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NEC FOMA携帯(ガラケー)開発の歴史。汎用OS「Linux」を採用した当時の開発を振り返る

少し前にも同種の報道があったが、NECカシオモバイルコミュニケーションズがスマートフォン(スマホ)開発から撤退するという報道が盛り上がっている。

一応否定はしているが、ここ数年苦境に立っているのは事実なので、撤退も含めて検討されているのは間違いないと思う。

しかし、NECといえばスマートフォン時代になって存在感が薄くなったが、フィーチャーフォン(ガラケー)時代はトップメーカーだったのだ。

その、NECが最先端の携帯を開発しないなんて事は時代の流れを感じると同時に、10年ほど前にNEC携帯の開発に携わっていた人間としてはなんとも寂しい感じがしてしまう。

今でも僕が携帯業界に多大なる関心を持って、ブログとかでも色々ネタを紹介するバックボーンってこの時の経験が大きいからだ。

ただ、当時を振り返るとNECというかガラケー開発には色々問題があったと思うわけで、何でもかんでも書けるわけでは無いが、当時の事を振り返りつつガラケー開発の一端を紹介してみようと思う(僕が担当していたのは1機能に過ぎず、全体はでかすぎて分からない)。

この記事の掲載内容は、2020年12月25日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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2004~2005年当時のNEC携帯電話の状況

僕がNECの携帯開発に携わったのは、世の中に出た時FOMA N901iC~N903iと呼ばれた機種の開発を行っていた頃だ。

当時、movaからFOMAへの移行が本格的に進んでいた。

mova時代のiモード携帯と言えば、N502itを筆頭に「折りたたみのN」と呼ばれていたが、FOMA時代になりNECのシェアは徐々に低下していた。

具体的にはカスタムジャケットで人気を博したPanasonic(PMC)がトップで、2番手がNECという状況だったが、FOMA時代になり一気にシェアを伸ばしたシャープにかなり追い上げられていた。

結果として、数年後シャープに抜かれてあっという間にトップになってしまったが、当時の危機感はかなり強かった。

FOMA携帯開発の歴史

FOMAの携帯開発は特に903iの世代くらいまでは、過酷な状況だった。

NECに限らず富士通・シャープ・Panasonicなど各社は、全国で数百人の開発者を抱えて開発していた。

僕もその一人だったが今にして思ってもトップクラスで残業・休日出勤をしたのはこの時期。

それでも、当時docomoのFOMAを開発していると言えば日本で最先端の開発をしているなんて気分になれる。

自分が開発に携わった端末が、世の中に広く普及するという感覚も中々味わえないので、きつくて不満はあったが楽しい。そんな現場だったと思う。

FOMA端末はどのメーカーも障害が多く発生した。ネットワーク経由のソフト更新を行うようになったのも、FOMAが恐らく最初だと思うが、まあそれくらい障害は多かった。

その理由は、高機能になりつづける故にアプリケーションが複雑化したことが原因だが、もう一つFOMA時代になって導入された新しい取組みに苦戦していた。

当時から一般公開されている話だが、具体的には以下だ。

  • 汎用OSの採用
  • ACCESS社の組込み向けブラウザNetFrontの適用範囲拡大

汎用OSの採用

今では考えられないが、開発環境や機能仕様の決定からメーカー間の調整まで、当時の携帯開発はキャリアがほぼ全てをコントロールしていた。

その最たる例は、メーカー間の協業じゃないかと思う。

理由は各メーカーで開発したら規模が大きすぎるため、分業体制を整えると言うのと、将来に備えて2種類のOSを使いたいというものだったと思われる。その結果出来上がったのが、

  • NEC&PanasonicのLinux陣営
  • 富士通&三菱のSymbian陣営(後にシャープ&SONYも)

メーカー各社としてもメリットはあっただろうが、これはこれで大変であった(やはり各社オリジナル機能があったりするので)。

そして、Linux陣営はNECがOS移行の中心を担っていたようで、現場は苛烈を極めていた。

なにせ今までTRONという国産OSをベースに開発していたものが、Linuxという汎用OSに変わるのだ。

2chの掲示板に現場の不満の声が溢れ、固有名詞が飛び交って問題になったなんて、この時以外記憶にない。

ちなみに汎用OSの搭載で一番犠牲になったのはレスポンス。

Linux搭載FOMA端末の第一弾はN900iLという法人向け携帯だったのだが、これのレスポンスはまあ酷いものだったw

今でもたまに聞くが、携帯に対して「もっさり」、「サクサク」なんて表現をするようになり、携帯の評価基準の1つにレスポンスが加わったのはこの頃だと思う。

docomoのこの取組みは将来的に携帯端末向けOSと汎用OSは融合するという読みだったのだろうが、結果としてこの取組みはiPhoneの登場でほぼ無意味になってしまったと思う。

