インタビュー

「SEGA AGES コラムスII」インタビュー

幻のステージが蘇った!? 超高難易度の落ち物パズルが「ドクロカット」と「ステージセレクト」でより遊びやすくなって新登場!

【SEGA AGES コラムスII】

8月8日配信開始

価格:925円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。Nintendo Switch用ソフトとして配信するシリーズ第11弾に選ばれたのは、パズルゲームの「SEGA AGES コラムスII」(以下、「コラムスII」)だ。

 「コラムスII」は、画面上部から落下してくる宝石を動かし、タテ・ヨコ・ナナメに同じ種類の宝石を3つ以上並べて消していくのが基本ルールとなる、1990年に発売されたアーケード用パズルゲーム「コラムス」のシリーズ第2弾。特定の宝石を消すとステージクリアとなる「フラッシュコラムス」と、連鎖を狙って相手のフィールドを押し上げ、手詰まり(宝石が画面上部をはみ出したまま残った状態)にすると勝利となる2人対戦モード、「対戦コラムス」の2種類が遊べるのが特徴だ。

【SEGA AGES コラムスII】
「SEGA AGES コラムスII」ゲーム画面

 間もなく配信開始となるNintendo Switch版では新たにネットワーク対戦にも対応し、初代「コラムス」が遊べる「コラムスI」(※メガドライブ版「コラムス」のカスタムバージョンを移植)モードや、ステージクリア達成度をチェックできる「宝石箱」など、今作にもさまざまな新機能やゲームモードが搭載されているとのこと。そこで、本作の全貌を明らかにすべく、またまた今回もGAME Watchでは配信に先駆けて、恒例の開発スタッフインタビューを敢行した。本邦初公開となる、「SEGA AGES」の隠れた楽しみ方を指南するオマケネタも掲載しているので、ぜひ最後までご一読を!

【インタビュイーのみなさん】
左から順に、セガゲームスの下村一誠氏、エムツーの堀井直樹氏、セガゲームスの小玉理恵子氏と奥成洋輔氏(セガサミーホールディングスの社員食堂にて撮影)

落ち物パズルゲームの原点「コラムス」を、より完成させた形で配信

――本日もよろしくお願いいたします。今回の配信タイトルは、いわゆる落ち物パズルゲームの「コラムスII」となりました。まずは本作の配信を決めたきっかけからお尋ねしたいのですが、そもそもなぜシリーズ第1弾の「コラムス」を飛ばして「コラムスII」を選んだのでしょうか?

下村氏: セガにはいろいろなパズルゲームがありますので、このシリーズでもラインナップとしてパズルゲームはやはり重きを置きたいということで、まず最初に「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」を候補に入れました。これは私の個人的な見解も含みますが、落ち物パズルと言えば「テトリス」という超名作がありますが、連鎖という切り口での面白さを初めて打ち出したのが「コラムス」ではないかと思っています。その歴史的な意義を示す意味でも、やはり「コラムス」もラインナップに加える必要があるだろうと思いました。

 元祖「コラムス」は、「セガ3D復刻アーカイブス3」ですでに出しましたので、今回は順番的に「コラムスII」にしようと。「コラムス」自体は淡白と言いますか、かなりシンプルに楽しむ内容のゲームですので、「コラムスII」で遊べる「フラッシュコラムス」や「対戦コラムス」を、みなさんに楽しんでいただきたいということも、選んだ理由のひとつですね。

――確かに、パズルゲームにおける連鎖の面白さ、爽快感を世に知らしめたのが「コラムス」でしたよね。ところで、今までに「コラムスII」が家庭用へと移植されたのは、セガサターン版の「SEGA AGES コラムスアーケードコレクション」が唯一のタイトルですよね? これ以外に移植版が発売されなかったのは、何か技術的な問題などの理由があったからでしょうか?

下村氏: 「コラムスII」は、そのまま遊んでもらうにはちょっと難し過ぎたのではないかと思います。

奥成氏: まずは「コラムス」が出るまでの流れをお話しますと、初代「コラムス」が最初にアーケードゲームとして登場したのは1990年で、 「コラムスII」も同じ年に出ています(※1) 。「コラムス」は、アーケードでセガが出した「テトリス」が大ヒットした流れを受けて、これに続くパズルゲームを、ということで開発したものなんですね。その後、「テトリス」のアレンジで、 「フラッシュポイント」や「ブロクシード」(※2) というパズルゲームも出していますが、これらのタイトルとはまた違った、新機軸のものを作ろうということで生まれたのが「コラムス」だったんです。

