性格によって動機づけに違いがある

 あなたが最も力を発揮できるのは、どのような状況だろうか。あなたのモチベーションを高める要因、あるいは損なう要因とは、どのようなものか。こうした質問に対する答えは、人によって大きく異なる。この差異こそが、「よいマネジメント」という課題の核心部分である。パフォーマンスを管理する対象が他者であれ自身であれ、それは同じだ。全員に適用できる万能の法則はない。あなたの成功に役立った方策は、同僚や直属の部下には役に立たないかもしれない。たとえ上司やメンターが実践してうまくいったやり方でも、あなたの役に立つとは限らない。そこには個々人の性格がからんでくるのだ。

 ビジネスにおいて性格のタイプを判断する最も一般的なツールは、マイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インディケーター(MBTI)である。しかし実際のところ、このような診断ツールの多くには、パフォーマンスを予測できないという問題がある(公正を期すならば、MBTIは予測できると謳ってはいない)。こうした診断テストでは、あなたがどのくらい内向的か、外向的か、あるいは思考と感覚のどちらに頼るタイプか、といった特質がわかり、それによってどんな行動を好むかを診断できる。しかし、それに長じているのか、そうでない場合はどう改善すればよいかについてはほとんどわからない。

 幸いなことに、性格の特質に基づいて人々を大別し、パフォーマンスをも予測する方法がある──制御焦点理論がそれで、モチベーションのタイプを「促進焦点」(promotion focus)型と「予防焦点」(prevention focus)型に分けるものだ。このタイプ分けは、学界では心理学者のほか、マーケティングやマネジメントの研究者によく知られている。しかしその評判は、最も役に立つであろうはずの人々には届いていない。つまり、自分の仕事がもっとできるようになりたい、そして他者が潜在能力を最大限に発揮できるよう手助けもしたい、と望むマネジャーには知られていないのだ。