まずは歌舞伎町をぶらり
18時過ぎ、ミスター林と新宿で待ち合わせた。この日はあいにくの雨模様。
前回まで、サントス散歩は常に天気に恵まれてきたが、ここに来て始めての雨である。しかし、今回の目的地はロボットレストラン。室内である。雨が降っても問題はない。
雨の歌舞伎町にて
ロボットレストランの開演は19時だ。それまでまだ時間があるので、歌舞伎町を歩いてみることにした。
ミスター林の案内で歌舞伎町をぶらり
雨が降り、暮れなずむ新宿歌舞伎町。これから1時間も経てば完全に日が暮れて街は夜に包まれる。
しかし、歌舞伎町の歓楽街は夜を知らない。夜になれば街中にネオンが広がり昼間の明るさを取り戻す。その活気は再び朝がやってくるまで続き、まさにここは不夜城なのだ。
昼の歌舞伎町から夜の歌舞伎町へ。街が徐々に変化していく中、私とミスター林は歌舞伎町をぶらりと歩く。これから体験するロボットレストランへの期待に胸を膨らませながら。
ずっと猫を飼いたいと思っています
富士そばでは、天玉そばと決めています
客引きにマークされている
サブカルの聖地。ロフトプラスワンで記念撮影
歌舞伎町を歩いている間、
「お兄さんキャバクラどう?」
と、何回か客引きから声をかけられた。歌舞伎町ではマスクマンでもキャバクラに誘われるのだ。マスクをつけたまま女性とお酒を酌み交わす。果たしてそれは楽しいのだろうか?
今度、メキシコシティの友人(もちろんマスクマン)にスカイプで聞いてみようと思う。
ロボットレストランがギラギラしている
そしていよいよ、ロボットレストラン開演の時間が迫ってきた。無数のLEDで装飾されたお店が、ギラギラと圧倒的な存在感を示している。店頭には大きな恐竜のロボットがいて、首を上下に動かしている。
「ここがロボットレストラン…」
予想以上のキラメキに、私とミスター林はしばし店頭で言葉を失う。
ロボットレストラン!
ロボットレストランに入るには、はす向かいにあるチケット売場でチケットを購入する必要がある。ショーの観覧に食事とドリンクが付いて、1人5000円。
チケット購入時に、いくつか用意された食事メニューの中から好きな食事を選ぶシステムだ。この日用意されていたメニューは、「ビーフカレーセット」「カツサンドセット」「おつまみセット」の3種類。私はビーフカレーセットを、ミスター林はおつまみセットをそれぞれ選択した。
券売機でチケットを購入
ミスター林はおつまみセットを選択(ウインナーがあるから)
チケットを購入したら再びロボットレストランに戻り、まずは待合所で待機する。
待合所へ
待合所の席は既にお客さんたちで埋まっている。カップル、女性同士、外国人、男性1人。お客さんの層はさまざまである。待合所の中もLED電飾でいっぱいで、とにかくキラキラしている。「色彩を持たない多崎つくる」とは対照的に、この中には色彩しかない。
唐突であるが、ここで私が考えるロボットダンスを披露してみた。
これで合っているのかどうか、私には分からない。それでも、私なりにベストを尽くしたつもりだ。
ドレスコードがある
待合所から更に奥へ向かうと受付がある。
受付へ向かう
受付でチケットを渡し地下の会場へと降りて行くわけだが、ここで問題が発生した。
ロボットレストランにはドレスコードがあり、フロントスタッフの判断によって入場を制限されることがあるのだ。
ドレスコード
入場を制限される基準として、
1.サングラスをかけてのショー観覧
2.泥酔されている方
3.暴力団風の方
4.いかつい方、オラオラ風の方
5.奇抜な格好の方(コスプレ、大きいカツラ等)
6.ホスト、ホスト風の方 などがある。
このドレスコードの5番目、「奇抜な格好の方(コスプレ、大きいカツラ等)」の「等」に私の覆面が引っかかってしまったのだ。