 家庭用のほうでは、ちょうどこのタイミングで任天堂さんがゲームボーイで対戦ができる「テトリス」を発売しましたので、「対戦があったほうがいいよね」という風潮みたいなものがありましたから、「じゃあ、それなら『コラムス』でも対戦できたほうがいいよね」ということで、メガドライブ版ですでに作ってあったVSモードを原型としたものが「対戦コラムス」であると。つまり、メガドライブ版は「コラムス1.5」みたいな位置付けで、その追加モードをアーケード向けにハッキリわかりやすく作ったものが「コラムスII」なんですね。

 そのため、マイナーチェンジ的な「コラムスII」は、メガドライブでは移植されませんでした。さらにセガは、1992年にアーケードとメガドライブ向けに「ぷよぷよ」を出しまして、そこで生まれたCPU対戦の要素を加えて出来上がったのが 「コラムスIII」(※3) でした。「コラムスIII」は、マルチタップを使うことで5人対戦を実現させるなど、「コラムスII」からさらに進化していました。こうしてどんどん変化、進化が続いた結果、変化や進化の過程にあった「コラムスII」が移植されるチャンスが少なくなってしまったのではないかと思います。

※1……「コラムスII」も同じ年に出ています: 初代「コラムス」の発売は1990年6月で、「コラムスII」はそのわずか3カ月後の9月に発売された。なお、アーケード版の「テトリス」が発売されたのは1988年12月。

※2……「フラッシュポイント」や「ブロクシード」: 「フラッシュポイント」は、特定の光るブロックを消すとステージクリアとなり、「ブロクシード」は画面下部が一定時間経過するごとにせり上がってくるシステムを導入した、2人対戦プレイもできる落ち物パズルゲーム。どちらも「テトリス」と同様、落下してくるブロックを操作して、積んだブロックが横方向に1列そろうと消えるようになっている。前者は1989年、後者は1990年に発売された。

※3……「コラムスIII」: メガドライブ用ソフトとして、1993年に発売されたシリーズ第3弾。5人同時、2対2などのさまざまな対戦形式でプレイ可能で、消すと対戦相手を妨害するさまざまな効果が発生する、「毒ブロック」などのアイデアが盛り込まれていた。

――ナルホド、アーケードと家庭用とをまたいで、シリーズが進化した過程がいろいろとあったんですね。

奥成氏: 「コラムス」も「コラムスII」も元々はアーケードゲームですので、「テトリス」もそうですが単体でそれぞれの作品を見ますと、どれも要素が非常にシンプルなんですね。「コラムスII」ではステージクリア方式になりましたが、同じ宝石を並べて消すという基本ルールは同じですから、どうしても同じように見えてしまうんです。

 ですから、家庭用を出す時にはメガドライブ版の「フラッシュコラムス」モードのように、1人でずっとできる「詰めコラムス」的なものや、2人で対戦できるような新しい遊びを入れたんですね。今回も同様に、ベースはシンプルな「II」だけど初代「コラムス」も遊べる、「コラムスI」がゲームモードとして入っているということも含めて、1本の「コラムス」を遊ぶソフトとして、ある程度完成させた形で出したいなという思いがありました。

セガゲームスの下村一誠氏。今回も多忙なスケジュールの合間をぬって、時間の許す限りご参加いただいた

――シンプルなゲーム内容ゆえ、プレーヤー目線で見た新しさや面白さを生み出す難しさがあったんですね。では、「SEGA AGES」の配信タイトルを決める段階で、初代「コラムス」と「コラムスII」をセット出そうという構想は最初からあったのでしょうか?

奥成氏: 最初の段階では、両方とも出そうというお話はエムツーさんにしていなかったですね。初めに、エムツーの松岡(毅氏)さんから受けた提案は、初代「コラムス」だけだったと思います。

堀井氏: ええ、最初は「コラムス」だけでしたね。

奥成氏: 「セガ3D復刻アーカイブス3」で「コラムス」も「ぷよぷよ通」も作りましたので、「『コラムス』もNintendo Switchでやりましょう」と。3DS版の時はアーケード版ではなく、メガドライブ版の「コラムス」を移植してほしいと私のほうからお願いをしました。 この辺りの経緯(※4) は、以前にGAME Watchさんのインタビューでもお話をさせていただいたかと思います。松岡さんのほうでは、今回また同じことを言われるだろうなという読みがありまして、「メガドライブ版の『コラムス』で」と提案を受けたのですが、「いいえ、メガドライブ版はもう出しましたから、今回はアーケード版の『II』でいきましょう」とお願いしました。「『コラムスII』は、今までに作ったことがないからたいへんだなあ……」って、エムツーのみなさんはきっと思われたことでしょうね。

