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碁聖

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

碁聖(ごせい)は

  1. 日本の歴史上、傑出した囲碁の名手に対する尊称。将棋界における「棋聖」に相当する。
  2. 囲碁の棋戦の一つである碁聖戦に優勝した棋士に贈られるタイトル

碁聖と呼ばれた人物

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平安時代の棋士。俗名は橘良利[1]宇多天皇に仕えた僧侶であり、醍醐天皇の御前で藤原清貫天覧対局を行った[1]。その強さから「碁聖大徳」と称された[2][1]。最も早い時期に碁聖と呼ばれた人物とされる[3]
江戸時代前期の棋士。本因坊丈和と比較して「前聖」とも呼ばれる。
江戸時代中期の棋士。囲碁の名人であるだけでなく、将棋も上手(七段)並みで中将棋も抜群の強さであったため「盤上の聖」と呼ばれた[4]
江戸時代後期の棋士。本因坊道策と比較して「後聖」とも呼ばれる。
江戸時代後期の棋士。明治37年の『座隠談叢』に「秀策ハ聖棋神手」、『秀策口訣棋譜』に「先師碁聖秀策」と書かれるなど、明治以降になって碁聖と呼ばれるようになった[5][6]
昭和時代の棋士。中国出身で日本で活躍し「昭和の碁聖」と呼ばれる[7][8]

碁聖戦

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碁聖戦
公式戦(七大タイトル)
前身 日本棋院第一位決定戦
全日本第一位決定戦
概要
主催 新聞囲碁連盟[注 1]日本棋院関西棋院
優勝賞金 800万円
挑戦手合 五番勝負
棋戦形式 24名+αによる本戦トーナメントで挑戦者決定
持ち時間 挑戦手合: 4時間
本戦: 3時間
秒読み 5分前より
創設年 1975年
開催時期 挑戦手合: 6-8月
本戦: 前年11月-6月
公式サイト 日本棋院 碁聖戦
記録
現碁聖 井山裕太(第49期)
名誉称号 大竹英雄(名誉碁聖)
小林光一(名誉碁聖)
井山裕太(名誉碁聖資格)
最多優勝 井山(10期)
最長連覇 大竹、小林、井山(6連覇)
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全日本第一位決定戦が発展的に解消し、1976年に開始。新聞囲碁連盟[注 1]及び日本棋院関西棋院が主催。第1期は全日本第一位タイトル保持者であった大竹英雄と、挑戦権を得た加藤正夫の間で決勝五番勝負が行われた。第4期までは5人のリーグ戦によって挑戦者を決定し、タイトル保持者と挑戦手合五番勝負で優勝者を決定。第6期からは、トーナメント戦勝ち抜き者とタイトル保持者と挑戦手合五番勝負。トーナメント決勝は、第5-7期は三番勝負、8期以降は一番勝負。

長年七大タイトル戦の中で唯一、出場資格に制限があった[注 2]

第49期(2024年)までの間に戴冠者は14名いるが、長期戴冠者が多く、大竹英雄(7期)・小林光一(9期)・依田紀基(6期)・張栩(4期)・井山裕太(10期)の5名だけで通算36期獲得している。なお大竹は前身の日本棋院第一位決定戦、全日本第一位決定戦でもこのタイトルに強く、全日本のタイトルは一度も大竹以外の手に渡ったことはなかった。

名誉碁聖

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碁聖を5連覇、または通算10期以上獲得した棋士は、60歳以降に「名誉碁聖」を名乗る権利を得る。

棋士 連覇
1 大竹英雄 7期 6連覇 1978、1980-1985
2 小林光一 9期 6連覇 1988-1993・1999・2001-2002
3 井山裕太 10期 6連覇 2012-2017・2021-24

