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電子書籍として販売可能な短編小説を2日間で仕上げる小説創作イベント「NovelJam」、日本独立作家同盟が来年2月に開催
挑戦する作家および作家とタッグを組む編集者を募集中
2016年11月29日 19:06
NPO法人日本独立作家同盟は29日、編集者と作家がタッグを組み、2日間で短編小説を電子書籍として販売可能なEPUBの形にまで仕上げる小説創作イベント「NovelJam」を2017年2月4日・5日に開催することを発表した。参加費は8000円(税込)。
定員は作家が20名、編集者が10名で、2日間の期間中に1人の編集者が2名の作家を担当する。編集者は、商業出版や文芸編集かどうかは問われないが、何らかの経験が必須となる。応募者が多数の場合は、事務局にて選考を実施し、作家と編集者の組み合わせも事務局がカップリングを行う。参加申し込みは、NovelJamのウェブサイトから受け付けている。また、協賛企業も募集している。
日本独立作家同盟理事で、NovelJamのイベントプロジューサーを務める編集者・ジャーナリストの江口晋太郎氏は、作品作りに必要な要件として、制作環境、作家と編集者の二人三脚による作品作り、締め切りの3つを挙げ、「これを網羅してよりよい作品作りの環境として企画したのがNovelJam」と述べた。
作家と編集者の関係は「ともに悩み苦労しながら作品を作るパートナー」と語る江口氏は、NovelJamについて、「事前に仕込むことなく、30時間ほどの短い時間で、制作アイデアから完成までをその場で一から行う短期集中型の作品制作企画」とした。NovelJamのイベント名称は、ジャムセッション(即興演奏)のように、事前の準備なしに、その場で作品を創り上げることに由来している。
江口氏は、30時間で5~6人のチームでプレー可能なゲームを企画から作り上げる「GameJam」や、起業家やエンジニア、プログラマーが50時間程度の短期間で、ウェブサービスやアプリをビジネスモデルから作り上げる「Startup Weekend」を例に、「熱気を帯びて寝ずに作り続ける。そうした作品作りにおける創作意欲の形があるのではないか」とし、「いまあるアイデアとスキルをフルに使って切磋琢磨し合いながら、作品が作られる1から10までの様子がイベントで形になっていく」とした。
イベントのタイムスケジュールは、2月4日9時に会場となる株式会社ブックウォーカー(東京・市ヶ谷駅前)に集合後、開催概要の説明やチーム編成を発表。続いて、2012年に会社勤めの傍ら通勤電車内でiPhoneで執筆し、セルフパブリッシングで発売した電子書籍「Gene Mapper」が話題となり、2014年には第35回日本SF大賞を受賞した作家の藤井太洋氏、「とある魔術の禁書目録」や「ソードアート・オンライン」の担当編集で、元電撃文庫編集長、現在は株式会社ストレートエッジを立ち上げた三木一馬氏によるゲスト講演が行われる。講演では「超実践型作品作りにおけるコツ」が語られるとのこと。
その後、1日目は22時までが執筆作業に割り振られており、翌2月5日には執筆に続いて、EPUB作成講習ワークショップ、作品をEPUB化しての作品提出を経て、作品プレゼンと審査がその場で行われ、その日のうちに表彰式までが行われる。
このため、2日間とはいえ執筆に充てられるのは最大でも約26時間程度となる。提出作品は3000字以上の小説であることが条件で、文字数の上限はなく、ジャンルも問わない。ただし、表紙付きのEPUBファイルとして仕上げることが条件。表紙の制作も編集者が行うことになる。執筆は、1日目の22時に会場がいったん閉まった後、再度会場が開く朝9時までの間にも行って構わないとのことだ。
イベント会場ではWi-Fiが利用できるほか、プリンターやディスプレイが貸し出されるが、執筆環境となるPCは基本的に持ち込みとなる。今回は第1回のイベントとなるため、表紙制作におけるデザイナーとの共同制作などは、次回以降の課題になるという。
イベントで創作される小説作品のテーマは「破」。既存の出版のあり方とは違った、新たな方法を元にタッグを組んで取り組む作品テーマとして、固定概念を打ち破ることを期待して決めたという。「作家や編集者が独自に解釈し、よりよい作品へ昇華されることを期待している」(江口氏)とのこと。
完成した作品は、日本独立作家同盟が発行している「群雛NovelJam」というレーベルで発行される。また、完成した最終稿を除く初稿やラフ案は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいて公開することが前提となる。これは、「作品作りの環境を公開し、後に続く作家に、作品作りのきっかけにしたい」との狙いから。
このイベントについては、「編集者や関係者たちが磨いていけるような、次なる作家の種を見い出す発掘の場」として位置付けられるほか、「個々の作家にとって作品制作の刺激になることを目指している」という。小説執筆というと、作家が主役とのイメージも強いが、「編集者も、どういったサポートができるか、スキルが求められる」とした江口氏は、「参加フォームに参加への熱い思いを書いてほしい」と語った。
審査委員長も務める藤井大洋氏は、「15時間で3000文字は楽にかけるように感じられるかもしれないが、これをクリアするのが今回の最大のハードルと考えている」と述べた。藤井氏自身が、日本SF大会の現場でプロットを引いて設定を考えるところから始め、短編小説を大会会期中に仕上げる「ライブ・ライティング」という企画を行った。このときは、ほぼ24時間書き続けて原稿用紙30枚分(約1万字超)を執筆できたそうだが、「1人で書いていただけなので、完成して販売できる形になったわけではない。ここに編集者を付けるアイデアを聞いて、ならやれる、ただし分量は3000文字程度が現実的」だと考えたという。
この文字数は原稿用紙に直すと8枚分で、小説としてはショートショートのジャンルとなる。藤井氏はショートショートの名手である星新一氏の名を挙げ、「そこから想像すれば、15時間というのが、かなり厳しいものと分かってもらえるのではないか」とした。
作品を最終的にEPUB形式の電子書籍として販売できる形にまで仕上げることも、藤井氏の提案によるものだそうだ。「形になって電子書籍リーダーで見て、初めて分かることがたくさんある。実際に見ると読みにくかったり、会話の流れを変えた方がいいと思うこともある。編集者とそういう判断をしながら、販売できる形にする」とした。表紙についても「小さな作品でも、顔が付くことには、非常に大きな意味がある」と述べ、「作品を手に取りたくなるような表紙のプランを立ててもらえることを期待している」とした。
また、イベントについて「編集者の腕前が問われる部分も非常に多くある」とし、編集者の参加を促した。「リアルタイムに横に人がいて書くことも、目の前に人がいて書かせることも、参加者にとって初めての体験だろうと思う。実際のところ本当に大変だと思うが、こうした無謀な試みに参加していただくことを期待している」と語った。
藤井氏のほかに、ゲスト講演を行う三木一馬氏、ゲーム作家の米光一成氏、作家の海猫沢めろん氏も審査員として参加する予定。