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アオキ (植物)

ガリア科の常緑低木
アオキ科から転送)

アオキ(青木、学名: Aucuba japonica または Aucuba japonica var. japonica)は、ガリア科またはアオキ科Aucubaceae[注釈 1]アオキ属常緑低木。青々とした葉と赤い果実が特徴で、山地の林内に自生するほか、庭木にも使われる。葉は民間薬となり、陀羅尼助の原料として配合される。

アオキ
アオキ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : 真正キク類I euasterids I
: ガリア目 Garryales
: ガリア科 Garryaceae
: アオキ属 Aucuba
: アオキ A. japonica
変種 : アオキ A. j. var. japonica
学名
Aucuba japonica Thunb. var. japonica (1783)[1]
シノニム
英名
Japanese Aucuba
変種品種栽培品種[3]
  • ヒメアオキ A. j. var. borealis
  • ホシテンヒメアオキ A. j. var. borealis f. albivariegata
  • ウチダシヒメアオキ A. j. var. borealis f. rugosa
  • ナンゴクアオキ A. j. var. ovoidea
  • シロミノアオキ A. j. f. leucocarpa
  • キミノアオキ A. j. f. luteocarpa
  • アオバナアオキ A. j. f. viridiflora
  • フクリンアオキ A. j. 'Luteo-marginata'
  • ナカフアオキ A. j. 'Picturata'
  • フイリアオキ A. j. 'Variegata'

名称

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和名アオキの由来は、四季を通じて常緑で、のほかも常に緑色(青い)であることから名付けられている[4][5]。別名で、アオキバ[4]、ヒロハノアオキ[1]、ヤマタケ[4]とも呼ばれる。

学名は、属名アウクバ(Aucuba)が和名でアオキバ(青木葉)がラテン語読みでそのまま使われており、種名ジャポニカ(japonica)は「日本の…」という意味である[6]英語ではジャパニーズ・ローレル(Japanese laurel)ともいい、ゲッケイジュ(月桂樹)の葉の形と色から名付けられたという説がある[6]

花言葉は、「初志貫徹」[5]

分布・生育地

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日本原産[7]。日本の東北地方宮城県以西[5]関東地方以西の本州四国九州沖縄朝鮮半島に分布する[7][8]。山地にふつうに生える[9]。日の差し込む低山スギ[10]照葉樹林内に自生し、雑木林などでもよく見られ[4][11]日陰でもよく育つ[12]北海道本州北部の日本海側の多雪地には、積雪に適応した変種ヒメアオキが自生する[7]

冬の間についている俵形の赤い果実が美しいことから、庭木や公園樹としての利用も多く[8][5]、園芸品種の栽培もされている[7]

形態・生態

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常緑の低木[7][9]。高さは0.5 - 3メートル (m) ほどで、枝は太く緑色[7][13]。幹も緑色で光合成をおこなう[12]

は有柄で対生し、枝の上部に集まってつき、葉身は厚く光沢があり両面とも無毛である[5]。乾くと黒くなる特性を持つ[7]。葉の長さは8 - 20センチメートル (cm) 程度、形状は長楕円形[注釈 2]で先端は鋭く、葉縁にはハッキリした鋸歯が目立つ[13][8][10]。葉に斑が入った園芸品種もある[12]。古い葉は、新緑が出て花が咲く春から初夏にかけて黄色に黄葉して、落葉する[14]

花期は春(3 - 5月)[9][11]雌雄異株で、花房が大きいものが雄株、小さいものが雌株である[4]褐色を帯びた紫色で、枝先の円錐花序に穂のように小花を多数つける[7][11]。雄花の花序は長さ8 - 20 cm、雌花の花序は長さ2 - 5 cmほどで、赤褐色の4弁花が咲く[5]子房下位単性花。雄花は淡黄色の葯をもつ4個の雄蕊があり、雌花は緑色の花柱が1個ある[15]

秋になると、雌株に楕円形の小指大ほどの果実が赤く熟し[9]、12月 - 翌年5月ころまでついている[4][12]。果実は核果で、大きさ15 - 20ミリメートル (mm) ほどの卵形楕円形で、核(種子)を1個含み、赤色が映えてよく目立つ[7][11]。熟した果実はヒヨドリがよく食べるが[9]、種子が未熟なうちは果実の色は青く、えぐみや苦味を保持して、ヒヨドリなどの小鳥に食べられないようにしている[5]。アオキの果実は、大きな種子のまわりに薄い果肉がついているだけで、小鳥たちにとって摂食優先度は低く、食べ物がなくなった3月ごろになってから赤く熟した果実が食べられるようになる[5]

