筆者は2022年7月のコラムで、日本の前工程装置の世界シェアが、2010年から2021年にかけて急落していることを報告した。2022年もその状況は改善されていない。だが、露光装置には、一筋の光明を見いだせそうである。
2020年にコロナの感染が世界に拡大し、コロナ特需が起きたことから、2021年から2022年にかけて、世界半導体市場も製造装置市場も急拡大した。その結果、2022年に半導体市場は5741億米ドル、装置市場は1076億米ドルと、いずれも過去最高を記録した(図1)。
しかし、2022年にコロナ特需が終わり、半導体不況の突入したため、ことし2023年には、半導体市場は約10%減少して5151億米ドルになり、装置市場も約15%減少して912億米ドルになると予測されている。この不況が回復すれば、来年2024年には、過去最高を記録した2022年の水準に戻るといわれていることから、今は我慢の時期と言えそうである。
さて、昨年2022年7月11日に寄稿した本コラム「実はシェアが急低下、危機の入り口に立つ日本の前工程装置産業」で、日本の前工程装置の世界シェアが2010年から2021年にかけて急激に低下していることを報告した。そのシェアの低下は2022年にどうなったのだろうか?
そこで本稿では、日本の前工程装置の世界シェアの最新動向を論じたい。結論を先に述べると、日本の前工程装置の世界シェアは、2021年の26%から2ポイント低下して24%に減少してしまった。つまり、日本の前工程装置のシェアの低下が止まっておらず、依然として深刻な状況にある。
そのような中で、どん底まで落ちたかに見えた露光装置のシェアが上昇傾向にあること、特にCanonがi線とKrFのビジネスに注力していることにより、装置台数のシェアが増大していることが分かった。凋落(ちょうらく)しつつある日本の前工程装置業界においては、一筋の光明と言えるかもしれない。
以下では、まず、各種前工程装置の出荷額を見てみよう。
図2に、各種の前工程装置の出荷額の推移を示す。なお、外観検査と欠陥検査の合計を検査装置としている。また、枚葉式とバッチ式の合計で洗浄装置の出荷額を算出している。
2022年にドライエッチング装置が202億米ドルとなり、単一の装置の出荷額として初めて200億米ドルを突破した。次に、検査装置が178億米ドルとなり、167億米ドルの露光装置を超えて第2位の出荷額となった。さらに、CVD装置が112億米ドルで第4位につけている。
ここで、検査装置の中の外観検査装置が135億米ドルであるため、2022年に100億米ドルを超えた前工程の装置は、ドライエッチング装置、露光装置、外観検査装置、CVD装置の4種類となった。
全ての前工程装置の出荷額は、2000年のITバブルの時にピークがある。そこで、それぞれの装置について、2000年の出荷額で規格化したグラフを書いてみた(図3)。このグラフから、前工程装置は4種類に分類できそうである。なお、以下では、2000年の出荷額で規格化した値を「成長率」と呼ぶことにする。
分類「第1」は、2022年に4.6倍に成長したドライエッチング装置である。ドライエッチング装置は、出荷額だけでなく、その成長率でも2015年以降、他の装置を凌駕(りょうが)している。
「第2」は、2022年の成長率が約3以上の装置である。具体的には、成長率の高い順に、検査装置が3.7、露光装置と洗浄装置がともに3.1、縦型拡散炉を含む熱処理装置が2.9となっている。ここで、出荷額でも露光装置を超える2番目の規模となった検査装置は、その成長性も非常に高い。一方、熱処理装置の成長率は、2021年の3.2から0.3ポイント下がってしまった。
また、第1および第2の分類に属する装置群は、2010〜2013年以降、成長率が1以上となり、その後の高成長につながっている。
「第3」は、2022年の成長率が2.6のCVD装置である。CVD装置が成長率1を超えたのは、2016年以降である。これは、NAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)の構造が2次元から3次元に変化したことに大きく影響を受けている。3次元NANDの積層数が、48層、64層、92/96層、112/128層……と多層化するにつれて、毎世代1.5倍のCVD装置が必要になるからである。
最後の「第4」は、成長率が2以下の装置群である。これらの装置群は、2017〜2020年以降に、成長率が1以上となった。つまり、なかなか、2000年のピークを超えられなかった装置群である。具体的には、成長率が高い順に、PVD装置が2.0、CD-SEMが1.9、CMP装置が1.7、コータ・デベロッパが1.6となっている。
次に、各種前工程装置の企業別シェアを見てみよう。
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