歴代碁聖

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棋士 生年 初奪年 通算 連覇
1 加藤正夫 (1947-03-15) 1947年3月15日 1976 3期 2連覇
2 大竹英雄 (1942-05-12) 1942年5月12日(82歳) 1978 7期 6連覇
3 趙治勲 (1956-06-20) 1956年6月20日(68歳) 1979 2期
4 小林光一 (1952-09-10) 1952年9月10日(72歳) 1988 9期 6連覇
5 林海峰 (1942-05-06) 1942年5月6日(82歳) 1994 1期
6 小林覚 (1959-04-05) 1959年4月5日(65歳) 1995 1期
7 依田紀基 (1966-02-11) 1966年2月11日(58歳) 1996 6期 3連覇
8 山下敬吾 (1978-09-06) 1978年9月6日(46歳) 2000 1期
9 張栩 (1980-01-20) 1980年1月20日(44歳) 2006 4期 4連覇
10 坂井秀至 (1973-04-23) 1973年4月23日(51歳) 2010 1期
11 羽根直樹 (1976-08-14) 1976年8月14日(48歳) 2011 2期
12 井山裕太 (1989-05-24) 1989年5月24日(35歳) 2012 10期 6連覇
13 許家元 (1997-12-24) 1997年12月24日(26歳) 2018 1期
14 一力遼 (1997-06-10) 1997年6月10日(27歳) 2020 1期

歴代挑戦手合

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◯●は勝者から見た勝敗、網掛けはタイトル保持者。(第1期は全日本第一位に挑戦)

開催年 優勝 勝敗 準優勝
1 1976 加藤正夫 3-2 大竹英雄
2 1977 加藤正夫 3-0 武宮正樹
3 1978 大竹英雄 3-1 加藤正夫
4 1979 趙治勲 3-0 大竹英雄
5 1980 大竹英雄 3-1 趙治勲
6 1981 大竹英雄 3-1 加藤正夫
7 1982 大竹英雄 3-2 趙治勲
8 1983 大竹英雄 3-2 淡路修三
9 1984 大竹英雄 3-1 加藤正夫
10 1985 大竹英雄 3-1 工藤紀夫
11 1986 趙治勲 3-0 大竹英雄
12 1987 加藤正夫 3-1 趙治勲
13 1988 小林光一 3-0 加藤正夫
14 1989 小林光一 3-1 今村俊也
15 1990 小林光一 3-0 小林覚
16 1991 小林光一 3-2 小林覚
17 1992 小林光一 3-1 小林覚
18 1993 小林光一 3-0 林海峰
19 1994 林海峰 3-1 小林光一
20 1995 小林覚 3-2 林海峰
21 1996 依田紀基 3○○○0 小林覚
22 1997 依田紀基 3○●○○1 結城聡
23 1998 依田紀基 3○○○0 苑田勇一
24 1999 小林光一 3●●○○○2 依田紀基
25 2000 山下敬吾 3○○●●○2 小林光一
開催年 優勝 勝敗 準優勝
26 2001 小林光一 3○●○●○2 山下敬吾
27 2002 小林光一 3○○●○1 結城聡
28 2003 依田紀基 3○○●●○2 小林光一
29 2004 依田紀基 3○●○○1 山田規三生
30 2005 依田紀基 3○○○0 結城聡
31 2006 張栩 3○○○0 依田紀基
32 2007 張栩 3○○○0 横田茂昭
33 2008 張栩 3●○○○1 山下敬吾
34 2009 張栩 3○○○0 結城聡
35 2010 坂井秀至 3●○●○○2 張栩
36 2011 羽根直樹 3●●○○○2 坂井秀至
37 2012 井山裕太 3○○○0 羽根直樹
38 2013 井山裕太 3●●○○○2 河野臨
39 2014 井山裕太 3●○○●○2 河野臨
40 2015 井山裕太 3○●○○1 山下敬吾
41 2016 井山裕太 3○○○0 村川大介
42 2017 井山裕太 3○○○0 山下敬吾
43 2018 許家元 3○○○0 井山裕太
44 2019 羽根直樹 3○○●●○2 許家元
45 2020 一力遼 3○○○0 羽根直樹
46 2021 井山裕太 3○●●○○2 一力遼
47 2022 井山裕太 3○○○0 一力遼
48 2023 井山裕太 3○○○0 一力遼
49 2024 井山裕太 3○○○0 芝野虎丸