ただ、OSを一本化するリスクを避けるという思想は残っていると思っていて、今だと本来ならAndroidを柱にiOSも採用というアプローチが最適と思うのに、Tizenなのだからdocomoが今何を考えているのかが分からなくなる。

ACCESS社の組込み向けブラウザNetFrontの適用範囲拡大

ACCESS社のNetFrontはiモードブラウザなど、携帯ブラウザの多くで採用されて当時絶大なシェアを誇っていた。

FOMA時代になって、NetFrontはさらに適用範囲を広げていく。何かと言えば、携帯メールの表示および入力だ。

本気のFOMAと言われた900iシリーズから、docomoではデコメール(デコメ)と言われた、

PC文化でいうHTMLメールの対応が進んだ。これのバックボーンになったのがNetFrontで、この事が携帯開発をさらにややこしくした。

さらに、デコメール自体も色々問題を含んでいた。1つはレスポンス。とにかく表示が遅かった。

もう一つはインライン入力に対応するのにものすごく時間がかかったことだ。

インライン入力って何?って思う人もいるかもしれないが、こういうものだ。
IMG_2595
メールの文字編集エリアに自分が入力中の文字が表示される。

今じゃ当たり前の機能だが、901辺りの機種をお持ちの方がいれば見てみて欲しい。

編集エリアの下部に文字入力エリアが表示されて、確定ボタンを押すと編集エリアに反映されると思う。

mova時代は当たり前に対応していたこの機能が、FOMAの全機種で対応されたのは多分905iシリーズくらいだったと思う。もうガラケー時代末期ですよね。

NetFront系に強かったのはdocomo携帯を初期から支えたNECと富士通と言われている。

まあ歴史だけと言われたらそれまでだが、苦労の歴史が有りそれを乗り越えて来た。

これらの問題を克服して、ガラケーが完成の域に達した頃に、iPhoneという黒船が訪れたのだから、国内メーカーが慌てたのは当然と言えば当然かもしれない。

旧態依然としたNECの組織構造

ここまで書いてきた事から分かるかもしれないが、NECって技術力はとても高い会社だった。

システム系の大企業だと、社員はプログラムなんて一切書かないというのがわりと普通なのに、携帯系の人達は社員でもバリバリプログラミングしていた。

ただ、組織はものすごく旧態依然としていた。

平社員→主任→課長→部長というような階級構造がものすごくはっきりしており、よく言えばしっかりしている、悪く言えば融通が利かない感じだ。

基本はそれでもいいが例外を認めない雰囲気があった。

NECは取引先が官公庁やNTTなどが多い事もあり、官僚的と言われていたが、まさにそんな感じだと思った。

THE・日本企業というか、こういう会社がスマートフォンという新しい分野に舵を切るのは、ものすごく難しかっただろうなぁと思う。

NECの携帯は復活できるか?

完全に出遅れたし、時間もかかったがNECのスマートフォンMEDIASはようやく人にお勧めできるような端末になってきた。

「MEDIAS W N-05E」は見た目でインパクトもあり、コアなファンを掴んでいる。

「MEDIAS X N-06E」は「ヒートパイプ」という放熱技術を搭載したり(スマホの熱問題に一石を投じる技術だと思う)、日本人の好きなイルミネーションにこだわったり他メーカーとは違った魅力を持っている。

惜しむべくは、docomoのツートップ戦略で他社スマホと数万円の差があっては売れるわけもないし、過去の品質の悪いスマホによって染みついた悪いイメージの影響は大きいと言うことだ。

記事を取得できませんでした。記事IDをご確認ください。

正直これを払拭するのはかなり難しいと思われ、撤退という選択肢を検討するのは経営陣にとって当然とも思う。

だが、そもそも論から言えば経営陣がスマホの普及を読み違えて、今までと同じようにdocomoの護送船団方式に乗っかった事が間違いだったわけで、ここで戦略的な経営判断があれば結果は違っただろう。