※4……この辺りの経緯: 2016年に掲載した、「『セガ 3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE』インタビュー」の記事のこと。ご興味のある方は、ぜひこちらもご一読を。

堀井氏: はい。まさに、たいへんなことになったなあと思いましたね(苦笑)。

開発を担当した、エムツーの堀井直樹氏

奥成氏: 今回の「SEGA AGES」では、 Cボード(※5) を使用したアーケード版のタイトルをいろいろ移植して出していますので、今回Cボードを極めるという意味でも、「コラムスII」はあったほうがいいだろうと。ただ、ひとつだけ問題がありまして、「コラムスII」は、初代「コラムス」のように面クリア型ではないコラムスのモードがないため遊べないんです。普通に「コラムス」が遊びたいという人もいるでしょうということで、エムツーさんが考えたのが、今回の新モードである「無限コラムス」です。ところが、私はそのモードを作るという話を最初は知らされていなかったので、同じ理由で「『コラムスI』も入っていたほうがいいのでは?」とエムツーさんに提案をしたんですよ。「今回はオマケなので、アーケード版の『コラムス』でもいいですよ」と。

 すると松岡さんから、「それなら、むしろ『龍が如く0』の時に作った、メガドライブ版をカスタマイズした『コラムス』がありますので、そっちにしましょう」というお話がありました。これは PSVita 版「龍が如く0 基本無料アプリ」の「有料 DLC パック」に、『コラムス』を移植する際に新たに作ったものなんですけど、BGMもゲーム開始時に3種類から選べたりする、アーケード版よりも完成された『コラムス』でしたので、「じゃあ、それにしましょう」ということで、「コラムスI」も入れることに決めました。

堀井氏: 気が付いたら、弊社の松岡と奥成さんの企画が、何と両方とも実現してしまいました(笑)!

※5……Cボード: セガ製のアーケードゲーム用基板の一種。メインCPUは68000、サウンド用CPUにはZ80を使用し、メガドライブとの互換性を持つのが特徴。「コラムス」「コラムスII」「サンダーフォースAC」に使用されている。ちなみに、「ぷよぷよ」は改良型のC2基板を使用している。

【新モード「無限コラムス」】
ひたすら宝石を積んで消していくだけの、シンプルな遊びに特化した「無限コラムス」。メニュー画面から選択できる

――「無限コラムス」という名前を考えたのも松岡さんですか?

奥成氏: はい。「やみつきになって、いつまでも食べられる『無限キャベツ』のように『コラムス』を」というところから「無限」にしたというお話でしたね。もうとことんまで、「コラムス」をやってもらおうということで。

堀井氏: 松岡からは、「『無限キャベツ』、『無限もやし』のほかにも、『無限ピーマン』もあるんですよ」という話も聞きましたけど、「無限ピーマン」なんて知らないよ、適当なこと言うなよと。ピーマン嫌いの人には、そんなの地獄じゃなですか(笑)!

――「無限コラムス」を早速拝見したところ、シリーズではおなじみのお助けアイテム的存在である魔宝石が、このモードでは出現しないようですが?

奥成氏: 「無限コラムス」では、他のモードと異なり、時間によって下の列から宝石がせり上がってくるのですが、そこに点滅した宝石がたまに入っていることがあって、それを消すと魔宝石と同じ効果が発生して、同じ色の宝石を全部消すことができるようになっています。このモードは、初代「コラムス」が好きな人にアピールできる新モードですね。みなさん、新しい『コラムス』のルールでぜひまた遊んでください、というものなんです。

――ちなみに、小玉さんは初代「コラムス」の開発、あるいは発売当時の社内の状況や思い出など、何かご記憶はありますか?

小玉氏: 最初のアーケード版が出た当時のことはよく覚えていないのですが、メガドライブ版のほうは遊んだ記憶があります。通称、「チェック台」と社内で呼んでいた、自由に遊べる機械が置いてあって、そこで遊んでいたような気がします。もうこの時期は、家庭用とアーケードとで開発部署が完全に分かれていて、私が「コラムス」の次に印象に残っているシリーズは 「花組対戦コラムス」(※6) になっちゃいますね。

 「コラムス」はとても色鮮やかで、女性が楽しく遊べるゲームであると思いますし、私自身もとても楽しかった記憶があります。一時期「コラムス」は途絶えてしまったのですが、「花組対戦コラムス」ができた時は、「おお、ここで『コラムス』を持って来たか!」という思い出がありますね。

※6……「花組対戦コラムス」: 1997年にセガサターン用ソフトして発売された作品。「サクラ大戦」のキャラクターが登場し、使用キャラごとに異なる必殺技を繰り出せるのが特徴。2人対戦やストーリーモードなどが遊べる。

