会社の利益は増えても「日本人の給料」が20年間増えなかった「本当の理由」
儲けたおカネはどこへ消えた?取材・文/木村博美
企業の利益は増えているのに……
藤井 まずは次のグラフをご覧下さい。これは、日本国内の法人企業(資本金10億円以上)の「利益」(経常利益)と「給与」(決まって支給する給与)、それから「株主配当金」の平均値の推移を示しています。
いずれも、1997年を100に基準化したものです。これを見ると、私たちの給与は、この20年間、全く増えてないことがわかりますよね。
――ホントですね! ずーっと横ばいで全然増えてない……。
藤井 そうです。それなのに会社の「利益」は、増減しながらも、2.5倍くらいの水準に増えてきている。
――確かに。ということは……。
藤井 会社はどんどん儲けを増やしてきてるのに、それを社員の給料に全然回してなかったということです。このグラフは平均のグラフですから、社員を冷遇する会社だけというわけでなく、平均的な会社はみなそうしていた、ということです。
じゃあ、その儲けたおカネがどこに行ってるのかというと、このグラフから、「株主」に回されていたっていうことがハッキリとわかります。このグラフに記載のように、「株主配当」は、この20年で、5倍以上に膨れ上がっているんです。
――えーっ、それはひどい!
藤井 そうなんです。株主配当金っていうのは、株式会社の株を持っている「株主」に配当されるおカネです。
そもそも株式会社っていうのは、株主におカネを出してもらって(出資してもらって)、そのおカネを元手にビジネスを展開して、利益が出たら最初におカネを出してもらっていた株主にその利益の一部を「配当」する、っていう仕組みになっています。で、株主は、その「配当金」が欲しいという動機で株を買うわけです。
一般にそんな株主は、「資本家」と呼ばれるたくさんおカネを持ったお金持ちの方々とか、投機をビジネスにしている金融機関とかです。だから配当金を受け取るのはおおよその場合、大金持ちの資本家・大企業のみなさんだという構図があるわけです。