東京ディズニーのスタッフが「転売ヤー」か?グッズを大人買いできるマル秘ショップの正体写真はイメージです Photo:Eugene Gologursky/gettyimages

東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです

某月某日 大人買い
キャストショップのマル秘活用法

 ワードローブビルの中にはコンビニとは別にキャストショップがある。

 ここではイベントが終わった後に売れ残ったグッズのほか、賞味期限が近くなったお菓子などを従業員向けに安い価格で販売している。商品によって割引率は異なるが、2~3割引から、賞味期限が近いお菓子になると9割引まである。ディズニー好きにはたまらないショップである。

 出勤時、必ず立ち寄るワードローブビルの出入口横という好立地にあり、私はいつも立ち寄って何があるか確認していた。

 私には孫が4人いる。まだ幼い彼らにとって格好のプレゼントとなるからだ。また、ディズニーグッズやお菓子は、ビール会社の営業をしていたときに世話になった飲食店を利用する際のお土産としても重宝する。

 キリンビールを退職する前の5年間、私は港区田町の営業を担当していた。それまで経験した年数が少ない営業職だったが、私の性に合っていたのか、やりがいをもって取り組むことができた。担当地区では、私の熱意を買ってくれた何店かの飲食店で他社の生ビールをキリンに替えてもらうことができた。

 ビール会社の営業マンにとって、他社の生ビールを自社に替えてもらうことは最高に嬉しく、営業冥利に尽きることである。

 その恩を忘れてはいけないと、会社を退職後もさまざまな飲み会があるときは志願して幹事となり、お世話になった田町の飲食店を利用するようにしている。

 ディズニーのお土産はこうしたお店の方たちも喜んでくれるので、お店を利用するときには必ず持参する。

 私がキャストをしていることは話題作りにもなるので積極的に話していた。

 ある店の女将から声をひそめてこう言われた。
「でも、暑いときなんて、ホントたいへんでしょう」
「ええ、汗がとまらなくて、なかなかたいへんです」
「汗も拭けないもんねえ。子どもに引っ張られたりするんでしょ?」
「いや、でもみなさん、マナーは守ってくれますから」
「頭の中だって、ずいぶんクサいでしょう?」
「……?」
 女将さんは私がキャラクター役として着ぐるみの中に入っていると誤解していたのだ。