浜田宏一(イェール大学教授)×安倍晋三(自民党総裁)「官邸で感じた日銀、財務省への疑問。経済成長なしに財政再建などありえない」
安倍: 今度、山本幸三氏が、この震災復興に対する予算を増税で賄うのは間違いではないか、と私のところに説明にきました。現下の最大の問題はデフレであり、このデフレから脱却するべきだという。
私は最初に申し上げたように、この問題をずっと専門家としてやってきたわけではないので、会長をやるというつもりはなかったんです。しかし、民主党政権がデフレ容認、金融政策軽視の傾向が強いので、それだったら私もいっちょうやってやろうかということになったのです。
デフレ下の増税は間違っている
浜田: 僕は世界に通ずる普通の、標準的な経済学を信じています。そこでは貨幣も重要だし、モノ(実体)も重要だし、その両方を含んだ体系が必要です。しかし、不況や株価下落の原因は実体が悪いからだと、一方しか見ない人たちが多い。
最近は少し孤軍でもなくなりましたが、どちらかと言えば、少数派で、貨幣面も重要だと頑張ってきました。今回、先生のように経験も、それから将来の日本全体を担うのを国民から託されている方に共感していただくと、非常に心強く思います。
安倍: 景気はまだまだ厳しいでしょう。これから財政出動しますが、デフレ下で増税をするので、景気を冷やしていく危険性もある。よりデフレが進んでいく危険性もあるでしょう。これは明らかに間違っています。
世論調査で5割が増税を支持するというのはね、不思議なことですよ。これではもう、この機会は絶対に逃したくないと財務省は思ってしまう。
浜田: 財務省の人には悪いけれども、地震があったからみんな支持してくれると、天災を増税の口実にしているかたちです。
安倍: これを機に財務省は増税を進めようとする。しかも日経新聞や、かなりの経済学者もそれを支持している。われわれは相当頑張らないと飲み込まれてしまって、結局財政赤字はさらに悪化していく危険性すらある。税収はそんなに伸びないどころか、ダウンするかもしれません。
浜田: そうですね。橋本龍太郎先生が総理だった時もまったく同じです。
安倍: あのときも増税で、景気が底割れしました。
浜田: 結局、景気が悪くなり、税収も減収した。法人税、個人所得税まで減収していくという状態でした。
それにしても政治家のがみなさんが、先生のように理解してくだされば日本もずいぶん良くなるんですが。