現場は絶対このままじゃやばいと気づいてたと思う。

でも、言わなかったのか、言えなかったのか、どちらにせよ経営陣の罪は重い。

今できる事はdocomoの呪縛から逃れて、他キャリアにも積極的に売り込む事と、独自の販路でSIMフリー形式で販売する事じゃ無かろうか。

それをやるもやらないも経営陣の判断次第だが、ようやく売り込めるような端末になってきたようなので、NEC携帯が復活できるか最後のチャンスだろう。

個人的には同じく逆境の中で選択と集中を行い現在一定の成果が出てきている、マツダ・富士重工など自動車メーカーの取組みを参考に、反転攻勢して欲しいのだが、、、

いずれにせよ時間はもう長くは残されていないだろうなぁ。

2024年現在もガラケーを継続的に販売するキャリアは、かなり少なくなっています。
チー
今のガラケーは、Androidで中身はほぼ「スマホ」だけど、今でも真面目にガラケーを開発しているのは、docomoY!mobileくらいじゃないかな……。
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チー
操作性が「独自」過ぎて、スマホを知ってる人には逆に分かりづらくて、教えられないんだよ。
ガラケーだって昔は使えたけど、もう使い方忘れちゃったよね……。

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パパンダ
選び方は分かったけど、「ドコモ」ばっかり!
チーさんがドコモ好きなのは知ってるけど、うちみたいに家計が苦しいと格安SIMとか選びたくて……。おすすめないです?
チー
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チー
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6件のコメント

いつも読ませていただいております。

どのジャンルの記事も興味深く拝見しておりますが、
今回は大変読み応えがありました!

日本の既得権益体質、ここ2・3年のスマホ過度期にその脆さ出た
と言えばそれまでですが、簡単には言えない産みの苦しみもあったのだと
考えさせられました。

どうかご無理なさらず、マイペースでブログをがんばって下さい
これからも応援しております。

NECさんには、ほぼスマホなどを発展させて素に近いAndroid&simフリー端末、国内販売の先駆けとなっていただきたいものです(笑)

では。

ありがとうございます!

携帯って何気なく使ってますが、進化が早い故にすごく大変なんです。今って何でも日本メーカーを叩くムードがありますが、やっぱり戦略が悪かったと思うわけで、そういうあたりを何とか伝えたい思いで書きました。少しでも考えるきっかけになったなら良かったです(^^)

ブログはマイペースで頑張りますので、今後ともよろしくお願いします!

NECがモバイル系でとれる選択肢は、まだかなりあると思います。
前年のスマホ(自分の手元のN-07Dも)は各社発熱トラブル多いです。
N-06Eのヒートパイプソリューションも正しい解へのアプローチに
なるだろうし、シャープは厚さ問題等ありそうだけど、今夏モデルで
背面全体に基板(内側に電池。交換は専用工具)を配置してます。

NEC(biglobe)で「ほぼスマホ」のような、ある程度SIMフリー機
(自社系列によるMVNO展開)も売っていたりするし。

あまりドコモの縛りを気にせず、どんどん自社展開のほうがいいはず。
ドコモ向けでは不十分なら、最初からSIMフリー機で開発して、
auでもソフトバンクでもイーモバイルでも売ればいいはず。
biglobeで直販して、好きな会社のSIMでどうぞでもいいはず。

あまり注目されてないけど、NOTTV向け機種でNECがんばってました。
2012年4月のNOTTV開局当初時点では、SH-06Dが電源問題等で
あまりまともに動かなかったので、medias tab N-06Dのほうで、
当初は視聴してた人も多かったはず。
他に出してたNEC製のNOTTV機種数も多いほうだったし。

シャープ機が注目されることも多いけど、昨年くらいの機種の
不安定さはどこの会社もあったし、発熱問題はスマホ全体で多いです。

放送局関係はNEC製システムもいろいろあるし、送信設備や携帯基地局
のインフラ系や、全体としての会社の仕事は大きいわけです。

会社の赤字黒字だけを気にして、一般ユーザー向け製品を
全部やめるというのは、日本企業では、あまりやらないこと。
赤字がずっと続いてしまうのも確かに問題だが、
将来へのチャレンジをやめてしまうのも、もっと大問題。

スマホやタブレットによる21世紀の個人ツール革命(世界的レベル)は、
まだ始まったばかりだから、先々の視点と戦略眼はまだ必要。

SIMフリーで独自展開というのは賛成ですね。docomoに限らずキャリアの呪縛から逃れて、自らで販売戦略立てる時が来てます。

それが上手くいけば、復活もあるかなぁと思います。