TSMCの不確定要素
世界最大の半導体の受託製造(ファウンドリー)である、台湾積体電路製造(TSMC)が1月16日、2024年12月期の決算を発表した。
売上高は前年比33.9%増の2兆8943億台湾ドル(約13兆7000億円)、純利益は同39.9%増の1兆1732億台湾ドル(約5兆5500億円)。売上高・純利益ともに過去最高を更新した。
前回記事〈なぜ半導体大国だった日本に“化け物”は生まれなかったのか…利益5兆円超のTSMCとの「経営センスの差」〉では、その背景を詳しく解説している。
一方、視点を伸ばして中長期的に見ると、強力なライバルの出現など不確定要素は増えるだろう。
台湾では、水、人材、電力の供給制約が発生した。中国による台湾への圧力も不安材料だ。今すぐではないにせよ、トランプ米大統領の関税政策等でエヌビディアの成長への懸念が出ることも考えられる。その場合には、TSMCの先行きの業績不透明感が高まる恐れもある。
TSMCは、リスク分散、生産ライン拡大のためわが国を重視している。米国のIT先端企業も対日事業の強化に動き始めた。
当面、世界の先端半導体供給はTSMCに依存するが、それが未来永劫続くとは考えにくい。また、わが国には、TSMCが必要とする関連の部材メーカーが多く存在している。そうした環境を考えると、わが国の半導体産業の復活も決してあり得ない話ではない。