Text by Laura Millan
気候変動など地球環境の変化が人類に絶大な影響を及ぼすことは、いまの世界で否定しがたいだろう。だが、われわれが人類史をたどるときに、自然界からの影響をどこまで考慮してきただろうか? その影響を加味すると、人類史はどう見直されるのか? 英オックスフォード大学でグローバルヒストリーを教える歴史学者のピーター・フランコパンに、米メディア「ブルームバーグ・グリーン」が聞く。
人類はずっと地球の気候に恐怖を覚え、また取りつかれてもきた。ほぼすべての文明の創世神話が、完璧な楽園の喪失、大洪水、7年におよぶ干ばつ、あるいは容赦ない天災といった巨大な気候変動に基づいているほどだ。
だが、歴史家らは伝統的に帝国や戦争、偉大な発明といった人類の仕業に注目し続け、人類に同じくらい強烈な影響をもたらしてきた火山の噴火や過酷な冬、凶作などには見向きもしなかった。
人類史と自然史を再統合することがいまわれわれを取り巻く世界を理解するために欠かせないと論じるのは、新著『変貌の地球──語られざる歴史』(未邦訳)の著者であり、オックスフォード大学のグローバルヒストリー教授ピーター・フランコパンだ。
ベストセラーとなった『シルクロード全史』同様、フランコパンは新著で古代エジプト、メソポタミア、インド、中国の史料にあたり、傾向を特定し、地域を超えて点を結び、自然界がいかに人類に影響してきたのか、またその逆はどうだったかという、網羅的で興味深い物語を組み立てている。
フランコパンによれば、人類は時間ギリギリで到着する無礼な客みたいなもので、大混乱を引き起こし、自分たちが招かれた家を破壊しているという。
地球の平均気温が産業革命前から1.2度上昇している理由と、21世紀末までに破滅的な2.7度上昇が見込まれている理由は、われわれの種としての起源に深く根ざしている。
なぜモンスーン気候によりインドの支配者が馬の繁殖と飼育に苦労したのかという話や、どうして陽気のおかげで中世ヨーロッパの農業が盛んになったのかという話は、われわれがどうここまで来たのかのみならず、われわれ自らの成功があだになるのをどう避けるかということを理解する助けになるとフランコパンは言う。
「ブルームバーグ・グリーン」は、英国ロンドンにある、ジョージアの味が有名なパン屋でフランコパンに話を聞いた。ジョージアといえば、フランコパンの新刊で物語の中心となるヨーロッパとアジアのあいだにある国だ。その新刊がわれわれという種について、またわれわれが生きている時代について何を語っているのか聞いた。
フランコパンによれば、人類は時間ギリギリで到着する無礼な客みたいなもので、大混乱を引き起こし、自分たちが招かれた家を破壊しているという。
地球の平均気温が産業革命前から1.2度上昇している理由と、21世紀末までに破滅的な2.7度上昇が見込まれている理由は、われわれの種としての起源に深く根ざしている。
古代ヒッタイト帝国滅亡の理由が「木々の年輪」から見えてきた? |
なぜモンスーン気候によりインドの支配者が馬の繁殖と飼育に苦労したのかという話や、どうして陽気のおかげで中世ヨーロッパの農業が盛んになったのかという話は、われわれがどうここまで来たのかのみならず、われわれ自らの成功があだになるのをどう避けるかということを理解する助けになるとフランコパンは言う。
「ブルームバーグ・グリーン」は、英国ロンドンにある、ジョージアの味が有名なパン屋でフランコパンに話を聞いた。ジョージアといえば、フランコパンの新刊で物語の中心となるヨーロッパとアジアのあいだにある国だ。その新刊がわれわれという種について、またわれわれが生きている時代について何を語っているのか聞いた。
いまの世界で起こっている前代未聞のこと
──古代史は気候というレンズをとおして見ると、われわれに何を語っているのでしょうか?
人々はずっとおびえてきたのだと語っています。「創世記」をはじめユダヤ教、キリスト教、イスラム教で語られる地球の創造物語は、神が、まさしく自分が望むとおりに見えるよう設計された完璧な生態系をどう創ったかという話です。
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