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実践!仮想化ソフトウェア 2009

第2回VMware ESXiを使ってみよう

今回は、無償で利用できるVMware ESXiを使った仮想化環境の構築方法を解説します。

VMware ESXiとは

VMware ESXi(以下ESXi)は、VMware社のハイパーバイザーである「vmkernel」をベースにした仮想マシンの実行環境で、無償で利用できるようになっています。

VMware ESXi 製品情報ページ
URLhttp://www.vmware.com/jp/products/esxi/

無償版ESXiでは、仮想マシンを停止せずに仮想ホストを移動する「VMotion」など便利な機能は利用できませんが、1台の仮想ホスト上でいくつかの仮想マシンを動かすような小規模な用途では十分に活用できます。

VMware社の製品のうち無償で使えるものとしては、実行専用の「VMware Player」や、サーバ用の「VMware Server」がありますが、どちらもWindowsなどの上で動作するホストOS型の仮想化環境です。初めてハイパーバイザー型のVMware製品を使う人が基本的な操作方法などを習得するのに適した製品と言えます。

ESXi 3.5との違い

ESXiは3.5の時から無償化されたため、すでに使ったことがある方も多いのではないでしょうか。vSphere 4へとバージョンアップした後もESXiは無償ですし、機能的にも大きく変わったところはありません。今のところ、ESXi 3.5が安定的に稼働しているのであれば、急いでバージョンアップする必要はないと言ってもいいと思います。

VMware ESXiを実行するハードウェアの準備

VMware ESXiを実行するにあたって、ハードウェアの準備にやや苦労するかもしれません。ESXiではデバイスドライバがvmkernelに組み込まれているため、vmkernel専用のデバイスドライバが必要です。そのため、通常のWindowsやLinuxなどに比べると対応しているハードウェアの種類が限られてくるからです。XenやHyper-VはWindowsやLinuxのデバイスドライバをそのまま利用できるので、幅広いハードウェアに対応できる点と対照的です。ただし、vmkernel組み込みのデバイスドライバは性能等で有利ということとのトレードオフであることは理解しておくべきでしょう。

ドライバの対応で特にひっかかるデバイスは、ネットワークインターフェースとハードディスクコントローラでしょう。

ネットワークインターフェース

ESXiはサーバ用途のため、廉価なネットワークコントローラには対応していません。Intel製ならほぼ動きますが、Broadcom製は型番によるでしょう。廉価製品の定番であるRealtek製(いわゆるカニ)は動作しないでしょう。

きちんとした仮想マシンの実行環境を構築するのであれば、ネットワークインターフェースは複数用意したいところですが、今回のようなお試し環境であれば、1つあれば十分です。

ハードディスクコントローラ

サーバ用のRAIDコントローラなどがあればベストですが、オンボードのSATAコントローラ+SATAのハードディスクはサポートはされているのですが正常に動かない場合があります。ただし、ESXiは後述するようにUSBメモリにインストールでき、ストレージとしてiSCSIやNFSなども使うことができます。ネットワークインターフェースさえ動くのであれば、ストレージはローカルには置かず、ネットワーク経由で利用するようにしてもよいでしょう。

いずれにしろ、VMware社がサポートしているサーバマシンが用意できれば、あまり苦労することはないと思いますが、廉価なサーバマシンや自作マシンの場合には、特にネットワークのコントローラの種類をしっかりとチェックして、場合によってはネットワークカードを増設してみる必要があるでしょう。

USBメモリにインストールする場合

ESXiの特徴として、USBメモリにインストールすることができます。ESXi 3.5の頃は手動でUSBメモリにコピーする必要がありましたが、ESXi 4からはインストーラがUSBメモリへのインストールを標準でサポートしています。

USBメモリは2Gバイトの容量のものがあればインストールに利用できます。うまくインストーラでインストール先として認識されない場合には、BIOSの設定でUSBメモリをどのように扱うかの設定を変更するなどしてみてください。初期化はインストール時に行われますので、事前の初期化は不要です。

VMware ESXiをインストール

以下の手順に従って、ESXiをインストールします。

①インストールイメージの入手

ESXiはVMwareのWebサイトからISOイメージをダウンロードできます。ユーザ登録をするとダウンロードページにアクセスできるようになります。このページに無償版ライセンスのライセンスキーも表示されているので、テキストファイルなどにコピー&ペーストして控えておきましょう。

