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2025.01.14 11:00

【スタジオ雲雀×フリー】次なる挑戦は「給料2倍」——工数見える化でアニメ業界は変わる

1979年に設立されたアニメーション制作スタジオ・スタジオ雲雀。業務委託による外注制作の多い業界において、創業から早い段階で社員を抱え、3DCGやデジタル作画などの新しい技術をいち早く取り入れてきた。内製化によるアニメーターの育成、制作価格の適正化などに意欲的に取り組むなかで、2022年からfreeeのサービスを導入。工程管理や業務委託管理などのシステム化も進めている。

導入を決めた背景や、アニメ業界に対して感じる課題と今後の展望について、株式会社スタジオ雲雀 代表取締役の光延青児とフリー株式会社 SMB事業本部 セールスチーム アカウントマネージャーの中西健志郎が意見を交わした。


——スタジオ雲雀は社員による一貫制作体制を整え、作品づくりの内製化を進めていらっしゃいます。その背景にある思いをお聞かせください。

スタジオ雲雀 光延青児(以下、光延):アニメーション業界では長く、クリエイターたちの業務委託が一般的でした。昨今になってようやく、働き方改革により社員化の流れが出てきていますが、創業から早い段階で社員を抱えていた当社のような企業は珍しかったんです。

私が入社した40年前、アニメ業界といえば薄給のブラック企業という印象が根強く、未来がないなと感じていました。新卒採用で内定を出しても、「親に反対されたから、ちゃんとした企業に入ります」と辞退されてしまう。アニメ業界の社会的な地位を変えていかなければ立ち行かなくなるだろうという危機感から、待遇や働き方の改善にひたすら背伸びしながら取り組んできました。

フリー 中西健志郎(以下、中西):“好き”な思いが集まる業界だからこそ、業務改善がなかなか進まない現実があるんでしょうか。

光延:まさにおっしゃる通りで、作品をつくれればそれで幸せ、ご飯も睡眠も後回しでいいという人がたくさんいるんですよ。労働環境なんて、こんなもんでしょという感覚の人はいまだに多いと思います。

僕は、20代の頃から打ち合わせのたびに絵コンテを机の上に並べてコピーしてホッチキスで止めて……という手作業に時間を取られながら、「もっと効率化できないものか」と常に疑問をもっていました。自動原稿送り機能のついたコピー機を入れる、といった小さなことから、仕組みづくりに投資して、人の時間をいかに削減できるかを考えてきたんです。

頑張った分がきちんと報酬に反映される仕組みを

——スタジオ雲雀では2022年にfreee会計を導入し、バックオフィス業務のシステム化に取り組んできました。社内にはどのような課題がありましたか。

光延:以前まではすべて紙の運用でした。給与計算ひとつとっても、社員100人分のタイムカードの記録をエクセルに入力して計算するという作業を、毎月経理担当がひとりでやっていた。勤怠管理は別のシステムを入れていたのですが、給与計算と連動させて一気に管理できたほうがいいだろう、と目に留まったのがfreeeのサービスでした。

担当者に属人化していた業務がシステム導入で見える化され、これまでの苦労ってなんだったんだろうと拍子抜けするくらいスムーズになりました。

スタジオ雲雀 代表取締役 光延青児
株式会社スタジオ雲雀 代表取締役 光延青児

中西:アニメ業界をはじめ、コンテンツを生み出す業界は労働集約的で人手が一番必要ですよね。制作物が好きで、ものづくりにコミットしたいという人が多い業界だけれど、事務作業によって肝心なところに時間が使えない。そうした課題を抱えている企業も多いと思っています。

freeeのサービスは、システム導入そのものに価値があるわけではない。導入した結果、やりたいことに時間が割けるようになるとか、属人化していたものが解消するとか、もたらされる変化に意味があるんです。例えばfreee会計は、経営判断を下すために必要な指標(数字)が早く出てくることで、スピーディな意思決定ができるようになる。光延さんにはそうした提案もさせていただきました。

