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2022.08.05

なぜ「経済的に恵まれない人」が「新自由主義を支持する」のか? 社会心理学が明らかにしたこと

自分にとって抑圧的な環境、不都合な状況なはずなのに、なぜかそこに適応してしまう。こうした態度を「自発的隷従」と呼ぶことがある。こうした自発的隷従のような態度について、社会心理学の見地から分析した、ジョン・ジョスト『システム正当化理論』(ちとせプレス)が刊行された。訳者の一人である東洋大学教授の北村英哉氏がその読みどころを解説する。

 

なぜ政権党は勝ち続けるのか?

まさに今の時代に合っている。ジョン・ジョストが提唱する「システム正当化理論」、そんな風に考えた。この理論は、「なぜだか現状維持に走ってしまう人々」の生の現実的な姿をつかむことに長けている。

システム正当化理論は、社会心理学の理論である。これまでの社会心理学の理論では、多くの場合、人々は自分自身が属する内集団を好み、自集団の有利を期待し、その利得に合致する方向で行動するものだとされていた。しかし、システム正当化理論は、こうした従来の理論とは反対に、自分の利得にならない行動をする人々について、うまく説明することができるのである。

現在、そうした「自分の利得にならない行動」が目立っているように見える。たとえば、日本の場合、おおまかに語れば自民党などの政権党は、経営者や大企業などのすでに日本社会の中で、有利な地位を得ている人たちの利益代表であり、「金持ち」「貧しい」という二分法で言えば、明らかに富む者のための政策を行う集団である。

したがって合理的には、社会階層の高い者たちが自民党を支持し、社会階層が低い者たちは野党を支持するはずである。そして、階層の高い者、豊かな者は社会全体から見れば少数であるから、大多数のお金持ちではない庶民は野党を支持しないと原理的にはおかしいということになる。

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