覆面はダメよ
ここがメキシコシティだったら、きっと覆面でもスルー出来たのだろう。
しかし、ここは新宿歌舞伎町である。郷に入っては郷に従え。死んだ祖父からもそう教わってきた。私の覆面がロボットレストランの世界観を邪魔してはいけない。
オッケー。
覆面なんて取ってしまおう。
取ります取ります
ロボットレストランの掟に従って、素顔でショーを観覧する。
余白のない世界
覆面を取り受付を抜け階段で地下へと向かうが、その階段がまた色彩で満ちている。
カラフルな模様が壁一面にみっちりと広がっていて、まったく余白がない。天井を見上げれば液晶画面が埋め込まれていて、派手な映像が流れている。
一面に広がるカラフル
天井には液晶画面
色彩、模様、映像、電飾。会場に辿り着くまでの情報量が多過ぎて脳がビックリしているのが分かる。私はこのような派手な空間を他に知らない。
パチンコ屋さんなどがこれに近いような気もするが、空間の印象がパチンコ屋のそれとは全く違う。パチンコ屋の装飾にはある程度の規則性があると思うのだが、ロボットレストランには一切それがない。不規則なリズムで「派手」が押し寄せてくる。
会場入口にて
会場内に入ると、ズドーンと奥行きのある空間が広がっている。空間の左右にはそれぞれ椅子が3列ずつ、ひな壇のように配置されていた。お客は左右に分かれてひな壇に座ってショーを観覧するようだ。
ロボットレストラン会場
宣伝カーでおなじみのあのロボット
新宿の街で始めてこのロボットを見かけた時の驚きは今でも忘れない。その大きさ、風貌、バスト、すべてが規格外である。街で見かける度にカメラを向けていたあのロボットが、今目の前にいる。
しばらくの間、私はロボットに見とれた。
美しいロボット
この女性ロボットは、正式名称をROBOKOというらしい。初めて近くでその表情を見て、私はあることに気づいた。ROBOKOの顔は私のタイプだ。ストライクである。
そのことをミスター林に伝えると、
「変わった趣味ですね」
と一蹴された。
自分の好みを「変わった趣味」と言われてしまい、私は少しカチンと来た。しかし、ショーが始まる前に険悪な雰囲気になることは避けたい。
オッケー。
ミスター林とROBOKOの記念撮影を行うことで、一瞬よぎった嫌な空気を払拭することにした。
ミスター林とROBOKO
デジカメのプレビュー画面を見て、ミスター林の口元が少し緩んだ。なんだかんだ言って、ミスター林もROBOKOの魅力に気づいているようだった。
めくるめく女性ダンサーたち
ショーが始まるまでまだ少し時間があるので、その間に食事をするようにアナウンスがあった。ショーが始まると食事をしてる場合ではなくなるらしい。
私とミスター林は隣り同士に座り、ショーに備えて食事をすることにした。
良い席を確保
ミスター林のおつまみセット
サントスJr.のカレーセット
食事を済ませると、ほどなくして会場が暗くなった。ついにショーが始まるのだ。
大きな音楽が会場内に響き、それと同時に女性ダンサーたちが続々と登場してくる。ダンサーたちは生身の人間で、みんな薄着だ。ロボットたちのダンスと聞いていたので、露出度の高い女性ダンサーたちの登場に一瞬ひるむ。
「いきなりロボットじゃないんですね?」
私とミスター林は、声を揃えてつぶやいた。
私たちの動揺に構うことなく、まずは女性ダンサーたちによる和太鼓の演奏から始まった。
目の前でダンサーが和太鼓を叩いている
薄着の人たちが揃いのダンスを繰り広げる
ビキニ姿でラッパを吹く
ラッパと太鼓とダンス
この日の女性ダンサーは全部で14名。みんな美人でスタイルが良い。
1部、2部とさまざまな趣向を凝らしたダンスが繰り広げられた。時に美しく、時にコミカルに、そして、常にセクシーに。
そうか、ここは竜宮城だ!