「SEGA AGES」のプロデュースを担当する、セガゲームスの小玉理恵子氏

奥成氏: アーケードで「テトリス」が出た後は、「フラッシュポイント」と「ブロクシード」を作って、その間にメガドライブ版でも「テトリス」を作り、そして「コラムス」も作ってと、まさに新しい落ち物パズルというジャンルが出来上がる時期でした。

 「コラムス」は、「テトリス」が生み出した落ち物パズルゲームのフォロワーではありますが、「テトリス」以上に後のゲームに影響を与えているのが連鎖と色の概念です。「ぷよぷよ」もそうですが、落ち物パズルというゲームに連鎖と色の概念を初めて取り入れたのは、実は「コラムス」なんですね。開発中は、フィールドのサイズや宝石の種類、色の数のバランスには苦労したそうです。もし宝石の種類をこれ以上を増やしたりすると、連鎖が作りにくくなったりしてゲームが難しくなってしまうと思います。

 それから、1990年の年末には ゲームギア版の「コラムス」(※7) も発売しました。携帯ゲーム機であるゲームギアを普及させるための切り札だったのですが、ゲームギアの売りはカラー液晶画面でしたから、「コラムス」の特徴とちょうど合っていたのでうまくいきましたね。このゲームギア版と同じタイミングで、ゲームセンターでリリースしたのが今回の「コラムスII」でした。

 「コラムスII」の面白いところは、後に「ぷよぷよ」が編み出したCPUキャラと対戦するシステムがまだなかった時代にあって、ゲームセンターで2人対戦が遊べることと、1人プレイにも「コラムス」にはない新しい遊びを入れたことなんですね。ゲームセンターに向けて、「『コラムス』も『コラムスII』も両方置いてくださいよ」と、狙って作ったところも面白い点ではないでしょうか。

※7……ゲームギア版の「コラムス」: ゲームギア本体と同じ1990年10月6日に発売された。任天堂のゲームボーイ版「テトリス」が白黒画面だったのに対し、ゲームギアはカラーで「コラムス」が遊べることがセールスポイントになっていた。「フラッシュモード」や、通信ケーブルを使用した2人対戦プレイモードも搭載していた。

――ほかにも、アーケード用の「コラムス」シリーズ作品としては、「スタックコラムス」と「コラムス'97」(※8)がありましたが、これらの移植をお考えにならなかったのはなぜでしょうか?

下村氏: そこは単に、順番でということですね。

奥成氏: 「スタックコラムス」に関しては、「CPU対戦をアーケードで」というコンセプトだったと思うのですが、ゲームの雰囲気も含めて「コラムス」のイメージから若干外れたところもありますよね。同じく、家庭用発祥の「コラムスIII」は、「SEGA AGES」のスタート時に、なるべくアーケードのタイトルを選ぼうということで、候補には出ませんでした。「コラムス'97」については、今回の「SEGA AGES」の対象技術レベル的に候補に挙がりませんでしたが、もし「コラムスII」が好評であれば、今後セガサターンやST-V(※9)の移植技術がもう少し進んだタイミングでやってみたいですね。

※8……「スタックコラムス」と「コラムス'97」: 前者は1994年、後者は1997年に発売されたアーケードゲーム。

※9……ST-V: セガサタ-ンとの互換性を持つ、アーケード用システム基板。「花組対戦コラムス」、「ぷよぷよSUN」などのほか、シール機の「プリント倶楽部」シリーズにも使われていた。

「SEGA AGES」のスーパーバイザー、セガゲームスの奥成洋輔氏

「ドクロカット」などの便利機能を搭載、 ”幻のステージ”が新たに遊べるサプライズも!

――「コラムスII」を移植するにあたり、まずはエムツーさんのほうで基板の解析からおそらく始めたのではないかと思います。基板の解析中に、最もご苦労されたのはどのようなことでしたか?

堀井氏: 基板の解析ももちろんやりましたが、それより何より「コラムスII」は、ゲーム自体がとにかく難しいんですよ! 今回は、いろいろなCまたはC2ボードを使用したタイトルを移植していますが、「コラムスII」は過去に手を付けていなくて、しかも時間をあまり掛けられないという厳しい状況の中で、ゲームの難しさが本当に大きな壁になっていて、全ステージをチェックしようにも最後までそもそも進めないんですね。まったく、このゲームの難易度の高さときたらどうよ!!(苦笑)

――と、いうことは、かつてアーケード版をやり込んでいた、本作のハイスコアラーを助っ人プレーヤーとして呼んだうえで解析をしたのでしょうか?

