屈辱の緊縮財政に終止符を打つ!? ドイツの冷徹な"統治"に反旗を翻すギリシャ新政権にEUは大揉めの予感
ドイツにとって最悪のシナリオで動き始めたEU
1月25日、運命のギリシャ総選挙が終わり、EUはますます混乱してきた。
ギリシャ国民は、「屈辱は終わった」「我々は歴史を書き換えた」と狂喜している。選挙前の報道では、Syrizaが勝っても連立相手が決まらず、再選挙になるかもしれないなどといっていたが、なんの、なんの! アレクシス・ツィプラス党首はすぐさま連立のパートナーを見つけ、選挙の翌日には首相に任命され、その翌日には超特急で組閣まで終えた。
Syrizaは急進左派なのに、連立相手のANELは右派だ。党首はパノス・カンメノス。傍から見れば、右派と左派だが、言っていることは似ている。ANELもSyrizaと同じく、EUから押し付けられた緊縮財政に大反対し、外国の金融機関がギリシャの財政を管理している状態を指して、"占領下"と称していた。つまり、これからギリシャの勇ましい連立与党は、自国を占領軍から解放するつもりなのだ。
そしてEUは、これら一連の動きを、「まさか・・・」という思いで、呆然として見つめている。EUは、少なくともドイツにとって、最悪のシナリオで動き始めた。
IMFとEUが、ギリシャに最初の援助730億ユーロを与えたのは2010年春だった。このうちドイツの負担分が152億ユーロ。そのうえ2012年には、ギリシャが外国の銀行などから受けていた融資の半分以上が返済免除となった。これが総額1,000億ユーロだ。この措置で、ギリシャの国債を持ちすぎていたドイツの銀行が倒産し、その救済にドイツ国民の税金が使われた。
その後、2012年から現在にかけて、ギリシャへの2度目の援助として、再び1,530億ユーロという膨大な額が注ぎ込まれている。EUの大国ドイツの負担分は常にいちばん多く、3割近くを占める。
その代わり、出資者であるEUとIMFと欧州中央銀行は、ギリシャの財政再建のため、与えたお金の使い道を厳しく監視してきた。ドイツにしてみても、貸したお金が戻って来ないとなると、再び国民の税金が失われることになるから当然の措置だ。