この国にアップルやグーグルが生まれない、ひとつの理由
GDPに占める研究費の割合は世界一なのに…ポジティブな言葉が満載の報告書
<日本のGDPに占める研究費の割合は、2014年度に前年度比で0.12ポイント上昇の3.9%と、ドイツを抑えてG7でトップの座を死守した。財政再建で公的機関の研究費削減が続く中、この快挙の原動力になったのは、同じく7.0%も研究費を増やした民間企業だった>――。
こんな華々しい日本企業の奮闘ぶりを明らかにしたのが、総務省が昨年末(12月15日)公表した「科学技術研究調査」だ。同調査によると、産業別のトップは輸送用機械器具製造業、2位が情報通信機械器具製造業、3位が医薬品製造業だった。
国や企業にとって、イノベーションを先取りして競争力を維持することは、グローバル化が進む世界で生き残るために不可欠だ。そのために、積極的に研究開発に取り組むのは大切なこと。それだけに、「科学技術研究調査」を読むと、経営者たちの果敢な挑戦に思わず拍手をおくりたくなるところだ。
一方で、先行投資を長年続けている割に見事な花を咲かせたという話がなかなか聞かれないのは気になるところだ。貴重なおカネは、研究費の名に相応しい意味のある研究に使われているのだろうか。
「科学技術研究調査」には、ポジティブな文言が満載だ。
研究費の総額は、2014年度に前年度比4.6%増と2年連続で増加し、過去最高の18兆9713億円に達したという。GDPに占める割合を国際比較すると3.9%で、韓国(2013年度、4.2%)には及ばないものの、先進7か国(G7)ではドイツ(同、2.9%)を抑えてトップの座を守った。台頭目覚ましい中国(同、2.1%)やロシア(同、1.1%)も上回ったという。
ちなみに、これまで日本の研究費のGDP比はリーマンショックのあった2008年度の3.8%が最大だったが、今回はこれを6年ぶりに更新した。グラフ「研究費と対GDP比率の推移」(総務省)にある通りである。
躍進を支えたのは、13兆5864億円(前年度比7.0%増)を計上した民間企業だ。1兆6888億円(同3.1%減)の非営利団体・公的機関と3兆6962億円(同0.1%減)の大学の低迷を補ったという。