光延:もうひとつ、長らく課題に感じていたのは、制作物ごとにかかる工数の把握でした。アニメーション制作は、作品によって作画の難易度が大きく異なります。さらに、同じ作品でも、1カットに含まれる要素によってかかる時間やパワー、必要なスキルレベルも変わってくる。例えば登場人物ひとりのアップの表情を描くのと、10人くらいの人物が集まったシーンを描くのとでは、複雑さが全然違うでしょう。

その工数を可視化したくて導入したのが、freee工数管理です。これによって、ひとつの作品に携わった社員が1カ月間でどれくらい時間を使ったのかが明確になります。給料分よりも働いている社員もいれば、逆にそうではない社員もいる。きちんと透明化して、頑張った分がちゃんと報酬に反映される仕組みを整えることで、働き甲斐のある職場をつくりたいと考えています。

中西:工数が見えると、仕事の受発注でも、エビデンスに基づいた見積もりを出せるようになりますよね。「この作品ならこれくらい人件費がかかるので、この金額でお願いしたい」というように。

光延:そうですね。現状では、仕事を依頼されるときに工数を加味した詳細な見積もりを求められることはほとんどありません。これまでの相場観からの概算や言い値で決まるので、工数がかかる案件も、そこまで大変ではない案件も、人件費に合った適正価格になっていないんです。これからは「工数に応じた金額でお見積りをお出しします」と言い続けることで、業界の慣習を少しずつでも変えていけたらいいなと思っています。

レベルにあった価格設定でアニメーターの底上げに挑む

——フリーランスのクリエイターへの業務委託も多いということもあり、2024年9月にfreee業務委託管理も導入されています。導入によって業界の働き方がどう変わっていくと期待していますか。

光延:freee工数管理によって、作品ごとに社内の人件費が見えるようになり、freee業務委託管理によって、外注費がいくらかかったのかがクリアになります。その双方が集計できれば、出せる見積りの精度が高まり、作品に携わった全員が、働いた分だけの給与やフィーをもらえるようになります。

フリーランスの方のなかには、複雑なアクションシーンを描くことを夢見てこの業界に入る方もいます。でも、シンプルな顔の絵を1枚描くのと、詳細な描き込みが必要なシーンを描くのが同じ値段だったら、「簡単なほうだけ受けて、ラクして稼ごう」と思ってしまいますよね。せっかくのスキルが発揮されないままだったり、スキルアップの機会を失ったりと、アニメーターのレベルの底上げにもつながりません。そこで、当社ではカットごとの工数のルールを決めて、単価の設定を細かく変えています。ルールづくりがものすごく大変なんですが、仕事を受ける際の納得感はありますよね。手間と単価が見合うから、難しい作画に挑戦したいクリエイターのモチベーションも維持できます。そうした、あらゆる仕事の適正化をしていきたいんです。

中西:24年11月に施行されたフリーランス新法によって、業務委託の発注側には、さまざまな業務管理が必要になってきます。フリーランスがより働きやすくなる一方、契約内容の書面化など必要な業務が増えていく。人が介さなくていいところはシステムの力でカバーし、本来パワーを注ぐべき作品づくりに時間を使えるようにしていきたい、という思いは強くあります。

freee業務委託管理は、業務委託先のタレントマネジメントとまではいきませんが、その方の特性や評価の管理もできるシステムです。「この方は細かな描き込みが得意」「仕事が早い」といった、発注者の頭のなかに入っているような情報を蓄積できることで、依頼する業務とのマッチング精度が高まります。いずれは、そうした能力の管理まで進めていただくと、ますます業務の効率化と適正化につながるんじゃないかと思っています。

