コロナが世界を蹂躙して経済が停滞しオリンピックどころではなくなっているが、コロナ前から先進国で最も凋落が著しかったのがホスト国である我らが日本で、コロナ禍も加わって“斜陽”が止まらなくなっている。
家計調査を見ても、財務省の平均給与と国民負担率を見ても落ちるところまで落ちた感があるが、インバウンドも期待できないのに無理してオリンピックを開催したら一段と貧しくなってしまうのではないか。いったい誰が日本をここまで貧しくしてしまったのだろうか。流通ストラテジストで『アパレルの終焉と再生』の著者、小島健輔氏が「本当の理由」を解説する――。
家計消費支出に見る「日本人の貧困化」
総務省家計調査(二人以上世帯)の20年平均消費支出が前年から5.3%も減少し、「被覆及び履物」支出は18.9%、「教養娯楽」支出は同18.6%も減少したが、コロナ禍ばかりが要因ではなく、その前から日本は貧しくなっていた。
2000年と比べれば家計消費の平均消費支出は87.6%に減少し、「被覆及び履物」支出は54.5%に、うち「アパレル」(洋服・シャツ・セーター)支出は54.3%に激減したのだから、アパレル業界が破綻の瀬戸際に追い詰められたのも致し方あるまい。
家計消費支出に占める「アパレル」の比率は3.00%から1.86%まで低下し、この間に2.14%から2.69%に伸びた「ビューティ」(理美容用品・サービス)支出に追い抜かれている。2020年も「ビューティ」支出は4.2%しか落ちておらず比率は僅かに上昇したが、これは家計調査が日本国民を対象としたもので外国人世帯も来日観光客も含まれていないからだ。
他に増えたのは「保険医療」支出(実額は25.2%増、シェアは3.58%から5.11%へ)、「通信」支出(実額は41.6%増、シェアは3.00%から4.85%へ)で、エンゲル係数(「食料」支出)が23.3%からコロナ前の19年で25.7%、20年は巣籠もり消費で27.5%に跳ね上がったのは生計の窮乏を実感させる。
「教育」が実額で26.1%減少し、シェアも4.39%から3.70%に落ちたことも貧困化を象徴しているのではないか。