2024年も終わりが近づいてきました。新型コロナウイルス感染拡大に始まった2020年代も折り返し地点。激動の5年間で、富裕層の資産を取り巻く環境はどのように変化したのでしょうか。また、2020年後半の「変化のキーワード」とは。富裕層の資産管理・運用に詳しい専門家が解説します。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)
コロナに泣いた人、特需で沸いた人…
富裕層の悲喜こもごも
2020年代も折り返し地点である2025年を迎えます。
そこで2020年からの5年を振り返ってみることで、今後の動向を予測してみたいと思います。
2020年代の前半は、グローバルな大変革が加速した時期でした。特に自己実現を成し遂げた富裕層にとっては、二大命題である「健康寿命を延ばすこと」と「資産の維持」が脅かされる、不確実性とチャンスと損失が一度にやってきた大変な数年間だったといっていいでしょう。
2020年初頭は、世界中が新型コロナウイルスの流行により急激な社会経済の変化に直面した混乱期となりました。当初、富裕層の中にはコロナに効くといわれていたアビガンを大量に買い占めたり、健康被害を恐れて人的交流をシャットアウトし、シェルターを自宅に設置したりする人もいました。
一方で、危機がチャンスとなったような職業もありました。
ワクチンなどで一部の医師がもうかったのも事実で、1台数千万円もするようなスーパーカーを何台も買うなどコロナ特需の恩恵を受けた人もいました。「不景気でもお金持ちはいるよね」といううわさ話が聞こえてくるような状態でした。
米国株投資家は「ダブルで恩恵」
クレディ・スイス破綻で波乱
このパンデミックの状況を、世界の中央銀行は金融緩和で乗り切りました。特に米国の中央銀行であるFRBは政策金利を一気に1.5%大幅に利下げ(1.75%→0.25%)。それによって、金融危機などの二次災害や実体経済の被害を最小限に食い止めることに成功しました(その後インフレ抑制のため5.50%まで利上げ)。
それによる副産物が、株価の上昇です。特にエヌビディアなど米国のハイテク企業への投資が富裕層の注目を集めました。日経平均株価は2024年2月、バブル期に記録した史上最高値を更新し、その後24年7月には4万2000円台にまで上昇しました。