「お金をもらえなくてもアニメが描ければいい」を変えたい

——改めて、アニメ業界をどう変えていきたいと考えているのか、今後の展望や思いをお聞かせください。

光延:実は、freeeのシステムを導入する前から、社員一人ひとりの頑張りに報いたいという一心で、独自の工数管理システムを開発しようと試行錯誤していたんです。結局、理想のものはつくれなかったのですが、freeeが同じ構想でシステムをつくってくれていました。

今、目下取り組んでいるのは「社員の給料を全員2倍にするぞ!計画」です。おかげさまで案件の依頼はたくさんいただけているので、いかに内製率を高めてやっていくかが目標達成のキーになる。24年の終わりには、本社の2階にスタジオが完成し、映像制作プロダクションとしてすべての制作工程を社内で完結できるようになります(取材は24年11月に実施)。freeeのシステムの力もお借りして業務効率を上げて、頑張った分だけ給料に反映していく。いずれ2倍が実現できたら、アニメ業界にも夢があるね、と思ってもらえるでしょう。

中西:アニメ業界の需要は、ここ数年で2倍、3倍に高まっています。内製化にいかに注力できるかは、おっしゃる通り、大きなポイントだと思います。

好きなことをしたくて入ってきたのに、正しく評価されていないと長く続ける意欲が削がれていってしまいます。スタジオ雲雀さんが社員を適正に評価し、インセンティブを設計する仕組みを整えることは、アニメ業界全体のDX化に対して、いい影響を与えていくと思っています。
フリー株式会社 SMB事業本部セールスチームアカウントマネージャー 中西健志郎

フリー株式会社 SMB事業本部 セールスチーム アカウントマネージャー 中西健志郎

光延:今、世界的に日本のアニメは注目されています。ゆえに、海外からの認知度やステータスが高まっていて、業界がどんどん変化している……と外からは見られがちです。でも実際は、そこまで変革は起こっていません。お金をたくさんもらえなくてもアニメが描ければそれでいい、そんな価値観がいまだ根強いのが、業界の実態です。

そこで当社が、「初任給40万円」と打ち出せたら、業界の見え方は変わるんじゃないかと思うんです。制作会社に所属して、社員の立場で働くことの魅力やメリットも大きくなるでしょう。アニメに関わりたい人、目指す人が増えていってほしいなと思っています。

中西:こうして業界特有の痛みを面と向かってお話してくださることは、とてもありがたいですね。スタジオ雲雀さんが抱えてきた同じ課題に、数年後に直面するアニメ業界の企業も出てくると思うんです。そのときに、「痒い所に手が届く」ような価値提供につながるように、業界に特化したサービス改善をこれからも続けていきたいと思っています。


フリー株式会社
https://corp.freee.co.jp/

株式会社スタジオ雲雀
https://www.st-hibari.co.jp/


みつのぶ・せいじ◎株式会社スタジオ雲雀 代表取締役社長。20歳で同社に入社し、2002年より現職。1979年に設立したスタジオ雲雀は、仕上げ業務を中心とした制作会社としてスタート。土田プロダクション制作の「キャプテン翼」やスタジオジブリ制作の「天空の城ラピュタ」「魔女の宅急便」などの制作協力を行なってきた実績を持つ。現在では一貫制作体制を整えており、テレビアニメーションを中心に制作を行なっている。近年では「モンスターストライク」のアニメシリーズをはじめ、「暗殺教室」「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 THE ANIMATION」(Lercheブランド)などを手掛けている。2011年にはアニメブランド「Lerche(ラルケ)」を立ち上げ、あわせて展開中。

なかにし・けんしろう◎フリー株式会社 SMB事業本部 第4事業部 セールスチーム アカウントマネージャー。大学を卒業後、大手建設機器メーカーの営業職よりキャリアをスタートし、2019年より現職。インサイドセールス組織の立ち上げやメガバンクとの共同プロジェクトにて戦略的な市場開拓や関係構築を経験。現在はエンタメ・コンテンツ業界を中心とした営業部門でのマネージャーとして経営課題解決と業務改善の支援に従事。

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