国連が日本に対し、夫婦別姓の導入を勧告
いずれも27日投開票となった9月の自民党総裁選、10月の衆院選を経て、政治は新たな領域に突入し、これまでとは異なった景色を生み出しつつある。衆院選では、自民党の裏金問題をはじめとした「政治改革」のほか、経済政策、外交・安全保障など、幅広いテーマで論戦が交わされた。そうした中、自民党総裁選に続き、選択的夫婦別姓の導入が各党の公約に盛り込まれ、争点の一つとして取り上げられたのは、特筆に値するだろう。一方、衆院選と同時進行で、スイス・ジュネーブでは、その夫婦別姓を巡る「戦い」が展開されていた。
国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は10月29日、日本政府に対し、勧告を行った。選択的夫婦別姓を導入するよう明確に求める勧告を下したほか、夫婦別姓を含む4項目について、事後経過を報告するよう要求したのだ。
同委員会は、女性差別撤廃条約への対応状況を審査する機関で、23カ国の専門家で構成されている。ジュネーブで先月17日に行われた対面審査に出席した日本政府代表団は「国内にはさまざまな意見があり、幅広く国民の理解を得るのが必要だ」などと一般論に終始。パスポートなどでは旧姓併記を適用しているとも弁明、策は取っているとした。
委員会側は、こうした政府の主張を「何の行動も取っていない」として、日本政府の無作為だと判断した。政府側のみならず、同時に実施した日本のNGOメンバーからの実態ヒアリングも踏まえて、強めの勧告に傾いたとみられる。
現地でのヒアリングに参加した、選択的夫婦別姓制度の導入を求める一般社団法人「あすには」の井田奈穂代表理事は、筆者の取材に対して「4度目の勧告となり、満額回答だ」と評価。その上で、「2年以内に報告が確実になされるよう、行政、立法、司法、社会全般に対する働き掛けを強めるのが必要だ」と述べ、年明けの通常国会で民法改正を実現したいとの考えを示す。