河村名古屋市長の発言で緊張する日中関係をよそにハリウッドスターを使った南京大虐殺映画で進む「米中ビジネス」
張芸謀(ジャン・イーモウ)監督〔PHOTO〕gettyimages
1937年12月、日本軍による南京占領のさなか、一人のアメリカ人男性と、教会に逃れてきた中国人女性たちが助け合って、南京から決死の脱出を図る---そんなストーリーの映画『金陵十三钗』が、昨年末から1月の旧正月にかけて、中国全土で最大のヒット作となった。この異色の戦争映画を監督したのは、日本人にもお馴染みの張芸謀(ジャン・イーモウ)である。
私が観た映画館は、300席ほどある大スクリーンだったが、ほとんどは中国人の若いカップルだった。彼らは手を取り合って、時におののきの声を挙げながら、日本軍による中国人女学生への集団レイプシーンや、射殺、刺殺シーンなどを見入っていた。
私は、観終わって映画館を出るなり、まるで大量のバリウムでも呑み込んだかのような、重だるい気分に陥った。あれから75年も経つというのに、この国の人の「歴史」に対する「臨場感」はどうだろう。「歴史」でもなく「過去」でもなく、いまそこにある「現実」として、「悪の日本」を突きつけてくるのだ。
社長の口から飛び出した「南京の二の舞にならないからな」
テレビでも相も変わらず、「鬼子」(日本軍人の蔑称)が出てくるドラマがとぎれることがない。テレビの方は製作費節約のため、「鬼子」に扮した中国人役者が意味不明の日本語を発するので、余計胸苦しくなってくる。
このような環境に暮らす中国人は、当然ながらその意識下に、「日本=悪」という先入観を植え付けられている。
1月下旬のある日、ある中国側との商談が行き詰まった際、中国側の社長は次第に激昂していき、われわれ(日本側)に向かって捨て台詞を吐いた。
「オレたちは1937年の南京の二の舞には決してならないからな!」。