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「日本市場で一番のライバルはExcel」……アトラシアンが訴える「ツール」の重要性
同社が提供する「Jira Software」「Bitbucket」「Confluence」などアピール
2020年2月27日 09:00
Atlassianが2月6日、主に企業・組織のリーダーを対象にチームの働き方やイノベーションなどをテーマにしたイベント「Atlassian TEAM TOUR Tokyo」を開催した。
Atlassianは、課題&プロジェクト追跡ソフトウェアのJira Softwareや、ソースコード管理共有プラットフォームのBitbucket、タスク管理ツールのTrelloなどを提供しており、アジャイル開発などのソフトウェア開発の世界で知名度がある会社だ。今回開催されたAtlassian TEAM TOUR Tokyoでは、テック企業に限らない、より広い企業の変革とチームについて語られた。
全ての企業がソフトウェア企業になるために、ツールと実践方法を提供する
オープニングキーノートで登壇した豪Atlassianプレジデントのジェイ・サイモンズ(Jay Simons)氏は、Atlassianのミッションとして「あらゆるチームの可能性を解き放つ」を掲げ、特に「あらゆるチーム」というところを強調した。
まず、サイモンズ氏は企業に共通する傾向として、デジタルトランスフォーメーション(DX)を挙げ、「ビジネスはみなテクノロジーファースト、テクノロジードリブンになっていて、全ての企業がソフトウェア企業になる」と語った。
そこで共通する課題が、「組織をスケールする」「アジャイルなデリバリー」「急速なイノベーション」の3つだという。
この課題に対してAtlassianは、「ツールと実践方法の2つを提供する」とサイモンズ氏は説明した。
「組織をスケールする」においては、可視性・透明性のカルチャーと、コミュニケーション、連携の3つが重要だという。この分野に対するソリューションとして、アジャイルとITSM(ITサービスマネジメント)をサイモンズ氏は挙げた。
「アジャイルなデリバリー」においては、市場投入までの時間、製品の品質、顧客満足度が重要だという。この分野に対するソリューションとしてアジャイル、ITOps、DevOpsをサイモンズ氏は挙げた。
「急速なイノベーション」においては、実験して失敗から学ぶこと、市場での差別化、連携が重要だという。この分野に対するソリューションとして、アジャイルとITSMをサイモンズ氏は挙げた。
プロジェクトのライフサイクルを全てサポート
続いてサイモンズ氏は、現代の複雑なソフトウェア開発のライフサイクルの図を掲げた。この図では、課題発見や計画の「アジャイル」、開発やテストやSREの「DevOps」、問題や変更の「ITSM/ITOPS」に分けられている。さらにサイモンズ氏はそのライフサイクル全体にかかるものとして「CxO(エグゼクティブ)」を置き、「われわれのプロダクトはこのライフサイクルを全てサポートする」と語った。
このうちアジャイルの分野のAtlassianプロダクトとして、Jira Softwareや、Jira Service Desk、Trello、Confluence、BitBucket、Bambooなどをサイモンズ氏は挙げた。
アジャイルの事例としては、LEGOの例を紹介。Minecraftなどのデジタルにディスラプト(破壊)を受けていたのが、大規模アジャイルへ変革し、「例えばスターウォーズの新作が出ると、すぐにLEGOも出るように、非常に早いサイクルの会社になった」とサイモンズ氏は説明した。
また、ANZ銀行(オーストラリア・ニュージーランド銀行)の例も紹介された。創業約180年の企業で、働き方や文化から変革し、「年や月単位から週や日単位へと、5歳の企業のように動くようになった」(サイモンズ氏)。
DevOps分野のプロダクトとしては、Jira SoftwareやJira Service Desk、Confluenceなどをサイモンズ氏は挙げた。事例としてはドミノピザを紹介。「アメリカではテクノロジーファーストの企業と見られている」とサイモンズ氏は説明した。