核は、新鮮なうちは楕円形で大きく、褐色を帯びた白色で表面に浅い縦溝がある[11]。時間が経過した核は、黒褐色になり細く硬くなる[11]。まれに、白い果実をつけるシロミノアオキも山地に自生する[8]

人間との関わり

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暑さ寒さに強く、日陰でも育ち、赤い果実や緑色の濃い葉や斑入りの葉の美しさが好まれて、庭園公園の植え込みに植栽され、日本国外でも栽培される[12]。葉は薬用にされ、やけどや膿の吸い出しに用いられていた[13]。また、「青木の花」は春の季語、「青木の実」は冬の季語である[16]

園芸

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庭木としての利用も多く、斑入り園芸種もある[9]。葉に白や黄色の多くの斑が入る園芸品種フイリアオキが選抜され、日本国外では非常に人気がある[13]スウェーデンの植物学者カール・ツンベルクが学名を与えたその翌年(1783年)に、イギリスを経由してヨーロッパに紹介されたといわれ、流行してヨーロッパ各地で植えられた[17]。特に葉に斑が入ったものは貴重で、当初は雌株ばかりが持ち込まれて実はならなかったが、のちに雄株も紹介されて冬に赤い実をつけるようになると、さらにアオキ人気が高まったといわれている[17]

栽培では、半日陰を好み、耐寒性があり作りやすく、熟した果実から取り出した種子を蒔くか、果実観賞用に梅雨時期に雌木を挿し木して育成する[7]

薬用

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は苦味健胃作用があり、民間薬陀羅尼助の原料の一つとして配合されている[5]。生葉には、配糖体オークビンなどを含み、膿を出させる排膿作用、消炎作用、抗菌作用がある[4]。果実には、実の色に関係なく苦味配糖体のオークビンを含む[4]

民間療法では、腫れもの、やけど切り傷おできなどの保護、消炎に、生葉を焦がさないように火であぶるか、アルミ箔に包んで蒸し焼きにして、トロトロに軟らかく黒変したものを冷まして、患部に包帯や絆創膏で止めて貼るなどして用いると、治りを早めるのに役立つ[4][7]しもやけには、生葉2 - 3枚を粗く刻み、水200 ccでとろ火で半量になるまで煎じたものを冷まし、患部に1日2 - 3回ほど直接塗る[4]。煎液(水性エキス)は、製薬原料としても用いられるが、苦味配糖体を含むため、直接飲用することは好ましくないと言われている[4]

家紋

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寛政重修諸家譜』に、「青木・丸に青木」、「青木崩し」、「丸に実付き枝青木」が記載されており、使用家は藤原氏系の青木氏、桓武平氏の青木氏が使用している。

下位分類

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日本海側産の小型の変種ヒメアオキ var. borealis のほか、果実の色、斑入りなど園芸品種も多い。

アオキ属

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アオキ属(アオキぞく、学名: Aucuba)は、ガリア科の一つ。3ほどがあり、ヒマラヤ中国南部から日本照葉樹林帯)に分布する。属名「アウクバ」は、方言名「アオキバ」による(ツンベルクの命名)。

脚注

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注釈

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  1. ^ APG体系ではアオキ科であるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではミズキ科に分類された[1]
  2. ^ ホソバアオキはより細い楕円形を取る。

出典

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  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Aucuba japonica Thunb. var. japonica アオキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月5日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Aucuba japonica Thunb. f. brachyphylla (Honda) H.Hara アオキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月5日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 千葉大学. 2023年1月27日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k 田中孝治 1995, p. 120.
  5. ^ a b c d e f g h i 田中潔 2011, p. 59.
  6. ^ a b 辻井達一 2006, p. 149.
  7. ^ a b c d e f g h i j k 馬場篤 1996, p. 9.
  8. ^ a b c d 菱山忠三郎 2003, p. 108.
  9. ^ a b c d e f 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 148.
  10. ^ a b 林将之 2011, p. 82.
  11. ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 84.
  12. ^ a b c d e 川原勝征 2015, p. 98.
  13. ^ a b c d 大嶋敏昭監修 2002, p. 26.
  14. ^ 亀田龍吉 2014, p. 36.
  15. ^ 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 113.
  16. ^ 新村出 編『広辞苑』(第六版)岩波書店、東京都千代田区一ツ橋2-5-5、2008年1月11日、14頁。ISBN 978-4-00-080121-8 
  17. ^ a b 辻井達一 2006, p. 151.

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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