格物致知

「志が立たねば、天下に成るべきのことなし」 王陽明 儒教における聖人とは、物事の本質を深く理解し、高い徳を備えた、高潔な人物であり、人々に道徳的な模範を示す存在を指します。明代の儒学者、王陽明は、あるとき弟子から「聖人の中にも、優劣の違いがあるのではないでしょうか」と問われました。これに対して王陽明は、「聖人とは、天理に従って生きる人のことであり、知識や技能は関係ありません」と答えました。 聖人の中にも才能の違いはあるかもしれませんが、天理に従って生きるという点ではみな等しいのです。例えば、大きさの異なる二つの黄金を考えてみましょう。どちらも純度が百パーセントであれば、その大きさや重さが違って…

（目次） まえがき 第１章 家康はなぜ、幕藩体制を創ることができたのか 第２章 江戸時代、誰が「神君の仕組み」を崩したのか 第３章 幕末、「神君の仕組み」はかくして崩壊した 第４章 「神君の仕組み」を破壊した人々が創った近代日本とは 第５章 家康から考える「日本人というもの」 【第１章】 桶狭間の戦いで、今川義元が２万、織田信長は２千に足りない兵数で中島砦に移ったとあることから、「尾張は小国」というイメージがあるが、誤りだ。今川が支配していた駿河、遠江、三河で合計６０万石に対し、尾張は５０万石超の大国だ（P17） 今川家の戦略は、「三河のプリンス」家康を膝元において育て、強い結束力を誇る松平家…

はじめに 近年、日本のアニメやマンガ業界で新たなトレンドが静かに、しかし確実に広がっています。それは、朱子学をはじめとする東洋の古典思想や日本の伝統的な価値観を現代的に解釈し、物語に取り入れる動きです。一見すると難解で古めかしいイメージのある古典思想が、なぜ今、若者を中心に注目を集めているのでしょうか？ 実は、これらの古典的な教えには現代社会にも通じる普遍的な知恵が詰まっています。自己修養や道徳心の涵養、社会における人間関係の在り方など、現代人が直面する多くの課題に対するヒントが隠されているのです。アニメやマンガという親しみやすい媒体を通じて、これらの古典的な教えが新しい形で若い世代に伝えられ…

はじめに 明学と朱子学は、中国の儒教思想に基づく二つの主要な哲学体系です。両者はともに人間の倫理、知識、行動に関する教えを提供していますが、そのアプローチや強調点には明確な違いがあります。本記事では、明学と朱子学の主要な違いを比較し、現代社会におけるそれぞれの教えの応用方法について探ります。これにより、個人の成長や社会の発展にどのように役立つかを具体的に理解することができます。 1. 基本的な教義 朱子学は、朱熹によって体系化された儒教の一派で、理（ことわり）を重視し、理を通じて世界を理解しようとします。対照的に、明学は王陽明によって発展し、心即理（心そのものが理である）という考え方を中心に据…

はじめに 王陽明（1472年－1529年）は、中国明代の儒学者であり、陽明学の創始者です。彼の思想は「心即理」や「知行合一」などを柱にしており、個人の内面の修養と実践を重視しました。現代においても王陽明の教えは、多くの人々にとって有益な指針となります。本記事では、王陽明の教えを日常生活に活かす具体的な方法について探ります。 1. 知行合一 知行合一は、知識と行動が一体となるべきという考えです。例えば、健康のために運動が必要だと知っているだけではなく、実際に運動を習慣にすることが重要です。これにより、健康を維持し、日常生活の質を向上させることができます。 2. 心即理 王陽明は、真理は心の中に存…

はじめに 朱学とは、南宋時代の中国において朱熹によって体系化された儒教の一派であり、「理」を中心とした哲学です。朱熹の思想は、東アジア全体に大きな影響を与え、現在でもその教えは学問や教育の分野で重視されています。本記事では、朱学の基本概念からその具体的な教え、そして現代における活用方法まで、初心者向けにわかりやすく解説していきます。 1. 朱熹とは誰か？ 朱熹（1130年-1200年）は、南宋時代の儒教学者であり、朱学の創始者です。彼は「理」を宇宙の本質とし、人間の道徳や社会秩序の基盤としました。例えば、朱熹は「四書集注」を編纂し、儒教経典の解釈を統一したことで知られています。これにより、後の…

はじめに 明学とは、中国の古典的な哲学・倫理学の一分野であり、特に理性や倫理を重視する学問です。孔子や孟子といった偉大な思想家の教えに基づいており、現代においてもその教えは多くの人々に影響を与えています。本記事では、明学の名言を紹介し、それらが現代の私たちの生活や考え方にどのように役立つのかを解説します。 1.「知行合一」（ちこうごういつ） この名言は、王陽明が提唱したもので、知識と行動の一致を意味します。例えば、環境問題に対する知識を得たならば、リサイクルや省エネを実践することが求められます。知識を行動に移すことで、社会に貢献できるのです。 2.「格物致知」（かくぶつちち） 朱熹が提唱したこ…

はじめに 明学とは、中国の古典的な思想体系の一つであり、特に理性や倫理を重視する学問です。孔子や孟子に代表される儒学と共に、中国の哲学や倫理の基盤を形成しています。本記事では、明学の基本概念から初心者が学ぶべきポイント、そして実生活への応用方法までを詳しく解説します。 1. 明学の基本概念 明学の基本は「明徳」という理念にあります。明徳とは、内面的な徳を明らかにすることであり、個人の内面的な成長を促すものです。例えば、自分の行動や言動に対して常に反省し、改善を図る姿勢が求められます。このような内省的なアプローチにより、自己改善が図られます。 2. 明学の歴史と背景 明学は宋代に発展した学問で、…

現在の太極拳の大部分は理を講じ、理の上で法を講じている。良いものは法の上で理を講じているが、これらはどれも違う。理と法は、勢の上で講じなければならない。勢こそが主体である。なぜなら、本当に敵と対峙する時には緩急の変化があり、もし勢を講じずに、ただ理と法を講じるだけなら、いわゆる理と法はすべて立ち行かなくなる。一度動き出せば、すぐになくなり、使えなくなってしまう。敵との勢が出てきた後に、理と法を講じるべきであり、この時の理と法こそが用いることができるのである。拳を練習する際は、まず勢を提示してこそ使えるようになり、勢の基礎の上でこそ理と法を論じることができるのだ。 どこでも機と勢を得なければなら…

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 2010年初版。60万部超のベストセラー。2021年の大河ドラマ「青天を衝け」は渋沢栄一の生涯だったことは記憶に新しい。また、今年(2024年)7月から1万円紙幣の顔が福沢諭吉から渋沢栄一になる。「論語と算盤」は、幕末から昭和初期まで生き、約480社もの企業の創立・発展に貢献した、日本近代資本主義の父とも、日本実業界の父とも言われる渋沢栄一の講演の口述をまとめたもの。渋沢栄一は31歳頃実業で行こうと志を立てる。最初は15歳頃武士になろうとした。遅れたことを教訓にしてほしいという。しかしそれは渋沢以上の渋沢になれたのだといい、遅くはなかったと振り返っている。西郷隆盛に会っ…