. 
  10. ^ “Clearing the Air”. The Economist 200 (6149): p. 63. (July 1, 1961). https://archive.org/details/sim_economist_1961-07-01_200_6149/page/63/mode/2up 
  11. ^ Salin, Pascal (1996). “Cartels as efficient productive structures”. The Review of Austrian Economics 9 (2): 29–42. doi:10.1007/BF01103328. https://www.semanticscholar.org/paper/fd021a0e72de167e5c923ff13c3607ba0e65935d. 
  12. ^ Freidlander, Paul (April 27, 1958). “Sandwich Settlement”. New York Times: pp. 2–1. https://nyti.ms/2Ui5ydb 
  13. ^ Tauber, Ronald S. Enforcement of IATA Agreements. Harvard International Law Journal , vol. 10, no. 1, Winter 1969, p. 1-33.
  14. ^ Adams, Walter (1958). “The Role of Competition in the Regulated Industries”. The American Economic Review 48 (2): 527–543. ISSN 0002-8282. JSTOR 1816944. 
  15. ^ Elzinga, Kenneth G. The Travel Agent, the IATA Cartel, and Consumer Welfare. Journal of Air Law and Commerce, vol. 44, no. 1, 1978, p. 47.
  16. ^ Hannigan, John A. (1982). “Unfriendly Skies: The Decline of the World Aviation Cartel”. The Pacific Sociological Review 25 (1): 107–136. doi:10.2307/1388890. ISSN 0030-8919. JSTOR 1388890. 
  17. ^ DOT-OST-2006-25307-003”. www.regulations.gov. 2020年2月26日閲覧。
  18. ^ Wojtek, Ralf (28 November 2015). “UPU compensation rates for packages under EU competition law: Are the lessons to be learned from other international fee arrangements”. In Crew, Michael A.; Brennan, Timothy J.. The future of the postal sector in a digital world. Springer. p. 337. ISBN 978-3-319-24454-9. OCLC 930703336 
  19. ^ Atkins, Eric (26 June 2020). “WestJet and Air Canada to start selling middle seat on flights as of July 1”. The Globe and Mail Inc. https://www.theglobeandmail.com/business/article-westjet-and-air-canada-to-start-selling-middle-seat-on-flights-as-of/ 
  20. ^ Cassutt, Michael (1987年頃). “Marc Garneau”. Who's who in space : the first 25 years. マサチューセッツ州ボストン: G.K. Hall. LCCN 86-26988 
  21. ^ Jones, Ryan Patrick (28 June 2020). “Critics not on board with airlines' decision to relax in-flight physical distancing during COVID-19”. CBC. https://www.cbc.ca/news/politics/airlines-physical-distancing-reaction-1.5630146 
  22. ^ Who's Who: Who's Who: Muhammad Ali Albakri, IATA senior vice president for customer, financial and digital services” (英語). Arab News (2021年3月6日). 2021年3月6日閲覧。
  23. ^ IATA Travel Pass will be available on Apple Store in mid-April” (英語). gulfnews.com. 2021年4月1日閲覧。
  24. ^ The International Air Transport Association has announced that a new travel pass app will launch on Apple iPhone in April”. Patently Apple. 2021年4月1日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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