堀井氏: いいえ、今回はそういうところの再現度を極めるというよりも、いかに遊びやすい低難易度版を考えて作るかという点を重視して作りました。

奥成氏: アーケード版で最後まで進めるぐらいやり込めた人は、当時でもおそらくなかなかいなかったと思います。セガサターンにも移植はされたのですが、コレクションソフトでしたので、遊んでいた人はみんなほかのゲームに逃げてしまっただろうと思えるくらい、とにかく難しいんです。

小玉氏: 最初の段階から、どう難易度を下げて遊んでもらえるようにするのか、全面クリアができるようにするのかがポイントでしたね。

堀井氏: 遊んでいると、もうとにかく心が折れるんですよ……。ゲームセンターが、3分で100円のペースで稼げるようにするという意味では、おそらくこれで正しいのではないかと思いますが、初代「コラムス」は慣れた人が無限に遊べるようになっていましたので、その反動が間違いなくここに表れているんですよね。じゃあ、どうやったら遊びやすくなるのかなあと考えた結果、 「ドクロカット」(※10) などを追加しようというアイデアを思い付きました。

※10……「ドクロカット」: 設定をオンにすると、ドクロが一切出現しなくなる機能。ドクロを消すと画面下部がせり上がるため、ゲームの難易度を高める一因となっていた。

【新システム「ドクロカット」を搭載】
多くのプレーヤーを苦しめたドクロ。本作ではメニュー画面で、「ドクロカット」の有無が選択可能になった

――この新たなアイデアこそが、まさにNintendo Switch版ならではの目玉になるわけですね。

堀井氏: はい。アーケードモードでは「ドクロカット」と、それからステージセレクトもできるようにしました。これらの実装には、かなりの手間を掛けて作りましたね。

奥成氏: ステージセレクトができるようになったおかげで、ゲームがすごくプレイしやすくなりました。あまりにもスムーズに実装されているので、「アレ? アーケード版にはステージセレクトはなかったんだっけ?」と思ってしまうほど、気軽に遊びやすくなったと思いますよ。「コラムスII」というのは、要は「コラムス」+「フラッシュポイント」みたいなゲームじゃないですか。「フラッシュポイント」には元からステージセレクトがあったのですから、今思えば「コラムスII」にもステージセレクトを入れておいてくださいよと(笑)。

堀井氏: 「ステージ選べないんかい!」と(笑)。でも、今回の「コラムスII」には、ステージセレクトを違和感なく入れることができたのではないかと、我々のほうでも思っています。

奥成氏: それから、せっかくステージをクリアしたのに、後になってからどのステージをクリアしたのかがわからなくなってしまわないよう、クリアしたステージを「宝石箱」にコレクションするという形で見えるようになっています。「宝石箱」を参照して、まだクリアしていないステージを1つずつつぶしながら遊べるんです。これもエムツーさんならではの素敵なアイデアですね。

――「宝石箱」のアイデアをお考えになったのは、エムツーの松岡さんですか?

堀井氏: はい、そうです。自分以外の誰かに遊んでもらうにはどうすればいいのか、という発想から生まれたアイデアですね。

小玉氏: ステージセレクトが付いただけで、チャレンジ精神がすごく湧くようになりました。「やってみよう、クリアしてやろう!」という気になるので、とてもいいですよね。

奥成氏: 「宝石箱」で見られるキャラクターはデモ画面にも出てきますので、別にクリアしなくても見るだけならば誰でもできますけどね(笑)。

【宝石箱】
「フラッシュコラムス」のステージクリア状況が確認できる「宝石箱」システム。達成度に応じて、デモ画面に登場するラウンドガールまたはボーイを務めているキャラクターのプロフィールが見られるご褒美も入手可能

堀井氏: そうそう、その松岡からの情報で、もうひとつ面白いお話があるんです。アーケード版の「フラッシュコラムス」は69ステージで、69面をクリアするとまた1面に戻ります。しかし、解析をしてみたところ、データ上は全70ステージ用意されていて、1つだけ登場しないステージがあったことがわかりました。しかし今回、ステージセレクトを作ったらアーケード版では出てこなかった”幻のステージ70”も選べるようになりましたので、初めて全70ステージがそろった状態でプレイ可能になりました。

小玉氏: ステージセレクトを実装したら、幻のステージが生き返っちゃったんですね(笑)。

奥成氏: 「コラムスII」のコアなファンの方は、今まで全70ステージと書かれていると違和感があったかもしれませんが、エムツーさんが今回のために勝手に追加したわけではありませんよ(笑)。

――アーケード版では遊べなかった、”幻のステージ”があったとは初耳です! これは当時、アーケード版を極めてしまったプレーヤーにとっても驚きの情報ですね……。ほかにも、Nintendo Switch版ならではの新要素などはありますか?

