CMを取り下げる際、報道ステーションのTwitterアカウントでは「今回のWeb CMは、幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図で制作しました」「ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした」と書かれていた。
「議論を超えて実践していく時代にある」という考えは、ほぼ正確に視聴者に読み取ってもらえていたと考えられる。それにもかかわらず、批判は殺到したのである。
その背景には何があるのだろうか?
社会の全体を見ていない
まずは、CM(30秒バージョン)の内容を振り返ってみたい。「これは報道ステーションのCMです」というテロップにつづいて、仕事帰りの若い女性がモニター画面に向かって話しかける(もしくは鏡の前でひとりごちているようにも見える)。
「リモートに慣れちゃってたらさ、ひさびさに会社行くと変な感じしちゃった」——この台詞から、彼女は働く女性であり、リモートワークを取り入れることのできる、それなりの大企業、もしくは頭脳労働を担う総合職である可能性が高いことを視聴者は示唆される。
「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって」という台詞からも、彼女の勤め先はそれなりの企業であり、子供を産んだ女性への福利厚生が行き届いているようであることが読み取れる。
そこから、もっとも問題となった「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」という台詞が続く。彼女の職場の恵まれた環境からすれば、その通りなのだろう。