タイやヒラメの代わりに、美しいダンサーたちが舞い踊る白昼夢のような場所。
来て良かった。
と、女性ダンサーの姿に視線を奪われながら、大切なことに気づいた。
ショーが2部まで終わっているのに、まだロボットが出て来ないのだ。
私はロボットダンスを見に来たんじゃないのか?
セクシーな鼓笛隊が練り歩く
微笑みかけられて、デレッとする
ついにロボットたちが登場
ショーの2部までが終わり、セット転換のため5分ほどの休憩が入った。黒子姿のスタッフたちが、テキパキと次のショーに向けたセットを作っていく。
次のセットが完成
客席の前に鎖のロープが張り巡らされた。先ほどまでの華やかさはなくなり、殺伐とした戦いの場所へと会場の雰囲気が一変する。
ROBOT WAR
設定の説明
これから、いよいよロボットたちの戦いが始まるのだ。
会場スタッフから、光る棒を渡された。この棒で、戦いを盛り上げろ! 多分、そういうことだ。
光る棒を支給された
そこからのショーは圧倒的な迫力で展開していった。やはり薄着な女性ダンサーたち。色々な種類のロボットが縦横無尽に動き回る。そして、あのROBOKOにダンサーが乗って操縦する。
「ボンバーヘッド」「カンナムスタイル」「女々しくて」など、ノリの良い楽曲に合わせて、ロボットと女性ダンサーが今まで見た事のない世界を繰り広げていく。
迫り来るロボット
ROBOKOに乗る女性ダンサーたち
光りながら歩くROBOKOの勇姿
初めて見る世界
レーザービームと共に現れるロボット達
ロボットとダンサーがカンナムスタイルを踊る
光るセグウェイと光るダンサー
セグウェイに乗る時は、片足を上げて
ロボットとダンサーが入り乱れる形で
レポーターとして、ショーの内容を的確にお伝えする義務があることは分かっている。しかし、どう伝えたらあの世界を表現出来るのか、私には分からない。
例えば、露出度の高いダンサーたちが私の頭上を抜けていく、と伝えたところで何のことだか分からないだろう。
こういうことだ。
頭上をいくダンサーたち
今までの人生で「頭の上を薄着の女性が抜けていく」という経験をしたことがない。それも、次から次へと女性たちが抜けていくのだ。
言葉にならない、とミスター林
更に、頭上を抜ける女性たちとはハイタッチが出来る、と言っても何のことだか分からないだろう。
こういうことだ。
ハイタッチができる
このように説明のつかない状況がひっきりなしなのだ。
光る戦闘機にぶら下がる美女軍団とか、
世の中にこういう戦闘機があることを知らなかった
頭上ではまだ美女が回り続けている
頭上だけでなく、下のダンサーたちともハイタッチ出来るとか、
ハイタッチ
乱暴な言い方で申し訳ないのだが、「行ったら分かる」としか言いようがない。 とにかく、ロボットレストランの熱量は凄いことになっていた。
祭のあと
開始から1時間、あっという間にショーが終わった。今まで見た事のないような新しいタイプの武器で後頭部を思いっきり叩かれたような感覚が残っている。
ショーが終わって…
最後にROBOKOと一緒に
DJロボットとも記念撮影
ロボットレストランを後にして、私とミスター林は再び歌舞伎町の街に出た。
雨の中、ミスター林のいきつけのバーに行き、ハイボールを飲んだ。そこは、昭和の楽曲を流してくれるバーで、アニメやドラマの主題歌や昔のアイドルソングなどが流れていた。
ロボットレストランと対極な場所で酒を飲みたい。
2人とも同じことを考えていた。
ゴールデン街のバーにて
話題のスポット、ロボットレストランは何から何まで想像の範囲を超える場所だった。
あんなお祭り騒ぎが、毎夜数回に渡って行われているのだ。通常の生活に戻り、今、こうして1人で原稿を書いていると全く信じられない。あの夜の出来事は本当に現実だったのだろうか?