ダウンロードしたISOイメージは、CD-Rなどに焼いておきます。

②ESXiをインストール

インストールメディアを使って、ESXiをインストールします。サポートされているハードディスクコントローラを使っていれば、インストール先として表示されるはずです。同様にUSBメモリも正しく認識されればインストール先として選択できるはずです。

インストーラの起動には時間がかかりますが、インストール自体は短時間で終了します。インストール完了後、再起動します。

③管理者のパスワードを設定

基本的な設定はすべてコンソールから行えます。管理者のパスワードが設定されていないので、F2キーを押して管理コンソールに切り替え、パスワードを設定します。

④管理ネットワークのIPアドレスを設定

正しくネットワークコントローラが認識されていれば、DHCPでIPアドレスを取得しているはずです。今後の管理のためにも、固定のIPアドレスを設定しておきましょう。

⑤管理クライアントからWebブラウザでESXiに接続

ESXiの管理は、Windowsクライアントから行います。適当なWindowsマシンから、WebブラウザでESXiのIPアドレスに接続します。

初期画面から管理用クライアントソフトウェアである「vSphere Client」をダウンロードし、インストールしてください。インストールはウイザードで行いますが、⁠vSphere Host Update Utility」をインストールする(チェックを入れる)のを忘れないでください。ESXiのパッチなどを適用するのに必要となります。

図1 ESXiのWebアクセスページ
図1 ESXiのWebアクセスページ
⑥vSphere Clientで接続

vSphere Clientを起動し、ESXiに接続します。ユーザ名は「root⁠⁠、パスワードは設定した管理者用のパスワードです。通信はSSLで行われているので、サーバ証明書が送られてきます。とりあえず無視してもいいですし、取り込んでおけば次回からは警告されません。

初期画面は「インベントリ⁠⁠、⁠ロール」「システム ログ」のアイコンが表示されていますが、インベントリを選択します。

⑦ライセンスの適用

初期状態では、60日間の評価モードになっています。評価モード中はすべてのオプションを試すことができるようになっているので、別途「vCenter Server」を用意すれば、様々な機能を試すことができます。今回は特に評価は必要ありませんので、ISOイメージをダウンロードする際に入手したライセンスキーを適用します。

上部の「構成」タブをクリックし、⁠ソフトウェア⁠⁠→⁠ライセンス機能」を選択します。右ペインの右上にある「編集...」というリンクをクリックすると、別ウインドウが表示されてライセンスキーを適用できます。

⑧時間の設定

仮想ホストの時間を設定します。できればNTPサーバを使用して時刻合わせをするようにしましょう。 ⁠構成」タブから「ソフトウェア⁠⁠→⁠時間の構成」で設定できます。独自のNTPサーバを持っていないのであれば、ntp.nict.jpなどの公開NTPサーバを設定しておきます。

⑨ストレージの追加

USBメモリを使用した場合、仮想マシンを格納するためのストレージを構成する必要があります。ESXiでは以下のストレージが利用できます。

  • ローカルハードディスク
  • FC SAN
  • iSCSI
  • NFS

ストレージはNFSを除き「VMFS3」という形式で初期化されます。

ストレージの追加は、⁠構成」タブから「ハードウェア⁠⁠→⁠ストレージ」を選択し、右ペイン右上の「ストレージの追加...」をクリックします。ローカルハードディスク、FC SAN、iSCSIはストレージタイプを「ディスク/LUN」に、NFSは「ネットワークファイルシステム」に設定します。

FC SANやiSCSIの利用

FC SANやiSCSIを利用する場合には、事前にFC HBAやiSCSIイニシエータの設定を適切に行っておく必要があります。設定方法は別途マニュアルが提供されているので、そちらを参照してください。

iSCSIは、ソフトウェアイニシエータ(ESXiでは「iSCSIソフトウェアアダプタ」と呼びます)がサポートされています。設定は「構成タブ」から「ハードウェア⁠⁠→⁠ストレージアダプタ」を選択します。

