人の話はもらさない。かつては、ため込んだもろもろに腹ふくれる思いがあった。けれど、やはり自分が齢を重ねたのだ。誰もがゆく道と、愚痴だか悩みだかわからない話も、人生の機微に触れるような思いがして、捨て所に苦心するようなことはなくなった。 近所でもあり、M家の事情はそれとなく耳に入ってきていた。夫の脳梗塞の後遺症が進み、家で介護を担えなくなったS子さん。近くに住む娘家族と相談した結果、施設でお世話いただくことにされて、半年ほどになった。選択が間違っていたのか。毎日が淋しいと口にする。 人生は一代、選択の連続のようだ。決断を迫られる時はある。ただその結果の是非について、私が関わり合う問題ではない。家…