リーグ戦成績

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第1期(1975-76年)
順位 出場者 / 相手 加藤 島村 小林 藤沢
1 加藤正夫 4 0
2 島村俊宏 × - × 2 2
2 小林光一 × - × 2 2
4 藤沢朋斎 × × - × 1 3
4 趙治勲 × × × - 1 3
第2期(1976-77年)
順位 出場者 / 相手 武宮 梶原 藤沢 大竹 石井
1 武宮正樹 × 3 1
1 梶原武雄 × 3 1
3 藤沢秀行 × × - 2 2
3 大竹英雄 × × 2 2
5 石井邦生 × × × × - 0 4
  • プレーオフ: 武宮正樹○ - ×梶原武雄
第3期(1977-78年)
順位 出場者 / 相手 大竹 武宮 石田 小林 橋本
1 大竹英雄 4 0
2 武宮正樹 × - 3 1
3 石田芳夫 × × - 2 2
4 小林光一 × × × 1 3
5 橋本宇太郎 × × × × - 0 4
第4期(1978-79年)
順位 出場者 / 相手 工藤 坂田 羽根 石田
1 趙治勲 4 0
2 工藤紀夫 × - 3 1
3 坂田栄男 × × - × 1 3
3 羽根泰正 × × × 1 3
3 石田芳夫 × × × - 1 3

昇段規定

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  • 六段以下の棋士が、碁聖挑戦権を獲得した場合、七段に昇段する。
  • 七段の棋士が碁聖位を獲得した場合、八段に昇段する。
  • 八段で、他のタイトルを1期獲得している棋士が碁聖を獲得した場合、九段に昇段する。

2018年、許家元がこの規定により八段に昇段している。

エピソード

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  • 2020年、本棋戦のスポンサーである河北新報の社長の子息で、同社の記者でもある一力遼がタイトルを奪取し、話題となった[9]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b 河北新報新潟日報信濃毎日新聞静岡新聞北國新聞京都新聞山陽新聞中国新聞四国新聞高知新聞熊本日日新聞南日本新聞沖縄タイムス
  2. ^ 日本棋院では37期まで五段以上、関西棋院では31期まで五段以上。

出典

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  1. ^ a b c 囲碁の日本棋院”. 囲碁の日本棋院. 2024年4月27日閲覧。
  2. ^ 第1章 文学作品にみる囲碁”. 「本の万華鏡」第22回「日本の囲碁-白と黒の戦い-」. 2024年4月27日閲覧。
  3. ^ 『囲碁の文化史』108頁。同著に依れば、寛蓮が碁聖と呼ばれたことは一条兼良の『花鳥余情』に書かれている。
  4. ^ 『道知』249頁
  5. ^ 『丈和』245頁
  6. ^ 『秀策』275頁
  7. ^ 中山典之『昭和囲碁風雲録(下)』(岩波書店)
  8. ^ 『囲碁の文化史』188頁
  9. ^ 碁聖のタイトル、河北新報記者が獲得 創業家の一力八段:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年8月29日閲覧。

参考文献

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  • 石田芳雄田村孝雄林裕『秀策』筑摩書房〈日本囲碁体系〉、1976年、275頁。
  • 坂田英男藤三男・林裕『道知』筑摩書房〈日本囲碁体系〉、1975年、249頁。
  • 高川格村上明・林裕『秀栄』筑摩書房〈日本囲碁体系〉、1976年、274頁。
  • 林裕『囲碁百科辞典』金園社、1975年、60頁。
  • 藤沢秀行相場一宏・林裕『丈和』筑摩書房〈日本囲碁体系〉、1976年、245頁。
  • 水口藤雄『囲碁の文化史』日本棋院〈碁スーパーブックス〉、2001年、108、144、160、188頁。

関連項目

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外部リンク

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