奥成氏: オプション設定で、フィールドと宝石のデザインを、初代「コラムス」のデザインのまま固定できるようにしました。「コラムスII」の初代「コラムス」からの変更点として、ステージクリアごとに宝石のデザインが化石や幾何学模様に変わるのが大きな特徴なのですが、これで戸惑ったりすることがありますよね? でも、宝石のままだと見慣れているので、視認しやすくてわかりやすいんですよね。デザインが変わるというのは、本来はプラス要素であったはずなんですけど、逆にそこを外してシンプルにできるわけですね。

堀井氏: 「コラムス」向けに最適化された「コラムス脳」にせっかく切り替わったのに、途中で宝石のデザインが変わることで阻害され、脳汁が出なくなる人がいますからね(笑)。そういう人向けの設定だと思っていただければと。

――それから本作では、以前の「ワンダーボーイ モンスターランド」と同様に、画面の左右両端が昔のテーブル筐体をイメージしたデザインになっていますよね? しかもリアルさを追求するあまり、インストカードが画面内に入り切れずに途中で切れているのが、これまたひとつの味になっていますよね。

堀井氏: 何だか、これもいつの間にか定番になってきた気が……。

奥成氏: 「ワンダーボーイ モンスターランド」で、エムツーの駒林(貴行氏)さんがこだわって作った結果、もはやインストカードが切れてしまうのがある意味仕様になってしまいましたが、説明が書いてあるのに説明ができていないというのは、正直どうなんでしょうね(笑)。

――確かに、事情を知らない人が最初にこれを見たら、きっと不思議に思いますよね……。

堀井氏: ゲーム説明を読みたいんだけど、「これ途中で切れてるから読めないじゃん!」と。だったら、画面を左右に動かせるようにするとかして、どちらも読めるようにできないのかよと(笑)。

小玉氏: でも、画面比率で見ればこれで正しいと思われます(笑)。

【ついに定番化!? テーブル筐体の演出】
モニターに映し出されたゲーム画面を直接撮影した写真。今回も、セガ製の古いテーブル筐体のデザインと、左右にインストカードを並べた演出を見ることができる

――「コラムスII」でも、オンライン対戦やランキング集計ができるようになっているのでしょうか?

奥成氏: はい。「ぷよぷよ」と同様のクオリティで遊べるようにしてあります。

堀井氏: オンライン対戦は、「ぷよぷよ」の時には苦労しましたが、ようやく普通に実装できるようになりましたね。

奥成氏: 「ぷよぷよ」のオンライン対応が完成しないと「コラムス」も出せないね、というお話を以前からしていました。「コラムスII」も、割と早い段階から動き始めていて、確か去年の暮れに「ぷよぷよ」を出すことを発表した時点で、すでに遊べるようになっていたと思います。これならすぐに出せるのかなとも思ったのですが、ネットワーク周りの調整でかなり苦労しましたので、その間に多くの時間を「コラムスII」の解析に費やせた結果、細かい部分までいろいろといじることができたのではないかと思います。

 「何をすれば難易度を下げられるのか?」ということで「ドクロカット」から始まって、ステージセレクトなどのいろいろ調整ができましたので、ようやく「コラムス」ファンの人も普通に遊べるものができたんじゃないかなあと。挑戦しがいのある、遊びやすい難易度になった「コラムスII」が、ついに今回完成したのではないかと思います。

――「対戦コラムス」では、2プレーヤー側のフィールドが上下を反転した状態で表示される、「対面モード」を設定できるようになっていますよね? これにはどのような意味があるのでしょうか?

堀井氏: 「対面モード」は、元々アーケード版にあった機能ですね。「コラムスII」が登場した当時は、まだ対戦ゲームの時代になっていなくて、プレイする際はテーブル筐体がメインでしたから、テーブル筐体で同時プレイや対戦プレイができるように当時のセガさんが工夫された結果、この機能が作られたのでしょうね。

 ただ、その後は対戦格闘ゲームや「ぷよぷよ」の時代になり、テーブル筐体がなくなっていったため、この「コラムス II」で採用されたのが、時代的に最初で最後になってしまったのだろうと思います。今回移植をした、Nintedo Switchには「テーブルモード」がありますから、我々としてはこの機能を移植しない手はなかったですね。開発としてもとても愉快で、実装しがいのある機能でした。

奥成氏: 実際にやっていただければ、どんなものかがよくわかると思いますよ。相手側のフィールドが上下反対になって見えにくくなるのも、「対面モード」ならではの面白いところではないかと思います。

(と、ここで奥成氏が筆者の対面に移動し、実機を起動する)

【「対面モード」】
「対面モード」にしたところ。双方向かって左側のフィールドを見ながらプレイする形になる

――2プレーヤー側の表示だけを反転させることは、技術的に難しかったのでしょうか?

