メバル
メバル(鮴、目張、眼張、眼張魚)は、メバル属のうち、日本で古来「メバル」と呼ばれてきた3種( 学名:Sebastes inermis, Sebastes cheni, Sebastes ventricosus)の総称(2008年以前にはメバル属中の1種と見なされていた)[1][2]。日本の北海道から九州にかけての沿岸の岩礁域に多く棲息する。地方名には様々な呼び方がある。具体例として、ガヤ(北海道)、ツキ(月)、メバル、ガヤ(青森県)、コダルマ(青森県)、テンカラ(青森県大森市)、キロキロ[メバル類の幼魚](青森県八戸市)、メバチ(宮城県松島)、メバル、クロメバル(福島県)、アカメ、アカメバル(茨城県川尻)、メ八チ(北陸)、メバリ(島根県松江)、メマル(和歌山県)、アオテンジョウ、アカテンジョウ(和歌山県)、テンコ(新潟県、山形庄内地方)、チャバチメ(富山県氷見)、セイカイ(新潟県)、クロハチメ(新潟県)、ハチメ(新潟県寺泊・佐渡、石川県七尾、福井県鷲巣奈三国)、ツヅメノ(富山県魚津)、サンノジ(シロメバルの事)(神奈川県相模湾周辺)、ガワ(愛知県知多半島中部)、ゴンダイメバル、シンチュウメバル(島根県大社)、アオヤギ、ヤナギ(富山県)、メバチ(京都府、兵庫県)、ワイナ(広島県)、ウキソ(アカメバル)(岡山県)、チャデリ(岡山県、秋田県男鹿)、メバル(鹿児島県)、メバリ(鹿児島県奄美)等※瀬戸内海の一部ではメバルはカサゴのことを指す事もある。 以上のように様々な呼称や呼び方が存在する。
メバル | ||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Sebastes inermis Cuvier et Valenciennes, 1829 Sebastes cheni Barsukov, 1988 Sebastes ventricosus Temminck et Schlegel, 1843 | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
メバル = (目張・鮴・目張魚) | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Japanese rockfish Japanese sea perch | ||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||
本文参照
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生物的特徴
編集分類
編集古くは、ヨーロッパの個体を元にキュヴィエの記載したアカメバルと、シーボルトが日本からオランダに持ち帰った個体を元にシュレーゲルが記載したクロメバルが種として認められてきた。
しかし、1935年(昭和10年)に松原喜代松がメバルは1種であると主張し、命名が古い方のアカメバルの学名 Sebastes inermis がメバルの学名となった。
その後の1985年(昭和60年)に陳楽才(チェン)がメバルが数種に分かれると主張し、1988年(昭和63年)にバルスコフと陳が第3の種シロメバルを記載した。2008年(平成20年)8月に日本魚類学会の英文機関誌 "Ichthyological Research" で、これまで同じ種とされてきた「メバル」は、DNA解析によると3種に分類できることが発表された。これに伴い、本項は日本語で「メバル」と総称される人為分類群を扱うものとなっている。元の学名 Sebastes inermis を踏襲したのは「アカメバル」であり、他の2種「シロメバル」と「クロメバル」は近縁の異種である。
表記内容は左から順に、標準和名とそれに対応する漢字表記、学名。
- シロメバル(白眼張・白鮴) Sebastes cheni Barsukov, 1988
- 釣魚としての日本語俗称は「黒(くろ)」。
- アカメバル(赤眼張・赤鮴) Sebastes inermis Cuvier et Valenciennes, 1829
- 釣魚としての日本語俗称は「赤(あか)」「金(きん)」。
- クロメバル(黒眼張・黒鮴) Sebastes ventricosus Temminck et Schlegel, 1843
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シロメバル
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アカメバル
形態・生態
編集全長は30cmから20cmほど。体はカサゴよりも幅が薄く、体高が高い。全身は黒褐色で、数本のぼんやりとした黒い横縞がある。口と眼が大きく、「メバル」という和名も大きく張り出した眼に由来する(画像参照)。
日本の北海道南部から九州、朝鮮半島南部に到る海域に分布し、海岸近くの海藻が多い岩礁域に群れをなして棲息する。カサゴのように底にとどまらず、岩礁付近を群れて泳ぎ回るが、垂直に切り立った岩場に沿ってホバリングするように立ち泳ぎすることもある。岩礁の間から温泉が湧き出ている海域では、温泉の上に集まって立ち泳ぎする姿も見られる。食性は肉食で、貝類、多毛類、小型の甲殻類、小魚などを捕食する。夜行性でもある。
カサゴと同じく卵胎生で、冬に交尾したメスは体内で卵を受精・発生させ、交尾の1ヶ月後くらいに数千匹の稚魚を産む。稚魚は成長するまで海藻の間などに大群を作って生活する。
人間との関わり
編集捕獲方法
編集旬は冬から春で、船、磯、防波堤での釣りや籠漁などで漁獲される。磯、防波堤で釣れるのは黒メバル、沿岸部の岩礁帯や藻場で釣れるのは赤メバルと呼ばれる。保護色による違いと考えられていたが、上述のように別種である。
動くものに襲いかかる習性があるため、釣り餌として生きたスジエビなどがよく使われる。ルアーや擬似餌でも釣ることができる(メバリング)。ルアーはミノーやワームが効果的である。他に、7cm前後のイワシやカタクチイワシ、サッパ、イカナゴ、ドジョウなどの小魚生き餌を使っての泳がせ釣りや、ゴカイ、 スジエビなどを生き餌にしてのウキ釣り (float fishing) が知られる。群れで行動する習性があるため、いったん釣れ始めると同じ場所で続けて釣れることが多い。このため、道糸に多数の針をつけた胴つき仕掛けがよく用いられる。
また、カサゴとは違って視力が良いため、細いハリスが用いられる。オニオコゼのような強い毒こそ無いが、東北地方では毒魚として知られ、不用意に握ると刺された部位はわずかに腫れる。鰓蓋(さいがい、えらぶた)や背鰭(せびれ)の棘(とげ)が鋭いため、扱う際には手袋やタオルなどの使用が薦められる。
食用
編集脂肪が少なく淡白な白身魚である。内臓を除いただけのものを味噌汁や煮付けなどにし、熱いうちに食べると美味。その他の料理法として、塩焼き・から揚げ・刺身などがある。アクアパッツアなどの洋食も良い。
近縁種
編集脚注
編集- ^ Froese, Rainer, and Daniel Pauly, eds. (2012). "Sebastidae" in FishBase. December 2012 version.
- ^ 中村庸夫『魚の名前』2006年 東京書籍 ISBN 4487801168