ITSM/ITOS分野のプロダクトとしては、Jira SoftwareやJira Service Desk、Confluence、Trelloなどをサイモンズ氏は挙げた。事例としては、AppDynamics社を紹介。ITサービスデスクなどにJira Service Deskを用いて、DevOpsでのJira Softwareとの統合やアジャイルなサービス提供を実現したという。
さらに、このライフサイクルを通じたものとして、「チームコラボレーションがチームを最大化する」とサイモンズ氏は語り、TwilioやAudiがAtlassian製品によってコラボレーションを強化した事例を紹介した。
最後に、ツールと対になる実践方法について。
サイモンズ氏は「チームワークは重要」としつつ、「そして、チームワークは簡単ではない。大規模な組織ほど複雑化する」と説明。Atlassianが作成したチームビルディングガイド「Atlassian Team Playbook」を紹介し、「成功のためには企業文化の変革が必須」と語った。
「日本市場で一番のライバルはExcel」
Atlassian TEAM TOUR Tokyoと同日に、報道関係者向けのラウンドテーブルも開催された。日本のアトラシアン株式会社の代表取締役社長であるスチュアート・ハリントン氏は、Atlassianプロダクトについて、「ソフトウェアやゲーム開発などの企業で使われるイメージが強いが、どの業界でもトップ」と説明した。
そして、日本企業が直面している課題として、「いま問題とされているのが、生産性とイノベーションのスピード。Atlassianは企業文化と生産性を上げるためのツールを提供している」と説明。また、「日本はチームが強いカルチャーだ。そこにチームのためのツールを提供することで、壁を取り払ってオープンな企業文化を作る」と語った。
なお、日本市場のポテンシャルについて「うちの一番のライバルはExcel」と発言。いわく「日本では、いまある製品でなんとかしようとする傾向がある」とのことで、つまりプロジェクト管理なども全てExcelでやってしまうことを指すわけだ。その上でハリントン氏は、「それが、生産性を考えるようになってきて、変わってきた」と語った。
豪Atlassianのワーク・フューチャリストであるドミニク・プライス氏は、現代の企業について「自らディスラプト(破壊)しなければ、他社がディスラプトする」と論じた。
例として語ったのが、Netflixと、レンタルビデオチェーンのBlockbusterの競争だ。プライス氏によると、BlockbusterはNetflixより先にストリーミングを開発していたが、従来のビジネスを侵食するという役員の判断により、プロジェクトを中止してしまったという。
また、従来の企業とこれからの企業に求められるものを比較。従来の企業では無駄をなくすなどの「効率性」が重視されたが、これからは「有効性」が重視されるとプライス氏は語った。
複数のツールにまたがるコラボレーションをデモ
ラウンドテーブルでは、Atlassian製品を組み合わせたコラボレーションのデモも、アトラシアン株式会社のソリューションエンジニアである皆川宜宏氏により行われた。
題材は、ウェブサイトの変更。使われたのは、企画段階でのConfluenceと、計画段階でのJira Software、開発段階でのBitbucketだ。
まずはConfluenceについて、皆川氏は「エンタープライズなWiki、またはコラボレーションツール」と説明。実際に、テンプレートを元に共通性のあるフォーマットから議事録のページを作り、メンバーにメンションしたり、ページ内でインラインディスカッションしたりするところも見せた。
さらに、Confluenceから課題管理ソフトウェアのJira Softwareに課題を作成して、リンクした。Jira Softwareでは、カンバンボードに残っている課題タスクが並んで表示され、ドラッグ&ドロップなどで整理できる。
続いてJiraの「ブランチを作成」をクリックして、分散バージョン管理ツールのBitbucketで変更コミットのブランチを作成、プルリクエストとレビューを経てマージされ、BitbucketのCI/CDパイプラインが実行されて反映された。
こうしたソースコードの変更やのパイプラインの実行は、Jira Softwareから分かるようになっている。さらに、Confluenceの課題のリンクにも「完了」と表示された。「Confluenceだけ見ている企画担当者にも分かるようになっている。このように、製品間のコラボレーションにも力を入れている」と皆川氏は説明した。