堀井氏: 元々あった機能なので、技術的には何も問題はありませんでした。ものの10分で実装して、あとはみんなで笑いながらテストプレイをしていましたね。

――「コラムスII」の開発が始まってから、完成するまでにどのくらいの時間が掛かりましたか?

堀井氏: 「コラムスII」だけに時間を割いていたわけではなくて、基板の解析にも時間が掛かっていましたし、解析をしながらメインの作業も進めるという形で作っていましたので、結構時間が掛かりました。おそらく、ほぼ1年くらい掛かったと思います。例えばネットワーク周りですとか、ほかのタイトルでも使用するライブラリが使えるようになるまではネットワーク対戦を実装することができませんので、どうしても時間が掛かってしまうんですね。

「宝石箱」と併せて楽しみたい、「SEGA AGES」シリーズのデモ画面に隠された秘密

――次にタイトルやデモ画面などの演出についてお尋ねします。タイトル画面で表示されるイラストを過去に見た記憶がないのですが、これは本作用に新たに描いたのでしょうか?

小玉氏: タイトル画面のイラストは、ドット絵を元にして今回新たに描き下ろしたものですね。

――デモ画面には、歴代のセガキャラクターが登場する演出がありますが、これも新しく作り直しているのでしょうか?

奥成氏: デモ画面は「SEGA AGES」共通です。

堀井氏: 登場するキャラクターは、毎回ちょっとずつ変化していますけどね。

奥成氏: ……あ、そう言えばデモ画面についての詳しいお話は、今までのインタビューでも全然していなかったかもしれませんね。

――では、この機会に、ぜひ詳しいお話をお聞かせください!

奥成氏: 「アレックスキッドのミラクルワールド」だけの特別な演出を除き、「SEGA AGES」のオープニングデモは、基本的にどのタイトルでも同じです。ただし、画面の左右に出てくる、ラウンドガールとラウンドボーイのキャラクターに関しては、実は全タイトル共通というわけではなくて、必ず個々のタイトルにしか出てこないキャラクターが存在します。

 エムツーさんは、このデモ画面にもいろいろなこだわりを持っていまして、タイトルごとの主人公キャラクターはラウンドガールやラウンドボーイとして絶対に使わないようにしているんです。なぜかと言いますと、主役だからラウンドガール、ラウンドボーイにはなれないだろうというのが、その理由なんですね。

堀井氏: ええ、主役でそれをやったらダメだろうと。

奥成氏: ですから、例えば「ファンタシースター」のラウンドガールとして、アリサという選択肢はないわけです。そうそう、 「ファンタシースター」シリーズのネイとファル(※11) は、セガの顔となるヒロインであると思っていますので、逆にどのタイトルでも初回起動時に必ず登場するようになっています。いつも最初のデモ画面しか見ていない人は、ネイとファルしか見たことがない、という人もいるかもしれませんね。

 ともかく、デモ画面をしばらくの間ずっと見ていれば、いろいろなキャラクターがランダムに登場します。「SEGA AGES」のソフトのどれか1本を眺めていれば、出てくるキャラクターはひととおりわかっていたかもしれませんが、実は出てくるキャラクターは一定ではなく、増減しているんですよ。Twitterで、「アレ? キャラクターが増えてる気がする……」みたいなツイートをしていた方もいらっしゃいますが、そもそも同じではないんですね。

 そして、どのタイトルにもそのソフトでしか登場しないキャラクターが最低1人はいますので、もし見たことがないキャラクターが出てきたら「当たり」ですよと(笑)。今回は「宝石箱」にキャラクター図鑑がありますので、もしここで見覚えがないキャラクターが出てきたなと思った方は、今までに買われた「SEGA AGES」のデモ画面を全部見直してみてください(笑)。

※11……「ファンタシースター」シリーズのネイとファル: ネイはメガドライブ用RPGの「ファンタシースターII」、同じくファルは「ファンタシースター 千年紀の終りに」の登場人物で、いずれも主人公パーティに加わる仲間の1人であり、アリサはシリーズ第1作目のヒロイン。2017年にはシリーズ30周年を記念して、「ファンタシースターオンライン2」にネイとファルの衣装をアレンジしたレイヤリングウェア、「ネイ・リモデ」が登場したのをご記憶の方もいることだろう。

【デモ画面で登場するキャラクター】
最初は必ずネイとファルが登場するが、2回目以降に登場するキャラクターは異なり、しかも回を重ねるごとに増減していることが判明。読者のみなさんも、ぜひデモ画面を見比べてみては?