仮想マシンの作成

ESXiが動き始めたら、仮想マシンを作成して動かしてみましょう。

①ゲストOSのインストールメディアを準備

仮想マシンにインストールするゲストOSのためのインストールメディアを準備します。ESXiでは、以下の選択肢があります。

  • a)管理クライアントの物理ドライブを利用する
  • b)仮想ホストの物理ドライブを利用する
  • c)ストレージ上のISOイメージを利用する

a)は、ゲストOSのインストールにはあまり向いていません。なぜなら、仮想マシンを起動した後に、管理クライアントの物理ドライブを仮想マシンに接続する作業を手動で行わなければならないのですが、作業が終わる前に仮想マシンは起動してしまい間に合いません。

b)は、今回のようなお試し環境であれば比較的容易な方法ですが、リモートサーバを管理するような場合には現実的ではありません。

c)は、継続的に仮想化環境を利用するのであれば設定をしておく必要があるでしょう。構成したストレージ上にISOイメージ用のフォルダを作成し、クライアントからISOイメージをアップロードしておきます。作業はデータストアブラウザを使って行います。

データストアブラウザは「構成」タブ、または「サマリ」タブでストレージを選択して右クリックし、⁠データストアの参照...」を選択します。

図2 データストアブラウザ画面
図2 データストアブラウザ画面
②仮想マシンの作成

「新規仮想マシンの作成」ウイザードで仮想マシンの作成を行います。作成ウイザードは「標準」「カスタム」が選択できますが、カスタム構成を使うのに慣れておいた方がよいでしょう。

構成は指示に従って簡単に行えますが、注意すべき点に触れておきます。

仮想マシンの形式

VMwareの仮想マシンにはバージョンがあり、バージョン間の互換性はありませんが、上位バージョンへの変換はサポートされています。ESXi 4ではバージョン4とバージョン7が選択できますが、特に古い環境での再利用を考えなければ、新しいバージョンを選択しておけばよいでしょう。

仮想プロセッサ数

基本的に1にしておきます。後から変更することもできるので、処理能力が足りないような場合には仮想プロセッサ数を増加させます。

SCSIコントローラ

選択したOSの種類に合わせて適切なものが選択されているので、変更する必要はありません。

新規仮想ディスクの作成
仮想ディスクを新規に作成する場合、必要となる容量を設定してください。必要となった分だけ消費する「シンプロビジョニング」も設定できますので、ファイルサーバやデータベースサーバのように頻繁にデータの書き換えが行われないシステムの場合には選択してもよいでしょう。
図3 新規仮想ディスクの作成画面
図3 新規仮想ディスクの作成画面
③インストールメディアの設定

作成直後の仮想CD/DVDドライブの設定は、⁠クライアントデバイス」を使用するように設定されています。準備したインストールメディアに従って、⁠ホストデバイス⁠⁠、または「データストアISOファイル」を指定します。⁠パワーオン時に接続」にチェックを入れるのも忘れないでください。

設定は、作成した仮想マシンの「サマリ」タブから、⁠コマンド⁠⁠→⁠設定の編集」をクリックします。

④VMware Toolsのインストール

ゲストOSのインストールが終わったら、VMware Toolsのインストールを行います。仮想マシンを起動した状態で、インベントリで対象となる仮想マシンを選択し、右クリックで「ゲスト⁠⁠→⁠VMware Toolsのインストール/アップグレード」を選択します。

図4 VMware Toolsのインストール
図4 VMware Toolsのインストール

仮想マシンの仮想CD/DVDドライブに、使用しているOSの種類に合わせたVMware ToolsのインストールISOイメージがマウントされます。Windowsの場合にはAutoRunによりインストーラが自動起動します。Linuxの場合には、tarballが入っているので、適当なディレクトリに展開し、インストーラを起動してください。

Linux用VMware Toolsのインストール時に、ビルド済みカーネルモジュールが使用しているカーネルと適合しない場合、再ビルドが必要になります。再ビルドにはカーネルのヘッダファイルやコンパイラ一式が必要になるので、あらかじめ「開発ツール」などのパッケージをインストールしておくとよいでしょう。

まとめ

VMware ESXiの使用方法を解説してきましたが、ハードウェアの選択やゲストOSインストールメディアの準備などにやや癖があるものの、長く使われてきたこともあってよくこなれた製品となっています。仮想マシンを活用するにあたっては、まず基本の習得としてESXiを使ってみてはいかがでしょうか。

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