――「コラムスII」はゲーム自体が難しかったというお話がありましたが、今回の開発にあたり改めてゲームをやり込んだうえで、本作の面白さや魅力はどんなところだと思われましたか?

堀井氏: 面白いことは間違いないのですが、こんなに難しいものを家庭用でそのまま遊ばせるのは、さすがにしのびないなあと。今回はそこをうまい具合に、我々がいろいろと考えて遊べるようにしたつもりです。ここは実際に遊ばれたみなさんの感想待ちということになりますが、おそらく良い味付け、調整ができたのではないかと自負しておりますので、ぜひ遊んでみてください。

奥成氏: メニュー画面では、一番上にアーケードモードが表示されるのですが、順番としては「コラムスI」からまず始めていただいて、慣れてきたらその上にある「無限コラムス」を、最後に本編であるアーケードモードに挑戦していただくのが個人的なオススメです。「コラムスI」をアレンジした新モードが「無限コラムス」ですし、さらにその上には「コラムスII」のアーケードモードがありますので。アレ? 今思うと、順番を逆にしたほうがよかったかもしれませんね(笑)。

小玉氏: アーケードモードが、実は一番難しいんですよね。

堀井氏: そう仰られても、このゲームのタイトルは「コラムスII」ですから、順番を動かすのはさすがに無理ですよ!

(一同爆笑)

――それでは最後に、GAME Watch読者に向けてみなさんからメッセージをおひとりずつお願いします。

堀井氏: この難しいゲームを、このまま家庭用として遊ばせるのはしのびないというところからスタートして、アーケード版本来の「コラムスII」とはちょっと違う形ではありますが、「家で遊ぶならこうだよね」というものをしっかり作ることができました。「昔、ゲーセンで『コラムスII』を遊んだらひどい目に遭った、大嫌いだ!」と思われた人はおそらくいないとは思いますが、もしいたとしても、「これならもういいでしょ、大丈夫ですよ!」と言えるようなものを、解析にもすごく時間を掛けた成果として作ることができました。コミケの行列に並んでいる間の待ち時間にもぜひどうぞ!(笑)

小玉氏: 「コラムス」は私もゲームセンターで遊んでいましたし、セガを代表する落ち物パズルゲームであると思っています。最初の段階から、家庭用で「コラムスII」を出すにはどうすべきなのか、出すのであれば全ステージクリアをみなさんにしていただきたいという発想から始まって、いかにプレイしやすく、最後まで遊んでいただけるかに注力して作りました。全ステージクリアを目指してゲームを始めたら本当にハマると思いますし、ネット対戦のほうもぜひ楽しんでください。

奥成氏: メガドライブミニで「テトリス」を復刻したタイミングで、「お前がそれを言うのか」というツッコミもあるかと思われますが、メガドライブユーザーにとって「コラムス」はすごく特別な存在で、心の隙間を埋めてくれたと言いますか、けっして二番煎じではない、これぞ落ち物パズルというゲームなんですね。セガ以外のハード向けにも移植はされているんですが、なぜかどれも正直あまりいいタイミングでリリースされておらず、セガファン以外でやり込んだ人は少ないのではないかと思います。セガユーザーでも、初めて遊んだシリーズが「花組対戦コラムス」だったりする人も多そうです。そんなこんなで、歴史的名作のはずなのに、その後ちょっと不遇なところがありましたので、今回の「SEGA AGES」がきっかけで、「『コラムス』って、実は面白いんだな」と思ってくれたらうれしいですね。

 メガドライブミニと、今回の「コラムスII」が出る機会を利用して、「コラムス」の復権を図りたいなあと。弊社の細山田(水紀氏)には、かれこれ5年ほど前からずっと言い続けているのですが、「コラムス」も仲間に入れてくれと。いつの日か、「ぷよぷよ」や「テトリス」に乱入して戦わせてくれよと(笑)。「コラムス」を再び表舞台に出して、栄光を取り戻したいです。あ、忘れてました、これからは大坪(鉄弥氏)にも言わないといけないですね。お話が少々それましたが、見違えるほど遊びやすくなったと思いますので、「『コラムス』は好きだったけど、『コラムスII』は難しくてちょっと……」と思われた人にも、ぜひ遊んでいただきたいですね。

――ありがとうございました。